美しい月に手をかざす
桃桜
お月美
「何してるの?」
「見てわからない?」
「わからないから聞いてるの」
「月に手を伸ばしてるんだ」
「どうしてそんなことしてるの?」
「美しいものに手を伸ばしたいって思うのは変かな?」
「その理由を聞けば変じゃないけど、傍から見れば変な人だよ。
夜の空に手を伸ばすなんて」
「他の人からなんてどうでも良いよ。
したいことがあればそれをする。
その方が楽しいよ」
「他の人の評判はどうでも良くないよ。
評判悪くなったら、住みにくい。
気味悪がられるよ」
「そんなこと気にしない。
気にするのは君からの評判だけだ。
君は変だと思う?」
「さっき言った。変じゃないって」
「はは、そうだったね。忘れてたよ」
「いいよ」
「月は…美しい」
「月の上に立っても同じかな?」
「もし月の上に立ったら、そこは何も無い地面が永遠に続いているだけだろうね」
「そうなんだね」
「その代わり地球が美しく見えるだろう」
「地球なんて、美しく無いよ」
「見る視点で変わるんだよ。
遠いから、手が届かないからこそ美しく見えるんだ。
手に届くものは美しく無い」
「変なの」
「君に変と言われるのは少し辛いかな」
「ふふ、なら少し…変」
「少しならいいか」
「そうだよ。私だって少しは変だもの。
変じゃない人なんていないし」
「そう思うとみんな変なのに、自分は変じゃないと思うことは凄く傲慢と思えてくるよ」
「みんな一緒が良いのよ。
一緒だったら怖くないもの」
「みんな一緒の方が変で異常だ。
それなら僕はみんなと一緒じゃなくていい。
変でいい」
「私も同じ。
気が合うね」
「そうだね」
「あ、私そろそろ帰るね。
みんな待ってるから」
「ありがとう」
「うん」
「じゃあ」
君が背中を向ける。
そのまま君の背中は遠ざかって…
でも君を追うことはなくて…
月にかざしていた手を君の背中にかざす。
やっぱり変だ。
変な気持ちだ。
でも変でいい。
美しい月に手をかざす 桃桜 @Yonaka
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