第158話 会話と琴と・・

リュース公の頼み それは・・

「エリンシア姫様の姿を描いた絵があれば しばらく御貸し頂けませんか?

あの方は 私の花嫁となる約束を交わしていたのです


アルテイシア姫に白の国の言葉や文字を教えたりして頂き・・アルテイシアも

大変 慕っていて、あの御方なら 母と呼んで言っておりました それに」

「それに?」リアンが尋ねた



「私の子も身ごもっておられました」




「!!」




「わかりました 白の国の私の屋敷に沢山 エリンシア姫の肖像画がありますから


それを一枚取り寄せ 差し上げます」




「よろしいのですか? 絵師に描き写させますよ?」




「構いません・・」微笑むリアン




「有難うございます・・では 今日はこの辺で・・またを後日


エリンシア姫様の御話でも・・」




「ええ、そうですね ところで お急ぎですか?」




「いえ そうではありませんが・・何か?」




「エリンシア姫は 先の戦争の際 黒の王宮から行方不明となりました


その後の消息は そちらでは 何かわかりませんか?」




「・・・いえ 何も・・」


あのヴァン伯爵を殺した際 ヴァン伯爵が言ったエリンシア姫の最後の話は


リュース公はしなかった・・




黒の王アーシュランが記憶を無くした今は・・その話を知るのは


リュース公とセルト将軍のみ




後に リュース公達は 本当の真実の話・・エリンシアが巨人族に囚われ


どのような最期を遂げたかは・・後々に知る事となる





「そうですか・・すみません」




「いえ・・謝らずとも・・エリンシア姫様とは親しかったのでしょう・・」




「私は 白の宗主の愛妾の子で・・同じく白の宗主の愛妾であった姫は


私の亡き母にも 私にも 大変優しく良くして頂きました」




「今度 その御話をお聞かせください


私も黒の国での過ごされたエリンシア姫様の御話をいたします




宜しければ 娘のアルテイシアも連れてきても?」




「歓迎いたします リュース公」




「では必ず・・そうそう 私の領地で取れる魚や 酒も持参いたします」




「それは有難いです リュース公」




「湖畔の中にある私どもの城にもご招待いたします


アーシュラン様やエイル様もぜひ ご一緒に・・」




「それは素晴らしい 美しい城だと 聞いてます


楽しみにしておりますリュース公」




「エルトニア姫様(エイル)と同じオッドアイの美しい瞳と美貌・・


羽琴の名手 羽琴の姫君




優しく素晴らしい方でしたね


またお会いして あの御方の御話をするのを私も楽しみにしております」


リュース公も微笑んで そう言いった




「ではまた リアン殿」リュース公は立ち去った





リアンは窓辺に置かれた エリンシア姫の形見である 小さな竪琴に触れ


指先で 弦を弾く




変わらず 良い音で鳴る




両手があった頃 よくこの竪琴を奏でた




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