第2話 事故?(問題編(2/3))


遺体の身元はすぐに判明した。

40代、男性会社員。独身。

故人の家族間、職場、プライベートの関係を調べてみたが、・・・なべて普通であった。

家族間の関係は特に仲良しという訳ではないが、これと言ったトラブルなどは無いという。

職場関係も特に人付き合いが良いという訳ではないが、同僚や上司とも普通に会話する。

たまに愚痴をこぼすが、普通の会社員なら誰もがこぼすレベルと言う。

そしてプライベートにおいても、読書が趣味のいわゆるインドア派ではあるが、取り立てておかしいところはない。

ギャンブルもやらず、金銭トラブルの話も特に聞かない。

実際、口座の預金も、多いとは言えないかも知れないが、一人で暮らすには差し当って問題ない程度の蓄えはあった。


ようするに故人の生前の生活をまとめると、「普通」なのである。

ここに警察は、違和感を感じた。

「こんな普通の人物が、自殺を考えるだろうか?」


当たり前だが、自殺を考える人物にはそれなりの理由を持つケースが多い。

借金や金銭トラブルが最たる例だろう。あるいは家族や恋人、職場における人間関係など。

これが悪いのはもちろん、良すぎても良くないことがある。

だが、この故人の生活環境は良過ぎる訳でもなく、さりとて悪い点も見あたらない。

無論、捜査では出てきていない裏の面があったかもしれないが、現段階では自殺から程遠い人物像なのである。

「・・・まぁ、突発的な自殺だろう。稀にいる。」

そう言う警察関係もいた。


だが、それで自殺と断定する訳にもなかなかいかない。

警察は、今一度「事故」「他殺」も大きく視野に入れた上で現場を細かく再調査した。

そしてそれらしき証拠が見つかった。

現場屋上フェンスが、自殺にしては大きく曲がりすぎていたのだ。


(よし、いいぞ!)

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