第4話
翌日、普段と変わらない朝を向かえて、達也と共に学校へ向かう。案の定なおくんも待っていた。
「おはよ結希、それに達也」
「おはようございます尚輝さん」
平常心……平常心……。
「結希?」
「……姉さん」
達也に肩をとんとんと叩かれて、慌てて私は振り向く。
「お、おはよ!なおくん」
「今日も一日よろしくな?」
と言い残して、達也と一緒に歩き出した。
私は一歩後ろで、なおくんと達也の会話を聞きながら作戦を練っていた。
☆
特に何も起こらず昇降口に着いた私達三人、それぞれが上履きに履き替えるためにロッカータイプの靴箱を開けると、三人それぞれに手紙が入っていた。
達也は気にせずそのまま鞄に放り込み、私は昨日すっぽかした罪悪感で小さく溜め息を付いていた。
「ん?なんだこれ……ってお前達もか」
「俺はもう慣れちゃいましたけどね」
「そう、だね……」
私はチラッとなおくんが手持っている手紙を見ると、女の子の文字でなおくんの名前が書かれていた。
私はちょっとムッとして、なおくんを睨みながらぷくーっと頬を膨らませていた。
「えーっと結希……?俺なんかした?」
「してない」
「じゃあなんで怒ってるんだ……?」
「怒ってない」
私は変な胸騒ぎを憶えながら、二人より先に教室へ向かった。一言だけ誰にも聞かれないように呟いて。
「……なおくんのバカ」
☆
教室に着いて自分の席に鞄を置いた瞬間、背後から声がしてそのまま抱き付かれる。
「結希おはよう、んー羨ましい程でかいわねーこれ」
「ちょっと遥香!んっ……止めてよ!皆見てるから!」
「良いではないか良いではないか~?」
あっダメそこ……んっ……!
「そのへんにしとけ、渡辺」
「ちぇ、女の子同士のスキンシップなのにー」
「スキンシップなんて通り越してただのセクハラだよ!」
うう……やっぱり見られてる……!
お母さんみたいに胸が大きいせいで、少しコンプレックスを抱いている。
「悪いな結希、止めるの遅くて……」
「ううん、なおくんのおかげ……あのままだと暴走して誰も止められなかったから」
「そか、まあ止められて良かったのかな?」
もうかっこよすぎて前見れないよー!
「はいはい…夫婦仲円満なのはいいけど、時間大丈夫?」
「「誰が夫婦だ(よ)!」」
「息ぴった……って先生来るよ!」
☆
そしてお昼休み、私と遥香で一緒に昼食を取っている時。
「そういや聞いたよ、弟くんここ入ったんだって?」
「うん、自慢の弟だから仲良くしてね?」
「普段はどんな感じなの?……ってあれ、藤崎くんじゃない?」
遥香は廊下の方を指差し、私の視線をそちらに向けるとなおくんと見知らぬ女の子が何やら話し込んでいて、二人とも笑顔だった。
ズキン―――。
なんだろうこの胸騒ぎ……ざわついていて落ち着かない。
なおくんと謎の女の子がいつの間にか移動していて、私は二人の後を追った。
「ちょっ!結希ご飯は?!」
☆
「はぁっ……はぁっ……!なおくんどこ行ったのかな?」
その前に気になる、この胸騒ぎの正体。嫌な予感しかしない……。
「この声……なおくん……?」
私は声がする方向へ足を向ける、女の子は背中向いていて顔が見えないけどなおくんの顔は見れた。
私は咄嗟に隠れて、二人の会話の内容を聞こうとしていた。
「えっと、話って何かな?」
「大したことじゃないの、ただ一つ質問に答えて貰って良いかな?」
「話せる範囲なら」
一体何の話なんだろう……?
「藤崎くんって……芝崎さんと付き合ってるの?」
「ううん、まだ付き合ってない」
「そうなんだ?てっきり付き合ってるんだと思ってた」
周りから見たらそう見えるのかな……?嬉しいような嬉しくないような……ちょっと複雑。
彼女は深呼吸をしてなおくんに真剣な眼差しで
「……単刀直入に言うね、私と付き合って」
「っ!」
なおくんに告白をしていた。でもなおくんは丁重に断った。
「ごめん、君とは付き合えない」
「それはどうして?」
「……他に好きな子がいるから」
私はその先の言葉を聞きたくなくて、思わず走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます