第2話 祠へ(2)
プリンスゴーストが襲い掛かってきた。
「食らえ!」
マルコスは鋭い爪でひっかいた。
「覚悟しなさい!」
サラは炎を吐いた。プリンスゴーストは熱がった。
「私の魔力を思い知るがよい!」
プリンスゴーストは持っていた杖を振り、魔法で火柱を起こした。サラはまずまずのダメージを食らった。だが、魔法攻撃に弱いマルコスは大ダメージを食らい、瀕死になった。
「マルコス、頑張って!癒しの力を!」
サラは回復魔法でマルコスを回復させた。
「この野郎!」
マルコスは鋭い爪でひっかいた。
「死ね!」
サラは鋭い爪でひっかいた。
「覚悟しろ!」
プリンスゴーストは魔法で雷を落とした。2人は大きなダメージを受けた。
プリンスゴーストは、普通のゴーストよりも少し強く、使う魔法が普通のゴーストよりも強かった。ゴーストが使わない攻撃魔法も多く使ってきて、2人はやや苦戦した。
「守りの力を!」
サラはバリアを張った。これによって、魔法を跳ね返すことができる。
「炎の力を!」
プリンス後ストは2人に向かって火柱を起こした。だが、魔法は跳ね返され、2倍の威力で跳ね返ってきた。プリンスゴーストは大ダメージを受けた。
「そんな・・・、そんな・・・」
プリンスゴーストは気を失い倒れた。だが、すぐに起き上がった。プリンスゴーストは、優しい目つきで2人を見ていた。どうやらプリンスゴーストは、本来の優しい心を取り戻したみたいだ。
「あれ、サラ、大きくなったな。っていうか、ここどこだよ」
サラはその声や口調に聞き覚えがあった。10年前、王神龍と戦い、敗れた時、生き別れになったサムのようだった。
「もだがて、サム?」
「うん、そうだけど。なんでみんなここにいるの?」
2人は驚いた。なんと、プリンスゴーストはサムだった。サムは、両親に捕まり、犬神によって、王神龍に仕えるように洗脳され、プリンスゴーストとなった。サムはそのことを覚えていなかった。王神龍との戦いに敗れてから、意識不明のまま、犬神に洗脳された。そのため、何も覚えておらず、記憶を取り戻したのだ。当然、10年間、何をしていたのか、覚えていなかった。だが、以前から使っていた回復魔法は覚えていた。
「何も覚えてないの?」
「うん、王神龍に倒されてから、プリンスゴーストとして生まれてきたことしか知らなかった。でも、その間に攻撃魔法を上手に使えるようになったんだ。」
サムは放心状態だった。自分に何が起こったのか、まだ理解できなかった。
「サム、攻撃魔法も上手に使えるようになったんだ。すげぇな。俺はまだ下手だよ。早くうまくなりたいな」
攻撃魔法も上手に使えるようになったサムに驚いた。
「どうしたの?僕、今さっき、何をやったの?」
「サムは私たちに襲い掛かってきたのよ。王神龍を封印するから、殺さねばならない、と言ってね」
今さっき2人にやったことを知って、サムは驚いた。サムはその時思った。自分はその間に、犬神によって洗脳されて、犬神の部下となっていたんだろう。
「そんな。サラたちを殺そうとしていたなんて。なんてひどいことをしていたんだ。まぁ、俺がプリンスゴーストだった頃より前の記憶を取り戻したんだから、それでいいじゃないか。堅苦しいことを考えずに、また王神龍を倒しに行こうぜ」
サムは嬉しそうだった。サムは、2人とともに王神龍を封印するために旅に出ることになった。これで、10年前の仲間が全員そろった。
「また旅ができて嬉しいよ、サム」
マルコスは嬉しそうだった。
「サム、お久しぶりね」
「サム、あれから全く会ってなかったから、心配していたんだ」
「ごめんごめん」
サムは頭を下げた。
「いいわよ。サムは悪いんじゃないし」
サラはサムをなぐさめた。
3人はアフールビレッジに向かって歩き出した。ここから先は小高い丘を越える。振り返るとアフールビレッジが見える。その向こうにはリプコットシティが見えた。
その時、敵が襲い掛かってきた。
「ここでも魔物が!」
サラは驚いた。
「炎の力を!」
サムは魔法で火柱を起こした。敵は熱がった。
「覚悟しろ!」
マルコスは鋭い爪でひっかいた。だが敵はあまり痛がらなかった。
「覚悟しなさい!」
サラは炎を吐いた。
「ガオー!」
敵が反撃して、辺りを火の海にした。
「氷の力を!」
サムは敵を氷漬けにした。氷はすぐに砕けたものの、大きなダメージを与えることができた。
「食らえ!」
サラは氷の息を吐いた。敵は氷漬けになった。
「天の怒りを!」
サムは雷を落とした。魔物は氷漬けのまま倒された。
サムは再び仲間に加わったことによって、戦闘が非常に楽になった。プリンスゴーストとして生きた10年間で、サムは、回復魔法や補助魔法に加えて、攻撃魔法を使えるようになり、それを鍛えたことによって、魔力も強くなった。
再び魔物が襲い掛かってきた。今度は2匹だった。
「また現れた!」
サムは驚いた。
「しつこいな!」
マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。
「星の力を!」
サムは魔法で大量の隕石を落とした。敵は大きなダメージを受けた。
「死ね!」
サラは炎を吐いた。敵は熱がった。
「天の怒りを!」
敵の1匹が魔法で雷を落とした。雷を落とされたマルコスは倒れた。
「ガオー!」
もう1匹の敵がサラに向かって炎を吐いた。だがサラには効かなかった。
「再生の力を!」
サムは魔法でマルコスを戦闘復帰させた。
「食らえ!」
サラは炎を吐いた。食らった敵が倒れた。
「氷の力を!」
敵の1匹がサラを氷漬けにした。だがサラはあまりダメージを受けず、氷はすぐに砕けた。
「覚悟しろ!」
マルコスは鋭い爪でひっかいた。魔物が倒れた。
「やっぱり3人いると心強いわね」
「うん」
3人はアフール高原を越えて、ペオンビレッジに着いた。ペオンビレッジは山間にある小さな村だ。村の9割以上が草原や森林で、全盛期には500人前後の魔族や人間が暮らしていた。
アフールビレッジ同様、ここも豪雪地帯だが、アフールビレッジほどではなかった。おもな産業は林業で、ここで伐採される木はリプコットシティで加工されて、色んな形で売られている。
また、この村には、ノームのオーブが祀られていることにちなんで、大地の精霊を讃える祭りがおこなわれていた。
だが、魔界統一同盟が現れ、人間が連れ去られ、別の所で労働させられ、人口は減った。
また、険しい山々に囲まれて場所のため、鉄道もバスもなく、生活が極めて厳しい。そのため、若い魔族は村を出て行き、高齢者ばかりとなった。残った高齢者が次々と死んだことから、人口は更に減った。そして、人口は50人にまで減った。
彼らはまるで家族のようで、非常に仲が良い。古くから行われてきた祭りは、過疎化の影響で行われなくなった。その祭りや、そのために使われていた祠はほとんど忘れ去られた。だが、その祠や、その祠の存在を知る人は多少いた。
「ここがペオンビレッジか」
サムは寂しくなった村を見て驚いていた。
「寂れた村だな」
全盛期にはどれぐらいの人が住んでいたんだろうとマルコスは考えた。
「人間がいなくなって、魔族が少なくなって」
サラは昔のことを思い浮かべていた。
3人は村の中心部にやってきた。だが、中心部とは思えないほど人家は少なく、田畑が多い。田畑の中に人家が存在している程度だ。その人家も廃屋が多く、中には倒壊しそうな廃屋もあった。
3人は、ノームのオーブについて何か知っている人がいるかどうか村の人々に聞こうとした。3人は自信があった。最初はすぐにわかると思った。ノームのオーブは、この村の守り神のようなものだからだ。守り神なんて誰でも知っている。だからどこにあるかすぐにわかるはずだ。
サラは通りすがりの1人の老人に聞いた。その老人は、家でくつろいでいた。口の周りに白い口ひげを生やしていた。
「すいません、この近くにノームのオーブがあると聞いてやってきたんですけど、どこにあるかご存じですか?」
「知らんのお」
老人は首をかしげていた。
3人は隣の家にやってきた。隣の家では、老人は盆栽をしていた。今さっきの老人より少し若そうだった。
「すいません、この近くにノームのオーブがあると聞いてやってきたんですけど、どこにあるかご存じですか?」
「わからんのお」
この老人も知らなかった。
3人は肩を落とした。思っていた以上になかなか見つからなかった。今では、この村の守り神であるノームのオーブを祀る祭りが行われなくなったからだ。過疎化によって失われるものを3人は知った。
次に通りかかった老人に聞いた。その老人は田んぼにいた。最初に聞いた老人よりも老けた顔をしていた。
「すいません、この近くにノームのオーブがあると聞いたやってきたんですが、どこにあるかご存じですか?」
その老人は口ひげを生やしていた。まるで、夢に出てきたあの老人のようだった。
「ノームのオーブの眠る場所?知っておるぞ。あの山の中に、大地の祠がある。その祠の奥に、ノームのオーブが眠っておるはずじゃ。太古の昔、ノーム族の最後の生き残りがこの地で命を落としたそうじゃ。その魂はやがて1つのオーブとなり、この森の奥の洞窟の中の祠に祀られたそうじゃ。昔は毎年夏になると、そのオーブを用いてまつりを開き、大地の神に感謝する祭りが盛大に行われたそうじゃ。ところが、人口が少なくなった今では行われとらんのじゃ」
その男は、この村の長老らしい。そして、その祭りのことを知っていた。ようやく有力な情報を手に入れた。
「あ、ありがとうございます!」
「教えていただき、ありがとうございました」
3人はお辞儀した。
3人はノームのオーブを探すために、大地の祠がある洞窟を目指すことにした。大地の祠は集落の南の山の中にあるという。
「寂れた村ね」
サラは悲しくなった。再びにぎやかな時を取り戻すのはいつだろう。
3人は集落を離れ、木橋を渡った。その木橋は少し老朽化が目立っていたが、修繕されていなかった。もう何年も渡る人がいないようだ。木橋の下には川が流れている。川はとても澄んでいて、川底が見えるほどだ。
木橋を渡ると、林道に入った。歩く人は誰もいなかった。とても静かだった。近くを流れる小川のせせらぎが聞こえるのみだ。所々民家があったが、どれも廃屋で、朽ち果てていた。
「誰もいない」
民家は今にも崩れそうな状態だった。
「こんな所にも人がいたのか」
サラは全盛期にはどんな賑わいだったんだろうと考えた。
「林業を営んでいた人が住んでいたのかな?」
昔はどんな光景だったんだろうとマルコスは考えた。
その時、魔物が襲い掛かってきた。サラのようなドラゴンだ。
「ここにも魔物が」
サラは驚いた。
「食らえ!」
マルコスは鋭い爪でひっかいた。だがドラゴンの皮膚は頑丈で、あまり痛がらなかった。
「天の怒りを!」
サラは天を指した。サラは魔法で雷を落とした。ドラゴンは少し痛がった。
「覚悟しろ!」
ドラゴンは魔法で火柱を起こした。今までより少し強く、マルコスは特に大きなダメージを受けた。
「うっ!」
強いダメージを受け、マルコスは痛がった。
「頑張って!」
サラは回復魔法を使った。
「負けないぞ!」
サムは魔法でドラゴンを氷漬けにした。凍らなかったものの、ドラゴンは大きなダメージを受けた。
「覚悟しろ!」
マルコスは氷を帯びた爪でひっかいた。ドラゴンは倒れた。
3人は獣道に入った。林業を営んでいた人々が行き交った道だった。だが、林業を営む人が誰もいなくなり、草が生い茂り、自然に帰りつつあった。獣道は山の斜面にあり、どこまでも続いているようだった。目の前には森しか見えなかった。
「どこまで続くんだろう」
サラは息を切らしていた。急斜面を登りながら、3人は息を切らしていた。
「本当にこの先に祠があるんかな?」
マルコスは首をかしげた。
歩き続けて10分、3人は急斜面を登り切った。そこには比較的広い林道があった。だが、舗装はされていなかった。
「疲れたわね」
その時、背後から敵が襲い掛かってきた。
「くそっ!背後をつかれた」
サムは驚いた。
「ガオー!」
敵は炎を吐いた。サラ以外は大きなダメージを受けた。
「天の怒りを!」
サムは魔法の杖を天に掲げ、魔法で雷を落とした。敵は痛がった。どうやら雷が弱点のようだ。
「食らえ!」
マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。
「覚悟しなさい!」
サラは口から雷を吐いた。敵は更に痛がり、体がしびれた。
「水の力を!」
サムは魔法で水柱を落とした。敵はびしょ濡れになった。
「とどめだ!」
サラは再び口から雷を吐いた。敵は倒れた。
「危なかったわね」
サラはため息を吐いた。
「後ろにも気を付けないと」
歩き続けて10分、小さな川にやってきた。源流に近く、水はとても澄んでいた。
「やっと水場だ」
マルコスは疲れた表情を見せた。
3人は小さな川でのどを潤した。敵との戦いで疲れていた3人は元気が出た。
「ふぅ。生き返った」
マルコスはため息をついた。
3人は再び祠に向かって歩き出した。長老によると、この林道の先に祠があるという。
「この先よ。がんばりましょ」
サラは2人を励ました。
歩き出してすぐ、魔物が襲い掛かってきた。魔法服を着たオオカミだった。
「また出た!」
マルコスは驚いた。
「水の力を!」
サムは魔法で水柱を落とした。だが、あまり効かなかった。
「炎の力を!」
オオカミは魔法で火柱を起こした。3人はダメージを受けた。特にマルコスは大きなダメージを受けた。
「覚悟!」
マルコスは炎を帯びた爪でひっかいた。敵は痛がり、服に火が付いた。
「食らえ!」
サラはオオカミを炎の渦に包んだ。オオカミは炎に包まれ、倒れた。
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