第17話 授与式 ~終~
「えっ!?ほんとかおっさん!?」
「おっさんって…ちょっと君―」
「ガッハハ、エリス、別に構わん!おっさんなのは確かだしな!」
秘書エリスはリオラの失礼な態度に意見しようとするがディオメデスがそれを笑いながら止める。
「この方法ならゲインがわかるだけでなく、同時に仕事に就くこともできるぞ!」
「ディオメデス様!?まさか…彼に入隊を勧めるおつもりですか?」
ディオメデスの意図に気づいたエリスは驚きの表情を浮かべる。
「入隊?騎士団に入れってことか?」
「ガハハハッ!そうだ!もし騎士団であればゲインなど関係なく実力と国民を守る精神があればいい。それに入隊すれば給料も少なからず出るし、もし騎士団として実績を残せば聖職者ギルドのお偉方もゲインの鑑定をせざるをえんだろ?」
「ほんとかそれ!なーんだ、そんな簡単なことだったのか。俺は元から騎士団に入るつもりだったからちょーどいいや!」
リオラの表情が明るくなる。
「なんだそうだったのか!では俺がわざわざ勧める必要もなかったってことだな。」
「団長、そろそろお時間が…」
「おっ、もうそんな時間か!ガッハハハ今日は面白いものを見せてもらった。大きくなれよ、リオラ!」
ディオメデスは最後まで豪快に笑いながら出て行った。
「じゃあ僕たちも帰ろうか!」
「あぁそうだな!」
リオラ達も会場の外へ出ようとした。
――そのとき
「あっ、ちょっと待って!」
背後から呼びとめられる。
そして一人の女性が走ってくる。
「あっ!あんたはカメレオンのねぇちゃんじゃん!」
近づいてきたのは先ほど気絶したゴーグル少女の看護を任せたアケイアだった。
「カメレオンのねぇちゃんって…。まぁいいわ。気絶した女の子目を覚まして帰ったわよ。帰り際にあなたに『ご迷惑かけてごめんなさい』と伝えてほしいって言われちゃって。」
「よかったーあいつ無事だったんだな!あっ、これあいつのなんだけど」
リオラはなくさないように首にかけていたゴーグルを手に取る。
「あーそれ君が持ってたのね。そのゴーグル、大切な物らしくて目が覚めた後ずっと気にしてたから。」
「じゃあ返しに行かないと!」
「うーんたぶん無理ね。彼女が帰ってから結構時間経っているから。でもなんか家に帰れば別の物もあるって言ってたから大丈夫だと思うわよ?」
「そっか…なんか悪いことしちゃったなー」
リオラはゴーグルを見て落ち込む。
「うーん…。あ!そう言えば彼女にどこのギルドに入るのか聞いたときに『私、帝国騎士選抜会に出る予定です』って言ってたわ!彼女なら他のギルドからいくらでもお誘いがあったはずなのになぜかしらね。」
「帝国騎士選抜会…」
「よかったじゃん、リオラ。その子も帝国騎士選抜会に出るんならそこでまた会えるね!」
「帝国騎士選抜会…」
「あら、あなたも帝国騎士選抜会に参加するの?ふふふ、ならもしかしたら私の後輩君になるかもなのね。」
「帝国騎士選抜会…」
「り、リオラ?どうしたの?」
遠くを見つめつぶやくリオラを見てルークが声をかける。
「…なぁ、そのさっきから言ってる帝国騎士選抜会ってなんなんだ?」
「「え?」」
リオラの言葉に固まる二人。
「えーと、リオラは騎士団に入るってさっき言ってなかったっけ?」
「うん、俺は騎士団に入って大活躍してそんでゲインを調べてもらう!」
「…ちなみにどうやって騎士団に入るか知ってる?」
自信満々に胸を張るリオラにルークは恐る恐る尋ねる。
「えっ?そんなの入りたいって言えば入れるんじゃないの?」
…
……
「…あのー、アケイア先生。魔法でリオラの頭を治すことはできませんか?」
「うーん、どんな病気も私なら治せると思ってたけど…初めて自分の限界に気づいたわ。」
ルークとアケイアは顔を見合わせるとため息をつく。
「あのね、騎士団に入るためには帝国騎士選抜会で実力を示さないといけないの。そしてそのうえで将来性や騎士団精神などが感じられた人間だけが入隊できるの。誰でも騎士団に入れるわけじゃないのよ?」
「げっ、そうだったのか…。で、その帝国騎士選抜会ってどうやって参加できるんだ?」
「それなら確かこのへんに…あ、これだわ」
アケイアは白衣のポケットから一枚の用紙を出しリオラに渡す。
「ここに書かれている日に書かれている会場に行けば受けられるわ。」
「えーと、なになに『会場はエレマ地方テクシスアトル』か。知らないけどまぁどうにかなるか!日時は…来月か!意外とすぐだな。」
リオラはその紙をじっくりと読む。
「それじゃ私は次の仕事があるからそろそろ戻らないと。」
「そっか!カメレオンのねぇちゃん、なんかいろいろありがとな!」
リオラ達はアケイアと別れ、外へ出る。
がやがやがや
聖堂の入り口では来た時と同じような人込みができていた。
「もうっ!なんですの!わたくしは人を待っているだけですのに!」
その中心には青髪の美少女―グレアがさぞ迷惑そうに周りを睨み付けている。
「…早く馬車のある宿に戻ろうか。」
「あぁそうだな…」
ルークとリオラはバレないように急ぎ足で横を走り抜けた。
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