第15話
放課後、俺は渡辺が話があるということで一人で待っていたら、何故か結希が来た。
結希も呼び出された感じなのだろうか……?
だけど最初の方は目が合っても、その後は一切目を合わせてくれず結希も俺と同じように待っていた。
流石に居心地が悪すぎるから俺は結希に話し掛けた。
「……なあ結希、結希も渡辺に呼び出された口か?」
「だったら何……」
「渡辺から何か聞いてないかなーって……」
ただ話し掛けてるだけなのに、何故か神経をすり減らす俺。
結希は何も言わずに俺の元に近付いてきた。
「えと、結希?な、なんか言って――え?」
不意に結希に抱き締められた。
俺は突然の事過ぎて呆然としていた。
「昨日の事憶えてる?私が突然不機嫌になったときの事」
「まあ……ちょっとは」
「……私ね、ちょっとやきもちしたの」
結希がやきもち……?どうしてだ?
「私、ね……?な、なおくんの事……す――」
「ごっめーん!遅れ、ちゃっ……た?」
結希が俺に抱き付いていて、その姿を渡辺にばっちり見られた俺達二人。
すると結希の顔が真っ赤に染まり、俺から離れた。
「結希ぃ~?あんたやるじゃん?こりゃ私出る必要なかったな~?」
「なっ……?!あぅ……」
「まあなんでもなさそうで良かったかな?……ちょっと妬けちゃうけど」
渡辺は嵐のように現れ嵐のように去っていった。
「結局なんだったんだ……?」
その後、結希は本来の調子を取り戻した。
☆
一瞬の事過ぎて何も憶えてない呼び出しを食らった後俺達は、昇降口で靴を履き変えた時だった。
「あ、先輩!今日は遅いんですね」
「……なおくん?紹介してくれる?」
あの……結希さん?目が笑ってないんですけど……?
「……一年の植田香菜さん、今日食堂でたまたま出逢って仲良くなっただけ」
「……ふーん、そう。私は芝崎結希、なおくんの幼馴染やってます、よろしくね」
「よ、宜しくお願いします!」
な、なんだろう……この二人今とてつもなくヤバイ気しかしねえや。
「せーんぱい?帰りましょ?」
「なっ……?!」
植田の奴が俺の左腕に抱き着いた、結希をあまり怒らせないでくれ~……ついさっき元に戻ったばかりなんだよ~……。
「先輩どうしたんですか?行きましょうよ?」
「な、なおくん!!」
結希も負けじと右腕に抱き着いてくる、その瞬間俺の胸がきゅっと苦しくなった。
あ、あた、当たってる……?!結希の豊満な胸が……?!
「「……」」
俺と結希は顔を俯かせて、熱くなる顔をどうにかして隠そうとしていた。
結希が近くにいるのが分かってるだけに鼓動がだんだんと早くなるのが分かる、やべえ俺結希の事が好きだってことバレてるんじゃ……。
「……うぅ」
でも結希は目を瞑って、恥ずかしさに堪えていた。
右腕に力が加わると、それに応えるような形で胸の感触が伝わってくる。
「両手に花、ですね先輩?」
植田は嬉しそうに言う。
「だ、だな……」
俺は恥ずかしさのあまり適当に応えた。
「……いいなぁ芝崎先輩、こんなに想って貰えるなんて」
彼女がなんか言った気がするけど、今はそれどころじゃない。
「……私気が変わりました、それではまた明日です先輩方」
植田は俺から離れて、一人で帰宅したようだ。
「ゆ、結希……お、俺達も帰ろう」
こくんと頷き、結希は右腕から離れたけど、袖を摘まむような感じで掴んでいた。
もう告白の言葉が喉元まで来ている、でもまだ伝えるには早い……ちゃんとしたムードの中でこの気持ちを言いたい、伝えたいんだ……。
結希……こんな雰囲気の中で対したことが言えない情けない俺でごめん。
覚悟が決まるまで我慢してくれ……。
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