私は今日も彼女に抱かれる夢を見る

石田夏目

夜23時ほどほどに名の知れた高級ホテルの

一室で私の仕事ははじまる。

カツカツとハイヒールをならしながら

いつものように従業員専用の入り口から入ると無機質なエレベーターにのり32階を押した。

そしてエルメスの鞄から鍵をとりだし

カチャリとドアを開けると一切のシワもなく綺麗に整えられたダブルベットへと腰を下ろし寝転がるとふと視線が窓の景色へとうつった。

この仕事を始めたばかりの頃は

このキネマのような夜景に感動すら覚えたが

今はもうすっかり見慣れてしまって

なんの感情も抱かない。


そんな自分の薄汚れた心に少し嫌気が

さしながらも起き上がり服を脱ぎ始めた。

仕事柄すぐに脱げるように

ワンピースを着るようにしていて

今日は近くのショッピングモールの夏物セールで半額になっていたオレンジ色の花柄

ワンピースだ。

結局いいものを着ていても

直ぐに脱いでしまうためこのくらいのものでちょうどいい。

時々服を着たままシテほしいなんて

性癖の客もいるがそれ以外は下着のまま客を迎えることが多いため下着だけはいいものを着るようにしている。

今日は白のレースのブラジャーにお揃いのパンツ。

いろいろな客がいるけれど男はやはり白が好きらしい。

服を脱ぐとDカップの胸の谷間があらわになった。

やはりこのメーカーの下着は高いだけあるなと火糞笑むと次第にコンコンコンと三回ノックする音が聞こえた。

あぁ、今日がはじまるななんてそんなことを

思いながら空いてるのでどうぞ。とそっけなく答えるとしばらくしてゆっくりと

扉が開いた。

そこにいたのはテレビ通りの少し小太りな

頭皮の薄い男だった。


「えぇっと‥君が噂の‥」



「はい。芸能人専用娼婦の梨里です。

今日はよろしくお願いします。」


私は直ぐに立ち上がりにこりと微笑むとその男の唇を塞ぎベットへと押し倒した。

そう。今日の客は少し強引なプレイが

お好みらしい。

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