ミミの孤独な気持ち

一色 サラ

孤独の気持ち

 8歳になるミミは、頭にモヤがかかるように、フワフワとしていて、生きている実感がなかった。

 スペイン旅行に行く母親が、歌いながら準備を楽しくしている音が、ミミの部屋まで聞こえてくる。それが、無性に腹が立っていた。

 かといって、一緒に行きたいとは思うことはない。この人とは1分1秒一緒には居たくはない。ただ、嬉しそうに準備している姿がムカついてくるのだ。ミミは、この人を母親として、認めてたくはなかった。

「何かあったら、おばあちゃんに言って」と同居する祖父母に子どもを託して、自分は悠々自適に、1週間、海外旅行へ出かけるのだ。

 子どもを置いて、旅行に行ける無神経な母親に腹が立っていく自分にうんざりしてくる。

 父親は、そんな母親の旅行に、楽しんできてねと言っている。また、この父親も、子どもとの時間より自分の趣味が優先させる人物だ。

 ミミと遊ぶ予定があっても、急に「明日、ゴルフだから、映画はなしなった」と平然と約束を破ってくる。

 それに、父親と遊んでくれても、正直、楽しくはなかった。周りの同級生たちが、親と遊園地や映画の話を楽しく話すが聞こえてくるので、ミミも行きたくなった。

 でも実際は、遊園地に連れて行ってもらった時、ミミが苦手な絶叫系のアトラクションに乗る羽目になった。

 子供の好きなことより、父親が好きな乗り物を優先させられる。連れて来てもらって手前、「嫌」と言えなかった。

 映画も、父親が観たいアクション映画とか、戦争映画など、ミミにとって興味の映画しか、一緒に行ってくれなかった。

 食事中も父親がテレビを観ているとき、偉そうにタレントの悪口や、スポーツなどで選手に対して「しっかりしろ。」「ちゃんと、打て」とか言っているのを聞こえてくると、嫌な気持ちになって、居心地が悪かった。それに、母親の料理もまずかったので、家族で食事をすることが苦手だった。

 だから、お店で買った料理を1人で食べることが、いつからか好きになってしまった。

 なんで、こんな人が、父親になれるのか本当に不思議でしょうがない。ミミより、子供っぽいと思うと、嫌になってしまう。

 それでも、親はまともだと、思いたくて、遊びに連れててと、一緒に来たくないのに、父親に言ってしまう。ミミは、自分の中にある正しい家族を探した。けど、見つけることが、まだできない。

 違和感が消えることもなく、日々を過ごしていく。それに、ミミは人と仲良くもできなかった。自分が変な子だから、みんな仲良くしてくれないんだと、教室の机に顔を伏せて、寝てふりをしていた。

 それでも教室で、人の話に聞き耳を立ててしまう。「この前、あの映画のDVD買ってもらった」と聞いた時、やっぱり、欲しい物って、頼めば、買ってもらえるんだと思った。

 ミミは、親に「あの映画のDVDがほしい」と言ったら、その映画が描かれている絵本を買い与えれた。分かっていたはずだった。欲しいものを買ってもらえないことを。それでも、ミミは何度も同じ過ちを繰り返してしまっている。まともじゃないということに、気づいてしまったら、何かが終わってしまう気がするから。

 ただ、親に何を言っても、伝わっていない感じがした。ミミは、言葉を使って、この親と会話ができているのか。頭が混乱するよう痛くなってしまって、気持ちが滅入ってしまう。孤独という孤立を感じる。

 現実を認めたくなくて、何度も同じことを繰り返して、親を試す。それでも、機能していない家族であることが、ゆるぎない真実だった。

 ただ、親たちは子どもの欲しいものを買い与えてると勘違いしている気がした。

 「これ欲しかっただろう。」とフランス人形をクリスマスに、父親が買って来た時、嗚咽が走った。なんで、こんなに意思疎通ができないのだろう。物や食事を与えれば、親になった気でいるのだろうか。ミミは親を満足させるために、存在しているのだろうか。

 誰も、まともな家族がいない気がした。そして、残念なことに、祖父母も救いようもない人だった。祖父は頑固で自分の意見を曲げることのない人で、相手の都合もお構いなしに、修理を頼んだ人に「なんで、すぐに来てくれないんだ」と怒鳴っている場面を何度も見てきた。それに、修理を頼むのはいいが、家族の誰にも相談することもなく、決めてしまう。

 植木に水をやるのが日課で、夏になると無数の蝉の声が聞こえる。その声が蒸し暑い夏をさらに鬱陶しくさせるので、父親に「木を切ってほしい」と頼んだことはある。が、「おじちゃんの大切なものだからダメ」と祖父に相談することもなく却下された。父親は祖父に逆らうことはしない。というか、2人が会話をしているとことを見たことがなかった。 

 また、ミミが塾の帰りで、家の着くのが遅くなった時、「もっと、早く帰ってこい!戸締りができないだろうが!!」と祖父に怒れた。戸締りのことが気がかりで、ミミの帰りが遅くなったことに、何一つ心配されていなかったことに、気づくと怖さを感じる。

 そして、祖母も私が話していても、いつも本を読んでいて、人の話など、まともに聞いてくれる様子はなかった。人当たりの良い人そうにみえて、他人に無関心な感じがした。世渡り上手で、当たり障りのない生き方をしているのだろう。

 こんな家族の元で、生きて、ミミは大丈夫なのだろうか。だんだん、将来を考えることが怖くなっていく。親に認めてもらえないことで、自信を持てず、勉強もスポーツなどもそうだが、何をしても「どうぜ」が頭をよぎるようになっている。

 買ってほしいものを買ってもらえず、何を言っても、違う方向に物事が進んでしまうことに、自分の判断が否定されている気分になり、何をしていても、正しさが判断できていない。訳の分からない状態で、生活をしていることに、最後までやり遂げることができなかった。

 寂しさだけが寄り添ってきて、ミミは孤独の中で、生活をしているきがする。そこに幸福はやってくるのだろうか。

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