1.

有機的なもの、この世のすべてに生が宿る。

生まれ変わりを繰り返し、私は剣(つるぎ)になった。

せめて宝石か何かがよかった、なんて思ったけれど

その時はまだ何もかも分かっていなかった。


この身は研ぎ澄まされ、美しく光り、鏡面のように映るものを照らした。光はより輝き、闇はより深くなった。

確かに、美しくありたいと願った。どこかの生で。

だからこれは、報いかもしれない。


人を切り裂くことは苦痛でもなんでもなかった。

むしろその為に生まれた存在だった。


苦しかったのは、ひとりでいること。

呼んでもらえるまで、真っ暗闇に居続けた。

感覚は麻痺しそうで、中々そうならない。


気が狂いそうだった。


なのに、ひとたび呼ばれると、すべてを忘れた。


もう、狂っていたのかもしれない。


途方もない時間。

たくさんの血を浴びて、

でも錆びることはなく、


不変でいることの苦しさを知った。


この身で私は、なにを願えばいいのだろう。

なにが望みなのだろう。


ただ混乱し、消耗し、窶れはてたその先で、



愛したのは、必然だったんだろう。

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