第3話



「ここが最深部か……アリシア、探査を」

「はい、レイジ様」


 アリシアがフロアをサーチする。


「宝箱はここ、罠はここ、そしてダンジョンコアはここです」

「うむ、助かる」


 空中に電影で作られたマップを俺は一瞬で記憶する。

 前世ではあまりに記憶力がよすぎるために「嘘つき」呼ばわりされた。

 あの上司、殺してやればよかったな。

 俺は嘘つきなんかじゃない。ただ、強すぎるんだ。

 それは俺のせいじゃない。


「どうなされますか」

「こんなクズダンジョンの宝などいらん。まっすぐダンジョンコアを目指すぞ」

「それでこそレイジ様です。ぽっ……」


 アリシアが頬を赤らめる。愛いやつめ。


「ここのダンジョンボスはどんなやつだ?」

「魔導士リリビーです。人から魔物に落ちた邪道者です」

「ならお仕置きが必要だな」


 魔物の力を取り込まれず、逆に取り込まれるなど、雑魚の象徴。

 俺が葬ってやる。

 俺は最深部の扉を蹴破った。


「出てこい虫けら。懲罰の時間だ」

「何者だ、貴様ら」


 魔導士リリビーらしきシルエットが幻影のように揺らめいている。


「我が大魔導士リリビー様と知っての狼藉か」

「愚かな。様づけで呼ばれていいのはこの世界でただ一人。このレイジ様だけよ」

「そのおごりたかぶり、粛清してやるぞ」

「やれるもんならやってみろ、ゴミが」

「はあっ!」


 魔導士リリビーは大魔法を使ってきた。

 が、俺には効かない。

 世界に十八人いる魔王の一人の力を取り込んだ俺には、魔法など効かぬわ。


「な、なんだと……なぜ我の魔法が効かぬ……」

「貴様が雑魚だからだ、チンピラ」

「だ、だが我を倒すことはできないぞ。我の姿は裏世界に隠してある。現世で我を攻撃してもアイヤアアアアアアアアアアア!?!?!?!?!?」


 俺はリリビーにアイアンクローをした。


「な、なぜ我がつかめる! 我に触れられるぅ!」

「バカが。貴様ごときの小細工に翻弄される俺ではない」

「ぐ、ぐあああああああああああああああああ」


 俺はリリビーの頭を握りつぶした。そのまま死体を蹴り飛ばす。


「ゴミが。消えろ」

「さすがですレイジ様」

「うむ。ではダンジョンコアを頂戴しよう」


 台座の上で輝くダンジョンコアを、俺は手に取って、粉々に砕いた。


「ははははははっ! これでこのダンジョンも終わりだな」

「はい、レイジ様」


 ゴゴゴゴゴゴゴ……


 不気味な音を立てて、ダンジョンが崩壊していく。


「脱出するぞ、アリシア」

「はい、では……転移!」


 俺とアリシアはスマートに転移魔法で脱出した。

 愚図な冒険者どもは生き埋めだろうが、弱いやつが悪いのだ。






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