こんなんなっちゃった

門前払 勝無

第3話

 おきなさいー。

 おきなさい!勇者マユコよ。今日は王様に会いに行く日ですよ。


 マユコは飛び起きた。

 ピーナッツバターを塗ったトーストをかじりながら家を飛び出した。手がピーナッツバターでベトベトになったがマントで拭き取った。

 お城に向かう途中、青い鷹がトーストを分けてくれと言ってきた。マユコは少しトーストをちぎって青い鷹に与えた。

「ありがとう!勇者マユコこれからは貴女に着いていきます」

青い鷹はマユコの後を着いてきた。

 しばらく歩いていると教会から北東くんが出てきた。

「とうとうこの日がきたな!」

北東くんはいつも学ランの前を開けているのにボタンを首元まで締めて青い鷹の後に着いた。

 そして、お城の門の前でピエロが槍を持って立っていた。

「待っていました!勇者マユコ!これからは僕が御守りいたします!さぁ!王様に会いに行きましょう!お供の方も着いてきなさい!」

ピエロの尻に北東くんが蹴りを入れた。

「命令すんじゃねぇ!」

「お前は一番後ろだろ!」

青い鷹が続いて突いた。


 四人は一列に並んでお城の中へ入った。

 下駄箱で上履きに履き替えて階段を上がった。


 一組の教室に入ると同級生達は皆ゾンビになっていた。

 マユコはヌンチャクで戦い始めた。

「全部やっつけるぞ!」

青い鷹はM60で撃ちまくった。

「よっしゃ!」

北東くんは葉巻をくわえて左腕を外してビームガンを放った。

「ピエロ!れいのやつで一気に攻めろ!」

「はい!」

ピエロはアタッシュケースから爆弾のセットを始めたが後ろからゾンビに抱きつかれて首を噛まれてしまった。肉が千切られて血が吹き出した。

 マユコはピエロに抱きついたゾンビを引き離して頭を破壊した。

「ピエロ!アンタはここでアタシ達を逃がして自滅して!!」

「え!まじっすか!出番が!」

「お前は居ても役に立たないからここで死んでコンビニ行ってジュース買っておいてくれ!」

北東くんが言った。

 ピエロは少し悩んだが、覚悟を決めて爆弾を爆発させたー。

 教室は吹き飛んでその場にいた全員死んでしまった。


 マユコはハッと目を覚ました。

 袖についた涎を拭いながら周りを見渡した。数学の授業中でクラスは静まり返っていて夢の中での爆発の余韻が頭に残っていて少し焦げ臭かった。


 下校…。

 マユコは同級生のどうでもいい会話に相づちをうちながらトボトボと帰る。今は誰もいないピエロとの公園を横目に…。空にはカラスに追いかけられてるトンビ…。ペタンコの鞄を脇に抱えた不良少年が横切っていく…。

 気付くと誰もいないのに相づちを打ちながら一人で歩いている。

「あれ…そっか…皆帰ったんだ」

マユコは立ち止まって、指を鳴らして照明を落とした。


つづく

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