最終話 ばあさんへ。儂は次へと旅立ちます。



それから何度か氷曜日の度に子供達を連れて洞窟へ向かい、光曜日の度に催しを開催していった。



その結果、子供達はスキルレベルが上がったのか、それとも少しずつコツが掴めてきているのか、たまにHQも見る様になった。


そして持ち帰ってきたインゴットは武器屋へと売られ、村人たちはほんの少しでも生活が楽になるのだった。


こうなると大人達も子供達の魔素マナも有効利用しようと、採掘に行く時には快く護衛でついてきてくれる様になってくる。



そんな良い循環を受け、安定して供給されるブロンズインゴットに、武器屋は嬉しい悲鳴を上げる。


そう、この噂を聞きつけた街の武器屋が、わざわざインゴットを買い付けにやって来るようになったのだ。



そしてハジマリの村の特産物に『ブロンズインゴット』と表記さるようになるのだった。



自分の教えた子供の内の数人だが、明らかにコツを掴んだかのようにHQを頻繁に出せるようになっていた。


職人はクラフトだからと運任せにせず、きちんと技術を磨くその姿勢にうんうんと満足そうにうなずく。



そして職人がこの村に着いてから1か月が経った頃、職人は新たな目標を掲げ、村からひっそりと姿を消した。


村人達は突然いなくなった職人に驚きを隠せないものの、たくさんの物を与え、知恵を与えてくれた職人に感謝をする。





「─────────で、嬢ちゃん。次の町はまだか?」


「もうすぐ着くはずですよぅ。でもおじいさんは、あの街を出て良かったんですかよぅ?」


女神が職人に問うと、職人はニヤリと笑う。


「キチンと上を目指す奴が何人か育ったから、あの村は大丈夫さ。次はあいつ等が導く番なんだぜ?」


「…あいかわらず、おじいさんの言う事は良く分からないんですよぅ」



職人と女神の2人は、のんびりと次の町へと歩いて行くのだった。



=ハジマリの村・編 完=



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