第3話 書きたいことと書くべきこと

昔読んだおカタめの小説の指南書に、

「一番書きたいシーンは書かないこと」という一文があった。


かなり前に読んだ本だけれど、印象深くてよく覚えている。


大事なことは婉曲に表現しろ、という意味だったと思う。


伏線を張ったり、匂わせたりして、

ストレートに言わない。書かない。


でも、やっぱり書きたいものを書きたくて、

色々悩んでは書いてしまう。



その本には「説明するな、表現しろ」とも書いてあった。


たとえば寒いことを「寒い」と書くのではなくて、

「震える」とか、「歯が鳴る」とか、別の言い方に置き換える。


そんな内容だった気がする。


これも結構難しい。

散々悩む時もあれば、さっさと諦めてしまう時もある。



忘れがちなのは「五感で表すこと」。

私はどうしても見たものばかりに頼ってしまう。


味や音、触った感じ、そして匂い。

ついつい描写するのを忘れて、あとで書き足す羽目になる。


難易度が高いから、敬遠してしまうのかもしれない。


人に読まれる文章を書くって、なかなか難しい。


「あとで自分で読み返して、落ち込まない文章」って、

実は凄く高いハードルだなって、常々思う。

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