第3話 会話が出来る人形展
「会話の出来る人形展 昭和時代の懐かしい情景」
セラミック・アート・センターで開かれた「人形個展」を見てきた。
人形は、紙粘土で顔・身体が出来ているようである。 衣服は木綿・絹など昔の
素材を使用した手作りである。
昭和期 戦後の北海道での庶民生活を題材に取り入れているのが、特徴である。
「三世代の団欒」
祖父母と娘・婿そして孫が、卓袱台に集まっての団欒の
情景。 どの表情も楽しげな会話が聞こえてきそうな構図である。
当時の卓袱台を囲む生活は、食事時・子供の勉強机・母のお裁縫・父の書室代
わりと多機能化していた。 食事は家長が真ん中に子供らは「今日の出来事」を
話をしていた。 祖父母は「昔話」を孫に聞かせてもいた。
「ほんわり」としたぬくもりに包まれた一家団欒でもあった。
現在、核家族化でそんな場面を見るのも難しくなった。
「飛ばしっこ」
少年らの遊びで小便をいかに遠くまで飛ばすか、遠く飛べば
チャンピオンになる。 大抵この遊びは、野球などのスポーッの後に行っていた。
帰宅前の一時の遊びである。中には小便を溜めすぎて膀胱炎になった輩も
いたと記憶している。
昨年、同期会があってこの「飛ばしっこ」の話題が出た。 当時の少年らは、今も
元気で「俺が一番だ」「いや、俺だ」と酔った勢いもあり、
「そんなに言うなら勝 負したら・・・私が審判を勤めてあげる」と同期の女性からの提案。
「今夜は、遅いし・暗いので止めたら」と幹事の助け舟 救われた二人の少年。
翌朝、「私の審判員。何時出番になるの・・・」と例の同期の女性。
既に、あの遊びから60年余が過ぎていた。
「あやとり」
貧しい時代の各家家では、母親が毛糸を買って編み物をしてい
た。 衣服も満足に無い時代でもあり「手作り」のセーターは、母のぬくもりが感じられた。
そして、彼氏から彼女からの贈り物は「手つくりマフラー」であるのが、定番である。母親が、毛糸をとる作業と遊びの時間が重なる事が多かった。
漫画本を見るのも忙しい。 読書で両手が使えない。 そこで両足に毛糸を掛け
る。竹の物差しで「ビッシ」と頭部を張られる。
無言の抵抗には適わない。
「酔っ払い」
近所の酒好きのおじさん。
飲みすぎると身体に悪いと奥さんに飲酒を止められていた。
夕方、少年宅に姿を現す「買ってきてくれ。お釣りは坊にやるから。 頼む」
焼酎4合瓶1本 250円 いつも300円くれた。
50円を二回溜めて「冒険王・少年」を買った。
そのおじさんは、ボイラーマンで昔蒸気機関車「国鉄」の運転者であった。
酔った勢いで上司を殴って国鉄をクビになったとの事だった。
奥さんの心配も理解できた。
少年は、このおじさんが好きだった。
毎回、お釣りをくれるて雑誌が買えるのだから。
その赤ら顔のおじさん、今はいない。
「読んで。よんで」
子供の(読んで)の注文は劇的に強烈である。 「読んで」と最初は優しく「甘い」言葉で寄ってくる。 これを無視していると「読め」と言わんばかりの強い言語に変形する。
そして、それを無視続けると「読めないのだ。字が知らないのだ」と馬鹿にする。 「読んだら。寝るのだよ」と注文を付ける「うん」。
と生返事をして喜ぶ。
孫を持つ年齢になると「読んで・読んで」が、年々多くなる。
孫の年齢も違ってくると回数も多くなる。 「面倒だ」と思っても読んでしまう。
近年は、夜型から昼型へ読む時間帯に変更が見られる。
我が子の息子や娘の時代は、「父さんも仕事がある。忙しい」からと避難していた。
孫は別か・・・
「餅つき」
現在では、地方でしか見かけない餅つきの光景。
冬の風物詩。 都会では、ほとんどその姿を見ることはなくなった。
これは、年末の行事であった。 早朝から米を炊いて蒸篭で蒸かす、熱いうちに木製丸型臼にすばやく入れる。 この役はほとんどが母など女性であった。
それを杵で米をこして、高く振りかざした杵を臼に振り下ろす。この役は父であり男性が主役である。
この杵を上げている瞬間に「アイドリ役」が臼の米を廻す。
タイミングが大切である。
子供たちは、この危険とも思える「餅つき」を見ながら、仕上がった熱い餅を色々に
仕分けしたものに形を変える。 あんこ餅 豆餅 長もち 黄な粉餅 等々 それ
ぞれ家で製造種類は分かれていた。
この作業の親方は大抵「祖母」の役割でもある。
少年は、「あんこ餅」を作り食べてばかりいて妹から「駄目」をくらった。
父に、「まじめにやれ。」と大目玉を食らう。
年末・年越し前の風物詩である。
「ぺったん」餅つきの音 「あいょ」あいどり役の声 「ペッタン」「アイョ」が続く。
家々からこの音が響くと正月はもう直ぐだ。
今は、電気式「餅つき機」も登場して人間性から、かけ離れた季節が到来している。
それぞれの光景から会話が聞こえてくる、それと同時に情景の記憶が甦ってくる。
とても、リアルな人形展。 ( 素晴らしい文化をありがとう。)
世界に発信する「人形」らに、言語はいらないのだ。
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