第6話
なおくんに間一髪のところを助けられた私は、足を捻って歩けないところをなおくんにおぶって貰っていた。
その道中。
「足、大丈夫か?」
「あー、うん。大丈夫かな?」
とは言ってもずっとこの状態だから足が今、どの程度なのか分からない。
それにもう少しだけこうしてたいという自分も居る。
「……なあ結希」
「なおくん、何?」
「……いやなんでもない、帰ろう」
☆
《尚輝視点》
放課後たまたま通り掛かった時に、結希が襲われかけていて気付けば俺はとんでもないことまで口走ってしまった。
今結希はどういう気持ちなんだろうか?嬉しい?心地良い?実際のところは分からない。
俺は結希の事が好きだ、小さい頃からずっと一緒でお互いの両親も仲が良く、よく遊んでいたものだ。
小学、中学と同じクラスだった俺は、何とか振り向いて貰おうと努力したけど、お互い部活やらで忙しく前以上に話す機会が減った。
そして今、お互い帰宅部で話す機会が少しずつ戻りかけている。かといって油断出来ない。
結希は気付けば、女性らしくなっていて目のやりどころに困るぐらい魅力的な容姿をしている。
それにモテるから周りからよく幼馴染っていう間柄なのをからかわれたりする。
だからこの際思い切って聞いてみようかなと思って、口を開く。
「足、大丈夫か?」
「あー、うん。大丈夫かな?」
けど出てきた言葉は全く違う言葉で、そりゃ心配はしてるけどそうじゃないっていうこのもどかしさ。
なんて考えていると、結希がさっきよりも力を入れていることの気付く。
「っ!」
あのでかい胸が……背中に?!何も考えるな俺!平常心平常心……!
危うく鼻血が出そうになったのをなんとか耐えた。
というより結希はしがみつきたいぐらいに怖かったのか?
「……なあ結希」
「なおくん、何?」
いや、よそう。辛いことを思い出させるのは酷だ。
「……いやなんでもない、帰ろう」
それに結希は大丈夫そうな気がしたから。
☆
《結希視点》
昇降口に着いた私は、靴に履き替えてなおくんと一緒に帰路についていた。
「さっきはありがと、なおくんが居なかったら私どうなってたんだろうね?ふふっ」
あーダメだ、思い出しちゃう。あの時のなおくんは、物凄く格好良かったから。
「……さあな」
「なーに赤くなってんの?もしかしてあの時の――」
「思い出さなくて良い!」
本当に恥ずかしかったのか、顔が真っ赤だ。
でも私はそれが少しだけ嬉しかった。
「「……」」
その後はお互い無言で、ただひたすら家に向かって歩いていた。
話したいこと山程あるのに、いざとなると意識してなかなか話し掛けにくくなっていた。
「二人ともお帰りなさい……ってどうしたの?結希ちゃん」
「あ、美咲さん」
「ただいま」
美咲さんはなおくんのお母さんで、私のお母さんと学生時代から友人同士ってお父さんから聞いた。
普段は専業主婦なのに今日はやけにそわそわしている。
「母さん……父さんなら大丈夫、なんならおじさん付いてるだろ?」
「そうだけど……!でもお母さんは心配なの!」
「美咲……あんたって本当にあの頃から全然変わってないわね……」
あれお母さん?なんで外に?
「こ、琴音!琴音なら分かってくれるでしょ!?この気持ち?!」
「……はぁ、私なら大丈夫よ?心から通じあってるもの」
「それにしてはお母さん、怒ってる……?」
顔は余裕そうにしてるけど、イライラしてるのかめちゃくちゃ怖い。あ、目逸らした。
「しょ、しょうがないでしょ……?急に居なくなるんだから」
理由がいつものお母さんだ。
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