森の魔女は引きこもり

マカダミアナッツが好き

第1話 世代交代?

 ガリガリ、ゴンゴン、ドカンドカンと謎の音が響く中、更にはグフフと怪しげな笑い声まで部屋中にこだまする。


 大鍋の前でいかにもな衣装を身に纏ったいかにもな魔女が楽し気に鍋の中身をかき混ぜては一人きりの部屋で誰に聞かせるでもなく大声で叫ぶ。


「もうすぐ。もうすぐ完成する。これが完成すれば私は・・・・・アーッハッハッ・・・・・見てろよ。私にこんな下らない運命を押し付けた存在め。見つけ出して必ずや復讐してくれる!!」

『・・・君も懲りないね』

「ウゲ!もう気付かれた!?」

『そりゃあんだけ派手に騒いでりゃ嫌でも気付くって』


 大声で笑う魔女の前に現れたのは虹色に輝く光の玉。

 激しく明滅を繰り返す度に男性とも女性とも判別つかない声が響きわたる。


『契約違反。よって君に与えられていたすべての権限を剥奪。一からやり直せ』

「い、嫌だ!」

『ダーメ。遥か昔の契約とはいえ同意したのは君なんだから。さようなら。新しい世界ですべてを忘れて・・・生きていけるといいね~』

「嫌だ!嫌だ!!記憶を無くして生まれ変わるなんて嫌だ~」

『無駄だっての』


 部屋中に光が溢れだし、おさまった時にはもう部屋の中は何もかも無くなっていた。


『はぁ・・・新しく生みださないと。前世の記憶があると教育するのが楽だからって手抜きしてたバチが当たったのかな?・・・・・それとも別世界の魂がネックだったのかな?なんにせよ新しい魔女を早急に生みださないと世界が崩壊しちゃう』


 虹色の光が先ほどとは違う優しい明滅を繰り返す。


 ほどなくして部屋の中に一人の少女が現れた。


『最低限の知識だけは授けたけど、どうかな?』

「どうでしょう?」

『声を出すのに問題は無さそうだね。まぁわからない事や困った事があったら祭壇に話しかけてくれれば届くから。じゃ、僕は前の魔女の後始末に行かないといけないから後は一人で頑張って・・・・・頑張れる?』

「さて?やってみない事には何とも」

『だよね。まぁとにかく頑張ってね』


 なんとも無責任な話をして虹色の光の玉は消えていった。


「さてさて。まずは魔女の大鍋が必要ですね。それから・・・」


 あれこれ忙しく動き回る少女。


 部屋中を自分好みに飾り付けて一段落すると大鍋にむかって呪文を唱える。


「体力回復薬と魔力回復薬の生産。あら?まだ下級しか作れない?まぁ生まれたばかりですから仕方ありませんね。時間は無限にあるのですから慌てず騒がずゆっくりと私のペースでやっていきましょう」


 誰に言うでもなく一人ごちてウンウンと頷く少女。


 部屋の中はいつの間にか薬草の匂いで充満していた。 


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