解放
「--ここが、レヴィ達がいるダンジョンか。外観は前行ったところとあんまり変わんないんだな」
「まぁな。だが油断すんなよ。前のダンジョンと比べてここはレベルが高いからな、常に気は張っとけよ」
中に入ると薄暗い空間が広がっていた。俺はルニア兄貴の指示で
「なぁバルク」
「なんだ蓮?」
「レヴィ達が襲われたっていう謎のモンスターってもしかして俺達が捕らえたあいつみたいな奴かな?」
「可能性はあるかもな。だが今まで見つかってなかったものが立て続けに見つかるとも考えにくいが」
まぁそうなんだよな。時間が空いているならともかく、俺達が捕らえた時と殆ど日に差がない。1匹発見したら何匹も見つかるって、ゴキブリじゃねぇんだから。
すると、ディアスが何か疑問が生じたらしく、バルクに質問をした。
「そもそも、なぜ彼女らが危険な目に遭っていると分かった?遠くから交信出来る魔法を持っている奴でもいたのか?」
ああそっか、この世界には携帯とか無線機は無いもんな。よく考えなくても出るべき疑問だった。
「それはな、パーティーの1人がなんとかダンジョンから脱出して、近くの村にギルドへの救援要請を出してもらったそうだ」
ここに来るまでに3日かかった。つまり要請を出してから俺達が今ここに来るまで6日は経っているということか。大丈夫だよな?
「だから大急ぎで来たってことなんだな」
「ああ。本来ならその要請依頼した冒険者に話を聞かにゃならんのだが、今回は時間が経ちすぎているんでな。早急に救援に向かうことにしたんだ」
俺たちは地下2階へと進んだ。報告ではレヴィ達がいるのは地下5階らしい。この2階は道が非常に狭く、人1人がようやく歩ける程度の道。一歩踏み違えば真っ逆さまに落下してしまう。
俺は真ん中に並び、前後にしっかり明かりがいくように魔法を操作した。そのせいで足元への注意力が散漫になってしまうので、後ろにはエトラを配置し、仮に落ちてもすぐに壁を作ってもらえるようにした。
「足元もそうだがしっかり周りも見ておけ!いつモンスターが襲ってくるか分かるんねぇからな」
「分かっている」「あいあいさー!」「おう」「……了解」
--と、ここでバルクが急に立ち止まった。なんかあったのか?そう思い名前を呼びかけた時--
「横から敵襲だ!蓮、崖のほうに明かりを頼む!」
「崖?分かった」
指示通り明かりを移動させると、なんとそこには蝙蝠型のモンスターが大量にこちらに向かって飛んできていた。
「
まずはルニア兄貴が拒絶魔法で何匹か退散させる。
「おいディアス!残った残党1箇所に集められるか?」
「--当然だ。
蝙蝠達の四方八方に重力が発生し、それぞれ身を寄せるように押しつぶす。その圧に耐えられずすでに何匹かは霧散していた。
「よし!よくやったディアス!あとはリーダーに任せとけ!
蝙蝠達の真下に発生した砂嵐が1箇所に集まった奴らを一掃した。
「すげぇー!おいら達やることねぇ」
「……だな」
重力で相手の動きを止めて、そこを強力な砂魔法で倒す。もしかして俺今回照明係?
「ディアスお前やんじゃねぇか!お前ならすぐAにだって上がれるだろうよ!」
「……どうも。ところで、君は何をしていた?あまり印象に残ってないんだが」
「うるせぇ。人が一番気にしてることあっさりいうんじゃねえよ」
それ以上言われたら泣いちゃうぞ俺!
「蓮はこれまでで十分役に立っている。照明がなければここまで来るのも苦労しただろう」
ルニア兄貴がさりげなくフォローしてくれた。さす兄!
「……分かってますよそんなの。早く行きましょう」
「そうだな、とにかく急がねぇと」
こうして俺たちは狭く危険な地下2階を突破した。
続いては3階。ここは通路とかではなく、ボス部屋のような広いフロアだった。おまけに2階と比べて明るい。俺の出番が消えてしまう。
俺が少しやさぐれていると、バルクは顔つきを変え、周囲に砂を出し始めた。
「気ィ張れよお前ら。囲まれてんぞ」
「えっ?!いつの間に!おいら全然気付かなかった」
「さっきもそうだが流石はAランク。オレ達とは格が違うな」
「バルク、敵の数は?」
ルニア兄貴が時計を見ながらそう質問した。
「大体100ってところか。大抵は雑魚だが中には数匹Cランククエストのボスレベルの奴が混ざってる。一体一体は大したことないが同時に来られると多少面倒だな」
「出来ることなら全員で戦いたいが時間がない。その数相手では1人では無理だな」
「……エトラ、ルニア一緒に残れ」
バルクは少し悩み、ルニア兄貴とエトラが残ることを決断した。
「ちょっ!エトラはともかくルニア兄貴は1人じゃ戦えないだろ?それじゃあ2人で組む意味が--」
俺がバルクの指示に反対していると、ルニア兄貴が俺を手で制止した。
「蓮、剣を貸してくれないか?」
そう言われ、戸惑いながら俺は剣を渡した。--とその瞬間、数匹の雑魚モンスターが飛び出してきた。
「んなっ!危な--」
俺が止めかけた刹那、モンスターは真っ二つに分かれ池に落ちていた。それをやったのは、ルニア兄貴だった。
「剣……使えたんですか?」
「あまり直接殺すのは得意じゃなくてな。だから普段は持ち歩いていないんだが……こうなったら今回は使うしかあるまい」
「おおー!おいらルニア兄貴の剣捌き久しぶりだ!今回もあれやるの?」
「ああ、その時は頼むぞ、エトラ」
「了解!」
「ここは任せて大丈夫だ!いくぞ2人とも!」
そう言ってバルクは4階へと下る階段へと走っていった。俺達は戸惑いながらそれに追付いする。
「--そうだ蓮!」
エトラに呼び止められ、後ろを振り向くと、拳を振りかざしていた。--あぁ、成る程。
俺は魔法を発動し、その拳を右手で受け止めた。
「覚えてたんだな、おいらの魔法を初めて吸った時のこと」
「まぁな!」
エトラは拳を下げ、再びルニア兄貴のもとへ走っていく。
「--おい兄弟!頑張って女の子助けてこいよ!」
「--おう!そっちは頼んだぞ、兄弟!」
俺も踵を翻し、バルク達の元へ走っていき、途中進路妨害をしてくる奴を倒しながら4階へと降りていった。
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2人対およそ100。圧倒的不利な状況で、2人は堂々としていた。
「エトラ、3階と4階の入り口、壁張って出入り禁止にしてもらえるか?」
「OK!じゃあその間にルニア兄貴は--」
「--ああ、リミッターを外そう」
ルニアの拒絶魔法、これは指を指した対象の好きな箇所や機能などを無くす、あるいは外す魔法。
バルクは己が頭に親指を立て、自身のある機能を拒絶した--「30%--
人間の脳とは体を自ら傷つけないよう、脳が力を抑えている。そしてこの
本来使える力が10%程度。つまり今のルニアは、通常の3倍の力で動けるのだ。
真正面からモンスターに突撃し、全て一撃で屠っていく。背後から迫ってきたものは地面に片手をつき、回し蹴りなどで対応している。脳が活性化しているため判断能力や危機察知能力も3倍になっている。
目の前に以前蓮も戦ったことのある熊型のモンスター。実力で言えばCランククエストボスクラス。しかしその程度の相手、今のルニアには造作もなかった。
「残念だがお前程度では私を止められん。裂け--
早すぎる突きにより、モンスターの体が耐えきれず分散した。
「ひぃー!相変わらずえぐい技っすね。おいらも負けらんねぇ」
拳の周りの空気を大剣状に固め相手に斬り付ける一撃--「|
「エトラ、そっちは大丈夫か?」
「当たり前!ルニア兄貴も、時間忘れてぶっ倒れんなよ!」
「ふっ、言うようになったなエトラ!分かっている、あと8分で全滅させるぞ!」
「おう!5分で十分だ!」
地下3階、ルニアandエトラ。残りモンスター73体。残り時間……8分
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