貴方へ伝えたい

宵闇(ヨイヤミ)

1つ目『まだそこに居て』

ある日、私達は映画を見に行った。

それは近頃みんながよく観に行っているホラー映画で、観た人からは『あまり怖くない』『あれくらいなら全然観れる』と聞いていた。

それに私自身も少し興味があった。だから一度観てみようと思い、私はそれに貴方を誘った。

するとすんなりOKしてくれた。


だが行く日が近付くにつれ、私は不安になってきた。ホラー映画というものは観たことがない。それにホラーなどの怖いものがとても苦手な私でも本当にそれを観れるのか、と思った。



〜当日〜



券を買って入場開始時間までしばらくお互いに友人とSNSで会話をしたりして時間を潰していた。

入場が開始され、私達は中に入る。

上映が開始されてからしばらく経っていたからか、観に来た人はそれ程多くは居なかった。


室内の照明が消え、上映が開始される。

最初は友人から聞いていた通り、普通のバラエティー番組のようなものだった。

しかし、中盤からだ。

ついにホラーが始まった。

正直に言ってとても怖かった。

怖いものが元々苦手だからというのもあったのだろうけど、本当に怖かった。


みんなよくこんなものを観ようと思うな。


そんなことさえ思った。

それと同時に、これが怖くないと言った友人を少しだけ恨んだ。怖いぞこれ。


あまりの怖さで私は隣に座っていた貴方の腕を掴むかとさえ思った。が、流石に迷惑になるかもしれないと思い何とか抑えた。

ギリギリの状態でしたよ。

自分の服をずっと握って、怖さから震えていた。それを貴方は悟ったのかは分かりませんが、途中からずっと腕を近くにやっておいてくれたり、少しこっちよりに座ってくれてましたね。

実はそれものすごく嬉しかったです。

でも貴方の腕使いませんでした。

あと泣いてもいいように持っていたタオルの出番も何とか無くなりました。


ただ映画が終わり外に出てからというもの、震えが全然止まらなくて個人的に少し慌ててました。

右手を普通にしていると、目視でも分かるほどに震えるのです。流石にその状態を周りに、貴方にも気付かれたくなかった。

だから私は時折、両手を前に組んで歩いた。

それで何とか一時的にでも震えを止めたかった。それと、貴方の腕を掴みそうだった。私はそれも止めたくて、自分で両手を繋いでいた。


映画を観ている時は良かったが、終わってから、手は震えるし、最初の方は足すらも少しガクガクしてしまっていた。それにずっと泣きそうだった。


この後、本当は貴方に言おうと、お願いしようと思ったことが一つある。


映画があまりにも怖かったからか、震えも止まらないし、まだ怖いから、落ち着くまで一緒にいて欲しい。


ただそう言いたかった。

だが私はタイミングが悪い。

馬鹿で意気地無しだ。

それすら言えず、結局解散した。

家に帰ったところで勉強をする気にもなれないし、もしかしたら泣いてしまうんじゃないかと考えたら、家に帰りたくもなくなってきてしまった。


結局は何とかなったが、私は貴方にそれだけが言いたかった。迷惑かもしれない。いや、迷惑だと分かっていても、お願いしたかった。


私が貴方の事を好いているか、と言われるとそうなのかもしれない。だがそれが確定なのか、正確なのかは正直分からない。

自分のことなのに、分からない。

だがこれだけは言える。


私は、貴方と居ると何故だか安心するのだ。

きっと知り合ってから色々あったことが効いているのかもしれないが、とても安心出来るのだ。

貴方からどれだけ恐れられようと、そんなことは私の知ったことではない。

それにそう思っていたとしても最終的にはまた貴方は自然と戻ってくるのでしょう。




安心できる貴方と、私はもう少し一緒に居たいと思った。貴方となら、お化け屋敷にでも入れるんじゃないかと、そう思えてしまった。







安心できる貴方へ




これが貴方(本人)に届く日は


きっと来ないでしょう。


そしてまたこの内容や


これの存在を知らずに


貴方はこれからの日々を


過ごしていくのでしょうね。

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