第5話 強烈な一撃…
「今日はいい仕事にもありつけて気分よく一日を過ごせるとおもったのによぉ」
デボはブツブツしゃべりながらリオラに近づく。
「あーあ、このズボンけっこう気に入ってたのにこんな汚れどう落とすんだよぉ」
(なんだ?このおっさん戦う気ないのか?)
リオラはデボの様子を見て集中力が少し乱れる。
―その瞬間
「もらったぜ!」
デボは急に動きを速めリオラにこぶしを突き出す。
「おわっ!」
リオラは何とかその攻撃を辛うじて避け、後ろへステップした。
デボのこぶしはリオラの頬をかすめ空を斬っていた。
(あぶねぇー、今のかすっただけでこれかよ…。それに動きも目ではほとんど追えねー)
リオラの頬から血が流れ、それを手でぬぐう。
「いまのよくかわしたなー。たまたまだろうが運がいいやつだ!だが、次はお前の顔面を吹っ飛ばす!」
(相手は素手なんだ。俺が先に攻撃したら防ぎようがないはず…)
「いくぞ!うりゃぁ!」
リオラがデボの頭に向かって剣を振り下ろす。
(よしっ!これは避けられないはず!)
リオラの剣がデボに直撃する。
しかし…
カキンッ
「な、なんで…」
斬りかかったはずのリオラの剣が弾かれる。
「おー、こいつはいいや。痛くも痒くもねぇ。」
デボは不敵な笑みを浮かべる。
「も、もう一度だ!うりゃ!」
カキンッキンッキンッ
何度も斬りかかるが全て弾かれてしまう。
「はぁはぁなんで弾かれるんだ…」
リオラは肩で息をする。
(弾かれるってより、なんていうか、もっとこう、何かあいつの身体の周りに壁が貼られているような感じか?)
「おいおい、もう終わりか?威勢がよかったのは最初だけかよ!」
「うるせぇ、まだまだこっからだっつうの!」
(考えてもわかんねぇ…。とにかく攻撃しまくるしかない)
「まぁまぁ、そんなムキになんなよぉ。その剣重くねぇか?それ振り回すのにはまだまだ筋力が足りてねぇな。」
デボはまた呑気なことを言いながらゆっくりと歩きだす。
「はぁ?おっさん戦いの真っ最中に何を言ってんだ?」
リオラは警戒心を解かずデボから視線をそらさない。
「ちっ、つまんねぇ野郎だなぁ。おいチャケス!起きたなら手伝えよ!」
デボはゆっくりと歩きつつも視線をチャケスが倒れている方へ向ける。
それにつられリオラもそちらに視線を向けた。
が、チャケスは気絶したまま動く様子はなかった。
「まだ気絶してるじゃ…!?」
リオラが視線を戻すとデボの姿が消えていた。
「青二才がっ!もらったぜ」
リオラが後からの声に気づき目を後ろに向けたときにはもう目の前にデボのこぶしがあった。
(あ、これ避けれねぇわ)
リオラの頭には敗北が浮かんだ。
バゴンッ
こぶしとなにかがぶつかった鈍い音が響く。
「…へ?痛くない…?」
リオラはぎゅっと閉じた目を開け、後ろを振り向く。
そこには全身を黒いローブで纏った者がデボのこぶしを手のひらで受け止めていた。
「反応は悪くないが…。なんにせよ実戦経験が足りなすぎるな。」
若い女の声でそのローブを着た者はリオラに話しかけた。
「て、てめぇ何もんだっ!くそがっ!」
リオラと同じく状況を把握できず固まっていたデボだが、自分のこぶしが簡単に受け止められたことが信じられず、再びこぶしをふるう。
――が、それもローブを着た者に受け止められ、さらに今度は手のひらではなく人差し指だけでこぶしを止めている。
「成長を感じない者の稽古をつける気はない。」
「…は?」
デボは何が起きたのか理解できていないようだ。
「というより暑苦しいぞ。離れろ。」
そういうとこぶしを受け止めていた指を下に向け、バランスを崩し前のめりになったデボの額にデコピンをくらわす。
ヒュゥーーー ドガッ
巨体は吹っ飛び、壁に激突した。
「…え?ええええぇぇぇぇぇ!?」
リオラは訳が分からず、叫び、立ち尽くすしかできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます