転生者認定
karasu//
異世界
銃声が鳴り響くたびに彼の体は弾かれた。
飛散する肉片と霧散する銃弾。
時折起こる爆発が遠距離からの砲弾のものであるなどと彼にはわからない。
転生と同時に世界が彼の命を粉々に破壊しようと火力を集中しているのだ。
まず痛みがあった。
次に訪れるのは怒りである。
彼の故郷は平和な世界の中にある戦争や破壊とは無関係の場所であった。
ゆえに、自身が世界から殺されようとしている事への理解に時間がかかった。
幾度目かの砲弾の直撃で彼の右腕が飛んだ。
激痛と同時に彼は咆哮をあげる。
戦列を成して一斉射を繰り返す兵士達を睨む目には十分な怒りが溢れている。
まだ十分に戦えることを怒りが彼に伝えた。
解き放たれた矢のように戦列に飛びかかる。
銃弾を受ける事に、痛みの意味を彼は理解した。
「殺してやる...。この世界の全員を殺してやる!!」
異世界に転生した彼の最初の言葉は呪いであった。
兵士達は戦列に飛び込んできた彼に吸い付くように銃剣を突き出すが、動きを捉えきれず赤い血飛沫と共に崩れる。
彼の身体が返り血と自身の血で全身が朱に染まった頃には、動く者はなかった。
周囲に蟻のように犇めいていた兵士達の姿は変わり果てた。
銃弾も砲弾も、銃剣の刃も彼を殺すには至らなかった。
そのまま静寂に身を委ね座り込んだ彼の身体に異変が起こる。
失った右腕が再生を始めたのだ。
筋肉と骨が伸び、やがて皮膚が生まれ指までも動くようになる。
何もなかったかのように彼は受けたダメージを無意識に修復して見せた。
彼は考えている。いや、思い出そうとしているのかもしれない。
世界に次の朝が訪れる前に、再び戦列を成して兵士達が姿を見せた。
言葉はなく思い出す必要すらすでにない。
彼は最初の生存した転生者となった。
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