決闘後
ディアスとの決闘に辛くも勝利した俺だったが、辛すぎた結果気絶してしまった。それから幾らか経ち目を覚ました。
「――蓮!良かった、目を覚ましたか!」
目を覚ますと最初に映ったのはアリアさんの顔だった。どうやらここはまだ闘技場で、俺が倒れてからアリアさんが付きっきりで看病してくれたそうだ。
「アリアさん……色々ありがとうございます。アリアさんのお陰で勝てました」
今回決闘に勝てたのは大半がアリアさんのお陰だ。修行をつけてもらい、最後の決めてとなった攻撃も、事前に魔法をもらってなければ撃てなかった。あれがなければ勝てなかっただろう。
「私は特に何もしてないよ。修行をつけたのは私だが、努力したのは蓮だ。最後の技も見事だったよ、最後に気絶してなけりゃ観衆に自慢して回ってただろうさ」
あぁもうなんで気絶しちゃうかな……今回ばかりは自慢させてやりたかったんだけど。その後、アリアさんは「新しい包帯持ってくるよ」と言い、席を離れた。
俺は上体を起こし、辺りを見渡す。すると、奥の方で寝ているディアスと、それを看病する取り巻きの姿があった。しばらくその様子を見ていると、ディアスの方も目を覚ましたらしく、ゆっくりと上体を起こした。そして目があった俺たちは、どちらからという訳でもなく「「なぁ?」」被ったよ恥ずかしい。
「いいよ、お前からで。んで何?」
「……君は最低ランクだったろう?何故あそこまで強くなった?生半可な努力ではまぐれとはいえオレには勝てん」
「誰がまぐれだ!……って言いたいけど、ぶっちゃけまぐれだよ。そんくらいお前は強かった。凄かったよ」
実際そうだ。雷をもらってたから良かったものの、あれがなければ倒し切れてはいなかっただろう。
ディアスは少し目を丸くし、すぐにいつもの偉そうな顔に戻った。
「当たり前だろう。本来であればオレが負けるなどあり得ぬが……まぁ結果は結果だ。甘んじて受け入れるよ。……では、さっさとオレに対する制約を言え」
「制約?なんだそれ?」
「君……まさかそれを知らずに決闘を受けたのか?バカなのか?」
うるさいな、決闘とか拾った後知ったんだよ。
「あれか、決闘に勝った方が負けた方に好きな命令を下せるとか?」
「そうだ……早く言え」
命令っつったって、咄嗟にには出てこないし、別にこいつを辱めたい訳じゃないしな…………そうだ、これでいいか。
「んじゃあ命令だ。これからは人を見下すな!迷惑かけずに生きなさい!あとあの店の店主にも謝っとけよ」
元々あの街の住人たちはこいつらの横柄な態度にうんざりしていたようだし、これで万々歳だろ。
「おい取り巻き、お前らもだ。3人のうち誰かが悪さしてたら他が止めろ、いいか?」
取り巻きは2人して目を合わせ、頷き合った。
「……君、せっかくの機会をそんなことのために使っていいのか?何か得になるのか?」
「得は別にねぇけど……まぁ今回はまぐれ勝ちだったからってことで。つう訳だ。怪我癒えたらすぐ謝罪行けよ!」
ディアスは少し戸惑った様子だったが、その後少し笑い――
「――ふっ……蓮、君との戦い……今度は勝つ!」
まだなんか上からだな〜。まぁすぐには治らんわな。取り巻きに支えられながらディアスは会場を後にした。その時軽く右手を振っていたので、俺をそれに倣って軽く振り返した。
もう帰ろう、そう思い少し痛む体を支えながら立ち上がろうとしたところで、1人の女の子が現れた。レヴィだった。
「――ようやく起きたのね。あんた3時間も寝てて、挙句アリアさんに看病させるとか何が迷惑かけないよ!」
くっそ、否定できない。1割たりとも反論できない正論であった。マジレスはやめてね、心の傷がえぐれちゃう。
……そういえば、俺こいつに助けられたようなもんなんだよな。あの時の言葉が無かったら俺は諦めてたと思う。
「……えっとさ、レヴィ?」
「ん……?何よいきなり名前で呼んで、きもいわよ」
「ぐっう……!まぁ良いや。――改めて、レヴィ……あの時声掛けてくれてありがとう。この決闘、勝てたのはお前のおかげも大きいよ」
個人の感情抜きにして、ここは正直に気持ちを伝えるべきだと判断し、思いのまま言葉にした。
「きゅ、急に何よ!そもそも私はあんたの応援とかはしてないわ!アリアさんの為に勝ちなさい!って言っただけよ。だから……お礼なんていらない」
確かにアリアさんの為に頑張れととしか言われなかった気はする。まぁ実際それを原動力にした訳だし良いんだけどさ。
「それより、あんたなんで最低ランクなの?今日の動き見る限り全然そんな感じしないんだけど」
「最初に測った時運動能力が尽くEだったんだよ。多分今はCくらいはあるんじゃないか?ってアリアさんが」
正直ディアスでCランクなのだから、俺なんかまだまだDなのではと思ってしまう。
「ふぅーん、そうなんだ。まぁ良いわ、更新するなら早めにしときなさいよ。じゃないといいクエスト無くなるわよ」
「あぁ、分かった。ありがとう」
「それじゃ私もう行くわね。……あ、いい忘れてた」
「何?」
「アリアさんに修行つけてもらってんだからさっさと強くなりなさいよ!今度もあんな戦いするようなら姉弟子である私自らあんたに引導をくれてやるわ!」
「怖えー。お前Bランクだろ?ボコボコにされたくないし、超頑張るよ!」
「超絶頑張りなさい。じゃあね!」
今回はレヴィに助けられた。今度なんかで返した方が良いよな。……女性に何かあげたことねぇから何すりゃ良いかわかんね。
戻ってきたアリアさんが包帯を巻き直してくれ、それから1時間の後、俺たちは帰路へ着いた。不安でしか無かった決闘が、ようやく終わりを告げた。
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家に帰り着き、俺とアリアさんは今日の決闘について反省会を開くことになった。まずはアリアさんから――
「まずは、本当にお疲れ様。よく頑張ったよ。……だが、反省すべき点は多くあった」
「まぁそうですね。最初の斬撃をもっと威力持たせてたらそれで終わってたんじゃないかって思います」
「確かに、あの攻撃は腰が引けていたな。結局それは魔法コントロールがまだ上手くないからだ。その練習は今後も継続して行こう。それと他にも、最初ディアスが舐めていた時にどうして攻めて行かなかった。あそこでも勝てたと思うぞ」
「いや、だって迂闊に攻めたら魔法で反撃されるかもしれなかったから……」
「じゃあ近づく瞬間までずっと魔法を発動していれば良かったろう。ダメ押しに最後相手に触れてから至近距離で重力を叩き込めば楽に勝てた」
そう考えると結構勝ち筋逃してんだな。勝ったから良かったものの、後悔先に立たずとはよく言ったものだ。
その後反省会は1時間に及び、自分の不甲斐なさに身悶えしながら進められた。ほんと、自分の未熟さを痛感させられました。
「――とにかく、今回の反省点も活かしつつ進めていこう。それと、明日はギルドでステータス更新に行こうか。多分Cランクくらいはいけると思うぞ!」
――ようやくこれで最低ランク脱出か。感慨深いものだよ。ようやく力仕事の日々が終わり冒険者らしい仕事が出来る。
「今後の修行はクエスト攻略も含めやっていこうと思う。結局冒険者の主な相手は人ではなくモンスターだからな。それに実践を積む方が成長は早い。強くなってお金も稼げる!万々歳だ!」
モンスター討伐。それを聞いて俺は一つの目標をアリアさんに告げる。それはランクが上がったら最初にやりたかったことだ。
「アリアさん、モンスター討伐に行けるようになったら最初にしたいことがあるんですけど」
「ん?なんだ、言ってみな」
「あの、俺――」
俺の目的を告げ、それをアリアさんは了承してくれた。そして翌日、ステータス更新の為ギルドへとやって来た。
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