赤い髪の元軍人
七歳児の服というのは、
一体どこで買えばよいのだろうか?
朝食を済ませた私は、
必死にスマホで検索していた。
娘はジルにすっかり懐いたようで、
キッチンで片付けをしている
彼女の後について回っている。
なにか聞いたこともないような言語で話す
二人の声が聞こえて来るが
こういう時に周囲の他者を
意識からシャットダウン出来る
自分の性質は便利だと思う。
お洒落などにも疎い私に、
現代のアパレル事情などが分かる筈も無く、
無難なところで
やはり大型百貨店かということになるのか。
まぁ、この発想がもう
相当なおっさんなのであろう……。
「……それでは、
これから買い物に行きましょうか……
彼女の服や日常生活品を買いに行かないと」
「かしこまりました、ご主人様
急いで支度をしてまいります」
先程案内したばかりの自分の部屋に
そう言って姿を消したジル。
外出着にでも
着替えて来るのだろうと思っていたが、
戻って来ても、露出の激しい
チープなメイド服のまま
バックだけは抱えていた。
「……まさか、それで行くの?」
「もちろんです、日本のアニメでは、
メイドはどんな時でもメイド服のままです
私はちゃあんと知っています」
うん、一旦、アニメのことは忘れようか?
というかこのままずっと、
日本文化を誤って学んでしまった
とんでも外国人キャラでいくつもりなのか?
-
六億円が当たった後も
これまでの生活習慣は崩したくない
そんな妙なこだわりもあって
昨晩は電車を利用したが、
ファニーを見る
周囲の人々の目を考えると、
今日はタクシーを使わざるを得ない。
「そういうことでしたら、
今後は、
もし車さえご用意いただけましたら、
私が運転いたしますよ
私、どんな車でも乗りこなせますので
元軍人ですかから」
一応ジルにもそのことを話してみたら、
ようやく頼もしい回答をしてくれた。
確かに、これを機に自家用車を所有する
それもありかもしれない。
さしずめジルには
運転手も兼任してもらうことになるのか。
幸いこの家には駐車スペースもあるし
これに関しては
有意義なお金の使い方だという気もする。
納車まで時間が掛かるだろうし
これから今すぐとはいかないだろうが、
今後そうした方がいいだろう。
「それに、
旦那様が心配されているような……
不埒な人攫いや暴漢からは
私が命に代えてでも必ず、
お嬢様をお守りしますから……」
そうだった……
ジルは、この子に会いに
この子を守る為、
敬愛する亡き少尉との約束を守る為に
遠い異国の地、この日本に
はるばるやって来たのだった……。
この子を守りたいという想いは
私なんかとは比にならない筈で
愛というのはよく分からないが
それこそ愛に近いのではないだろうか……。
本当にこの子を想う人間と
私の違いがそこにはあって
私のはあくまで偽善でしかないのだ……。
「私、元軍人ですかから」
ドヤ顔でサムズアップして見せるジル。
それは分かったから、
早く着替えて欲しいのだけど……
もしかして気に入っているのだろうか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます