回想する養女
成長した幼女
あたしは、養父とは
あまり上手くいっていなかった……
もちろん、孤児院から
引き取ってくれたことには
感謝しているのだけれど……。
「お嬢様っ!?
旦那様の一周忌に行かないって
どういうことですかっ!?」
ジルがかなり本気で
怒っているような気がする、
マズいかな……
「あたし、別に
魂とか、死後の世界とか信じてないしぃ」
「そういう問題じゃあ、ありませんっ!」
「旦那様のお見舞いにも
結局一度しか
来なかったじゃあないですかっ!」
「行きそびれてたんだよ、
まぁ、いろいろあったし……
いつか行こうとずっと思ってたら
突然、危篤になっちゃったからさぁ
それでも、最後はジルと一緒に
看取ってあげられたんだから、
もうそれでいいじゃない……」
「旦那様の意識があるうちに
お嬢様の元気なお姿を
見せてあげたかったのに……」
あたしは死後の世界なんて
信じてはいないけど……
それでももしそんなのがあるのなら、
養父は天国に行けたのだろうか……?
もし例え、
それが自己満足であったとしても
あたしを養ってくれたのは事実だし、
天国ぐらいには行って欲しい気はする……
そもそもよくあの人は、
あれほどのコミュ障なのに
あたしを引き取ろうなんて思ったものだ……
–
記憶の中におぼろ気にある
本当のお父さんの記憶。
顔すらも覚えてはいないけれど
決して忘れることはないぬくもり……。
本当のお父さんはいつも
あたしを抱きしめてくれていた
すぐに抱っこしてくれて
頭を撫でてくれて
一緒に歩く時は必ず
ずっと手を繋いでいてくれた……
幼いながらに
愛されていること、
大事にされていることが、
言葉が無くても分かった……。
本当のお父さんが死んで
その後、たらい回しにされた先で
まぁ、もう
よくは覚えていないのだけれど
あたしは誰にも
抱きしめてはもらえなかった
日本の叔母さんだという人にも
孤児院に居た時の大人達にも
愛されていないのだと思った……
あたしのお父さんじゃないんだから
それは仕方ないことだと……
だからあの人が、養父が
新しいお父さんだと言われた時から
あたしは心の中で
ずっと呼び掛け続けていた……。
あなたは私の新しいお父さんなのに
どうして私を抱きしめてくれないの?
抱っこしてくれないの?
頭を撫でてはくれないの?
一緒に歩く時は
手を繋いでくれないの?
そして、いつからか
思うようになっていた……
この人は私を愛していないんだ……
私のお父さんなのに……
積極的にスキンシップをしない人が
日本人には多いと知ったのも、
それから大分経ってからのことだったし
その中でも、特に養父は
人と接することに
抵抗がある
それを知ったのは死んでからのことだ。
そう、だからあたしは小さい頃
いつも不機嫌そうな顔をしていたように思う……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます