【都市伝説取り扱い部】〜眼鏡外したら部長が美少女だった件〜

マルイチ

1限目 結局美少女ならなんでもいいんだよ。

皆さんは、桜が咲く季節といえばいつだと思うだろうか。おそらく、全ての人が迷わずに春を選ぶであろう。

そう、今日は4月6日。ここ、常高の入学式が盛大に挙行される日である。

そして俺はというと、今日からこの常高の一年生として入学することとなった、いわゆる青春真っ只中のピチピチ高校一年生だ。


【30番 摩耶野海基まやのかいき

「はい!」


今日から俺も高校一年生か・・早いもんだ。小中もあっという間だったな。というのも、思えば過去にこれといって思い入れもない今日この頃。別段変わった人生は送っておらず、とても落ち着いた生活をしていた。部活には所属していなかったが、友達はそこそこいたし、勉強も中の上。まさしく、【平凡】という言葉がふさわしい、それが俺、摩耶野海基という男だった。そしてなぜそんな男である俺が、


「こんなところにいるんだ。」

「何故って?それは君がここにいるからだろう?」


目の前にはメガネがよく似合ういわゆる地味目の女子生徒が1人。つまりは俺とこの女子生徒は今対面するような形で席に座っていた。

だが、ここは普通の場所ではない、と見ればすぐにわかるような場所だった。

まず、匂いがおかしい。臭い、とは違う。しかし、何かの異臭がする。薬品というかなんというか、とにかく危ない感じだ。俺としてはもうそれだけでこの場から一刻も早く去りたいところではあるが、俺は今ある理由によってこの場から動けないでいた。


床に散らばる、虫、虫、虫。


一応は模型であるようだが、まるで今にでも動き出しそうなそれは、大の虫嫌いの俺をその場に止めるには十分すぎるようだった。なんせ体が一ピクセルも動かないのである。模型だろって?模型だろうが虫は虫だ、以上。

あとはなんだ、この部屋を怪しい雰囲気にかなり仕立て上げている立役者であろう紫色の照明。これは一体なんの意味があるのだろうか。それと後方の壁一面には【都市伝説調査リスト】というなの紙が大量に貼られており、それ以外の壁の前には棚が置いてあり、さまざまな大量のおぞましい模型のようなものが飾ってある。


「あ、照明見えづらいから普通に戻すね。」

なら最初から普通にすればいいじゃないか。

「それだと雰囲気出ないでしょ?もうわかってないなぁ。」


一生分かりたくもない気がするが、それは黙っておく。

とりあえず、なぜ俺がこんなところにいるのかを簡単に説明しよう。

俺は常高に入学し、中学の時には部活に入っていなかったこともあって、何処かの部活に所属しようと思い何気なく部活一覧表を見ていた時だった。


【都市伝説取り扱い部ー部員募集中ー】

「都市伝説取り扱い部・・なんだこれ。」


思わず口に出てしまうほどの異様な名前だった。しかし、それと同時に俺の興味を引いた。

そしてとりあえずは部活見学からだと思い立った俺は、その日の放課後にその部室とやらがある場所に行ってみたはいいものの、明らかに他の場所とは違う雰囲気を醸し出していた。


「・・なんか怖いな。ちょっと変な匂いするし、中から変な音聞こえてくるし。」


そんなこんなで俺が部室に入るか入らないか決めかねていたところ、背後から突然声をかけられた。


「君、なにしてるの?」

「え、ああいや、ちょっとここの部活に興味があって・・」

「お!もしかして入部希望者かい?ささ、どうぞどうぞ!」

「え、ちょっとまって!」


そんな声も虚しく、床に転がる虫の模型にひいひい言いながらも腕を強引に引っ張られ、真ん中に設置してある机と椅子に無理やり座らされ、今に至るということだ。話が急展開すぎるだろって?それ俺も思った。


「それじゃあ君は、この部に入部したいってことかな?」

「・・何を聞いてあなたがそう思ったのか、詳しく具体的に説明願います。」

「そんなの顔に書いてあるじゃないか!はっは!」

「腕のいい眼科をお勧めするので直ちに受診することを推奨します。」

「失礼だなぁ。これでも両眼とも視力1.0以上あるんだよ?」

「じゃあその眼鏡なんの意味があるんですか?なんか無駄に灰色がかってよく見えなさそうだし、無駄にでかいし。」

「そりゃあつけてたほうがそれっぽいじゃないか!」

「何がそれっぽいのかわからないですがそろそろ帰ってもいいですか?」

「ダメに決まってるじゃん!何当たり前のこと言ってんの?」


ダメだこいつ、早くなんとかしないと。


「それでは!早速質問なんだけどさ、君は世の中何でできていると思う?」

「何って・・そりゃ原子じゃないですか?」

「はは!君って意外と顔に似合わず理系なんだねー!」

失敬な。

「ごめんごめん!まぁ確かにこの世の全ては原子でできているんだけどさ・・じゃあ例えばなんだけど

、人類は海についてどれくらい知っていると思う?」

「海ですか・・まぁ、そりゃ生命の源な訳ですから、少なくとも半分以上は解明されてそうですけど。」

「ぶっぶー!残念大はずれ!実は人類は海についてたった5%しか解明できていないのだ!」

「思った以上に少ないですね。」

「そうだろう?そして!勿論そんな海にはまだまだ人間が未体験なことだって数多く存在する。それを人類は【不思議】と呼んだ!つまり世の中は不思議でできているのさ!」

(声デケェな・・)「うわぁ凄い。」

「そして・・現代の人間は、それに加えて陰謀論なども含めこう呼んだのさ・・【都市伝説】と。オーパーツにUMAに宇宙人・・考えただけでもゾクゾクするなぁ・・」

(声ちっちぇえな・・)「ゾクゾクしますね。」

「そ・し・て!そんな世の中の都市伝説を調査または解明するために我々によって結成されたこの部活こそ!【都市伝説取り扱い部】というわけだ!」

「わぁー凄いわー」

「はっはっは!そうだろうそうだろう!?もっと崇め祭りたまえ!」

「凄い凄い凄いのでそろそろ帰りますね。」

「ああ!じゃあまた今度・・って、何さりげなく帰ろうとしてのさ!」

「いやぁ・・もう話終わったかなって。」

「ダメだ!早く席に戻りなさい!」

「ちっ・・」

「舌打ちするんじゃない!」


くそ、あわよくばこのまま帰れると思ったんだが・・ん?そういえば今この人。我々って言ってたよな。それってもしかして


「あの、一ついいですか?」

「ん?なんだい?」

「我々ってことは、あなたの他に部員いるんですか?確かに部活は最低3人必要ですけど。」

「何言ってるんだい?そこに2人いるだろう?」


指を刺された方を見る・・と、そこにはいつのまにか金髪の小さい女の子と赤髪の高身長の男が立っていた。ネクタイを見る限り二年生のようだが・・身長が極端だな、この2人。


「おい、人間。今私のこと小さいって思っただろ。失礼だぞ。」

「実際事実だから仕方ないじゃん。お前身長160もねぇもんな。」

「うるさい快斗カイト。あなたは黙ってて。」

「おやおや、宇宙人さんともあろうかたがこんな程度でお怒りとは、怖いですなぁ。」

「・・・殺す。」


なんか目の前で喧嘩し始めたぞこの2人・・ていうか、今、宇宙人って言った?


「ん?ああ、確かに私はエンケラドスという星から来たが、それがどうか?」

「いやどうもこうもないですよ!?しかも何気にさっきから俺の心読んでるし!」

「まぁ、私の星ではいわゆるテレパシーのようなもので会話していたからな。私からすると逆に口から音を発するなんていう極めて非効率な方法を採用しているほうがおかしい。」

「・・本当に宇宙人かもこの人。」

「だからそう言っているだろう。私はルルワ。この星では外国人とのハーフとしている。今後よろしく頼む。」

「よ、よろしくお願いします。」


どうか厨二病を拗らせただけであってくれ頼む。


「その厨二病とやらが何かは知らんが、別に何も拗らせてなどいないぞ。」

「あ、はい。」


もうなんでもありだな。


「その辺にしとけルル。こいつも困ってるだろ?俺は快斗。苗字は柊だ。よろしくな。」

「やっと普通の人が・・よろしくお願いします。」

「ん、いや俺も一応神様やってますんで。普通の人って言う表現は少しちがうかな。」

「ああ神様かなんだ・・って神様!?」

「おう、一応地球の神やってまーす。」

「・・ち、ちなみに証拠は?」

「んー、ほいっと。これでいい?」


指を刺した方を見るとそこには来月発売のはずのジャンプがあった。そう、あったのだ・・いやおかしいだろ!?


「これで信じた?」

「ま、まぁ一応は・・ということは、あの人も?」

「おっと・・気づいてしまったようだね。そう!私こそ!この部活の部長でもあり!異世界からやってきたスーパースター!!その名も!静香奈美しず かなみちゃんその人だー!!!」

「あっそういうのいいんで。」

「なんで私だけ信じてくれないの?!本当だって!異世界から来ました香奈美です!」

「だってあなたを信じろってほうが無理ですよ。この2人は証拠を見せてくれてますけど、あなたは何も見せてくれてないじゃないですか。」


まぁこの2人がいる時点でこの人も異世界人の可能性のほうが高いんだけども。


「ひどいなぁ!!よし、じゃあいいだろう!今から証拠を見せよう!」


すると香奈美さんはいきなり手を前に突き出したかと思うと、何やら呪文のようなものを・・って待て待て待てぃ!


「何する気ですか!」

「今からメラ○ーマを放つ!」

「今のはメラ○ーマではない、メラだ・・って違う!こんなところでそんなの出したら全て吹き飛ぶでしょう?!快斗さんやルルワさんはいいんですか?!

「別にかまわん。私は大してダメージは受けんからな。」

「俺も同様の理由によってなにもしませーん!」

「1人目はともかく2人目はただ面倒くさいだけでしょ!」

「おっしゃあいくぜ!くらえメラ○ーマ!!」

「まじでなにしてんのこの人ぉお!!」


そんな俺の叫び声も虚しく、俺の視界は炎に包まれ、意識が消えていった。




「・・知らない天井だ。」

「なにを言ってるのかよくわからんが、具合は良さそうだな。」

「ルルワさん?俺死んだはずじゃあ・・」

「なにを言っている?流石に死者が出ては困る。だからあいつが魔法を放つ瞬間にお前にバリアをかけた。まぁ、そこそこ大きな規模の爆発だったからな。そのまま気を失ったんだろう。」

「・・そんな規模の爆発起きて大丈夫なんですかこの学校?」

「部室は快斗のおかげで瞬時に復元された。爆発音も私の消音プログラムによって外部には漏れていない。威力も同様に私のバリアによって抑え込んだ。だからなにも問題はない。」

「まじでこの人たち有能すぎて辛い。」

「それよりも、香奈美がお前に会いたいと言っている。ここは保健室だが、部室に移動できるか?」

「ええ、それはかまわないんですけど・・香奈美さんは大丈夫だったんですか?」

「まぁ、骨が一ヶ所折れただけで済んだようだ。」

「ダメじゃないですか。」

「だが大丈夫だ。なにやら薬草とやらで回復していたからな。直ぐに治ったようだ。」

「マジでRPGしてんな・・よっこらしょ。」


ベッドから立ち上がると、やはり体には何もダメージは合っていないらしく、すんなりと動かすことができた。宇宙人パワー恐るべし・・と思いながらも俺は部室までの移動の中、ルルワさんと少し話すことにした。


「あの・・どうしてルルワさんみたいな、いわゆる宇宙人がこんな学校の部活なんかにいるんですか?」

「ん?ああ・・まぁ、色々あってな。少し香奈美に恩があるのだ。しかし私を助けた際にイザコザがあってな・・あいつを守るために、私はここに残っている。」

「守るためって・・つまりは香奈美さんが命を狙われていると?」

なんとも信じがたい話だ。

「ああ。信じがたいだろうが真実だ。」

「・・心読めるってのもなかなか便利ですよね。」

「便利なことばかりではない。私にも色々あるのさ。」

「へぇ・・じゃあ快斗さんはなんでこの部活にいるんです?」

「なんでも、この世界の神として異世界人はとても珍しいらしくてな。興味があるので観察したいとのことだ。」

「なんかあの人らしいな・・」

「私としてはあいつ自体の存在が邪魔なのだがな。さっさと消えてもらわねば困る。」

「一応神様ですよ!?」

「神とは言ってもこの地球の、だろう?私は生まれた惑星がそもそも地球ではない。だからあいつを慕う理由もない。」

「で、でも・・逆らったりしたら消されたりとか?」

「するわけがないだろうあいつが。」

「・・一応信頼はしているんですね。」

「信頼というわけではない・・が、まぁそれに近い分類の感情ではあるだろうな。」

なんだかんだ言ってこの二人はお似合いなのかもしれないな。

「何を言っている。冗談はよせ。」

「ごめんなさい。」


そんな話をしているといつのまにか部室前まで到着していた。


「それじゃあ失礼しますっと・・って、どなたです?」


そこには、絶世の美少女がいた。

黒髪ロングにぱっちり大きな目。口元は・・なんか香奈美さんな似ている気がしないでもないが、気のせいだろう。


「どなたって・・ひどいなぁカイキくん。私だよ、異世界から来たスーパースター香奈美ちゃんだよ?」

「いいえ。あの人はあなたみたいな美少女ではありません。」

「そんな美少女なんて・・ん?今ちょっとバカにした?」


この人があの香奈美さん?まさかぁー??ボサボサで適当にまとめただけの髪に無駄にでかい灰色がかったメガネをかけたあの香奈美ですと?そんなわけ・・


「あるかもしれないな。」

「なにがだい?」


これはもしかして・・あの鉄板な眼鏡外してちゃんと髪整えたらめっちゃ可愛いってやつか!?そうなのか!?


「いやぁね?さっきの自分の爆発で骨やっちゃってさー。薬草急いで食べたら髪の毛まで回復してね?サラサラになったってわけよ!まぁ眼鏡吹き飛んじゃったけど・・」

「香奈美さん。」

「ん?なんだい?」

「もうコンタクトにしましょう。ついでに薬草食べまくってください。」

「・・どうしたのカイキくん?様子が変だよ?」

「俺はなにも変じゃないですよ?ただ香奈美さんのことをすごく可愛いと思ってるだけです。」

「か、可愛いって・・やっやめたまえ!!」


自分でもなんでこんな素直になってるかは知らん。でもマジで可愛いのよ?目の前にこんな美少女いたらそりゃ可愛いって声に出ちゃうでしょ。しょうがないじゃないか、人間だもの。


「あー・・イチャイチャしてるところ悪いんだが、そろそろやめにしてくれないか?この後各部長たちで会議あるもんでさ・・こいついかなくちゃならないんだ。」

「あ、あー!!そうだったな完全に忘れていた!」


ウサクセェ。


「じゃ、じゃあカイキくんまた明日この場所で!」

「ちょっ部長!?俺をここに呼び出したのはなんなんですか?!」

「えっと・・それも明日で!!」


そんなことを言い残したかと思うとそそくさと香奈美さんは部室から出て行ってしまった・・まぁ、明日聞けばいい話だしいいか。


「ふむなるほどな。香奈美の奴そんなこと思ってこいつを誘ったのか・・いやはや、これも運命かな。」

「・・ルルワさん。」

「なんだ?」

「今香奈美さんの心読みましたよね?」

「ああ、読んだが?」

「内容を教えてください。」

「悪いが、それは了承できない。これは香奈美のプライドにも関わるからな。」

「・・快斗さん。」

「ん?なんだね少年。」

「快斗さんはなんで嘘をついてまで香奈美さんを逃したんです?」

「そりゃーお前が香奈美を可愛いなんていうからさ。香奈美照れちゃってたし、こりゃかわいそうだと思ってな。」

「・・・」

「まあ許してくれたまえ少年!あいつもあいつで女なんだ!可愛いなんて言われたらそりゃテンパっちゃうわな!」


その後、俺の耳に何やら見たこともない美少女が現れたという噂が届いたのは、そう遠くないうちだった。・・ていうか結局俺、明日部活に参加することいつの間にか確定してないか?




(まぁ、言えぬよな。あなたのことが一目惚れで好きになったので部活に誘いましたなんて。香奈美もやはり異世界人とはいえど一人の女の子というわけだ。ふふ・・)


「何ニヤついてるんだ?気色悪いな。」

「ふん、貴様のような男には到底わからない話だ。」

「・・まぁいいか。」

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【都市伝説取り扱い部】〜眼鏡外したら部長が美少女だった件〜 マルイチ @Maruiti17

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