夜にたゆたう。

香竹薬孝

くくりあめ

閉じ込められた誰もいないリビング

あまりにも遠い 窓の向こう

広がる光の渦に

いつまでも追いつかない走っても まだ

振り返れない 早すぎた白昼夢の埋葬

自分自身の殺意に怯え 握り締めたまま

右手から離れない 貫かれたままの

夜の冷たい感触


群がる教室のさざめきは死人しか知らされない

灰色の講義棟で刻みつける時計のナイフが

取り返しのつかない罪を痛みを闇の永久に

投げ込み

走っても 走っても振り返れない

夜たちが迷路の中から引き連れてくる

長い永すぎた影絵たちは私に眠ることさえも許さず

幾つもの傷跡を残し去っていく


ただ自由になりたくて屋根裏から盗み出した

真っ白で綺麗な鳥の羽は

目覚めると子どもの汚い小指の欠片に変わっていた

唯一度の罪悪が私に

記憶の中でどれだけのニンゲンタチヲ

あやめさせてきただろう

どんな教えもどんな時間経過も

虚ろな進行しか与えてくれなかった

あの夜からずっと 夢を見ないままに

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