選ばれなかった私は(Twitter300字SS)

伴美砂都

選ばれなかった私は

 「職員室前そうじ」は先生たちの目があるから男の子たちにいやなことを言われないので好きだった。同じクラスのナナちゃんがほうきで、私がちりとりだった。立ち上がったとき知らないおじさんが来て、立ち止まった。今、思えば小学校に出入りしていた業者の人だろう。

 「いや、べっぴんさんだね!」

 おじさんは私のほうを見もせず、ナナちゃんにそう言って歩き去った。少しまえ妹ともそういうことがあった。私はいつもそうやって「選ばれない」をしてきた。


 ナナちゃんは通り魔に殺された。きれいだったから、と言った犯人の男の言葉はテレビで人類の敵のようにいわれた。嬉しくない、嬉しくなどない、目を閉じた。選ばれなかった私は、生きている。

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