第12話「強行突破」

 銃声が鳴り響いた。

 街道に待ち伏せしていた賊が一斉にマスケット銃を放つ。

 その数は尋常ではない。中隊200人規模はあろうか。


GM:エトワール率いる騎士たちが「ここは我々が引き受けた! お前たちはアンナ姫を!」と言ってレイピアを引き抜き、教団軍に突撃してゆきます。


バジル:すまないっ! 頼む!


アオイ:しかし、敵はこれほどの戦力を? いったい何者なんでしょうか?


GM:さあ、何者でしょうね(笑顔)


レイ:とにかく、アンナ姫を追いましょう!


GM:しばらく馬を走らせて、ジルエット街道に差し掛かります。ここは風の流れがくるくると変わるのでジルエット風見鶏街道と呼ばれているのですが、そこで数百の軍勢が待ち受けています。馬車はその後方を走ってゆきます。


アオイ:どうします?


バジル:このまま突っ込め!


レオン:隊長がその気なら、私も覚悟を決めます! マスケットの装填速度なら、最初の一発を掻い潜れば敵の懐に入れるはずです。



「待ってください! それは僕らの役目です!」


 後方から疾走してきた数十騎の銃士たちが、マスケット銃を握りしめてバジルたちに並走する。

 指揮を執っているのは新人隊長のユーリ・ブランシュだ。


「我々が敵陣に穴を空けます! バジルさん達はそこを通って姫様を追ってください!」



バジル:ユーリ! ありがとう!


GM:「未来の女王陛下をお助けできるなら、銃士として誉です! さあ、早く!」



 ユーリたちはマスケットを釣瓶撃ちにしながら、敵陣をかく乱してゆく。

 バジル隊は馬に鞭を入れて、躊躇なく敵中に飛び込んだ。

 何度も剣林弾雨を受けて落馬しそうになるが、剣を、魔法を魔導銃キャリバーを振るって迫る敵を引き離す。


 視界の馬車が少しずつ大きくなってゆく。

 馬車を護衛していた6騎の敵が、こちらに向き直り、進路を妨害してくる。あともう少し!


バジル:こいつらを倒せばアンナにたどり着けるんだな!?


GM:ところがどっこい、向かってくる騎兵たちの姿が、突然異形に変わってゆきます。ある者は鱗に覆われ、ある者は頭が鳥に、ある者は羽毛と牙を備えた人型の野獣に変わります。


レオン:魔族!


レイ:えっ? 何故魔族がアンナを?


GM:その謎を解いている暇は無いようですね。魔族たちは襲い掛かってきますよ。



 バジルが魔族めがけて放った銃弾は、光の壁に阻まれる。

 〔プロテクション〕の魔法だ。

 だが、この魔法は攻撃を減殺するだけで強力な一撃は防げない。バジルが攻撃する間魔導銃をチャージしていたレイが、素早い動作で獣型の魔族を撃ち倒す。

 その隙をついて距離を詰めたレオンがすれ違いざまに鳥類型の喉笛を斬り付ける。

 鋭い斬撃に〔プロテクション〕も間に合わず、魔族は喉から血を吹き出して馬から転げ落ちる。


「隊長! 行ってください!」


 精神の全てをつぎ込んで、アオイが〔ヴァイオレントウィンド風魔法〕を連射しながら道を作ってゆく。

 だが、それは精神力が枯渇すればたちまちのうちに取り囲まれることを意味していた。


バジル:アオイ! それじゃあお前が……!


アオイ:銃士隊は居心地がいいですから。それを与えてくれた隊長にほんの恩返しです。


 頷いて見せるアオイに、迷いを振り切って一直線に馬車を目指す。

 騎兵と馬車では、速度差は決定的。無理に加速しようとした馬車は、足を取られて横転する。

 バジルは這い出してきた御者を撃ち倒し、幌の中に飛び込んだ。


GM:中には、縛られたアンナが居ます。中の荷物がクッションになったのか、怪我はないようです。


バジル:剣を抜いて戒めを解こう。


GM:アンナは声にならない声を上げて、バジルに縋り付いて泣きます。

バジル:良かった、と言いたいところだけど、これで終わりじゃないよね?


GM:ええ。街道のヴァンスター側からまた新手がこちらに向かってきます。


バジル:急いでアンナを馬車に乗せてここを離れます! アンナ、もう少し我慢してくれ!


GM:涙をこらえて神妙に頷きます。


レオン:我々も合流して良いですか?


GM:オーケーです。ではまた描写をいれましょう。



◆◆◆◆◆



 気が付いた時には、四方を敵に囲まれていた。

 半分は魔族で、半分は人間。


「一体こいつら、なんなんです!?」


 肩で息をしながら、誰かが叫ぶ。

 それは、疑問と言うより苛立ちと絶望の表明だった。

 ユーリたちは兵力差から分断され、苦しい戦いを強いられている様だ。


「これまでか……いや、彼女を置いて死ぬ気は無い!」


 ユーリは折れた剣を放り、両手に魔力を込める。

 万能選手の彼は、器用貧乏の代わりに戦闘手段が豊富だ。だが、それも精神力が続くまでだが。

 右腕のポルトスも、腕自慢の剣士ハジメも、カソックコートのあちこちを切り裂かれ血まみれだ。

 それでも、誰ひとり引くことはない。

 間に合わせのエセ騎士と呼ばれてきた王立銃士隊。

 しかし、彼らは誰よりも国を思い、王と民の為に戦ってきた。

 残されたのは、恥ずかしい戦いをしてなるものかと言う意地だった。


 だが、希望はそこにあった。


「ユーリ! 今行くぞ!」


 親友ジュリアーノの声が、戦場に響き渡った。


GM:バラバラの装備を身に付けた集団が、一斉に敵に挑んでゆきます。銃士隊のように組織的な戦いは出来ませんが個人の戦闘力はなかなかのものなので、教団軍は一時的に動きを緩めます。どうやらジュリアーノが冒険者を雇ったようですね。


レイ:では、今のうちに脱出を!


GM:ユーリたちも危機を脱したようです。「運動嫌いが、随分無理をするじゃないか」「危なっかしいワーカーホリックを放っておけないからね」「よけいなお世話だ。……ありがとう」と言った会話が。


アオイ:ウホッ!


GM:ウホッ言うな(笑)! ユーリは彼女持ちで、ジュリアーノに至っては妻帯者ですから!


レオン:ゴホン、しかし、大規模戦闘に慣れない冒険者では、この戦力差を覆すには……。


GM:「いえ、我々は先遣隊です。もうすぐ本隊が……」


 ジュリアーノの声に呼応するように、後方から巨大な土煙がもうもうと湧き上がった。

 中から現れたのは、オーバンとヴァレリーが率いる銃士隊・赤枝の騎士連合軍。その数100騎!

 先ほど別行動をとったエトワールも加わっている。

 彼らは、冒険者たちが崩した教団軍の陣形を分断し、各個に打ち倒してゆく。

 100名もの精鋭相手では、いかに魔族だろうと疲れ切った教団軍に勝ち目はない。


アオイ:圧倒的じゃないですか、わが軍は!


レオン:(素に戻って)せっかく形成逆転したのに負け台詞を吐くなよ(笑)!


GM:皆さん、随分余裕あるようですが、まだ問題が残ってますよ?


アオイ:……はっ! 早く城に戻らないと戦争が始まってしまう。


バジル:そうだった! ヤバイ!


GM:「予備の軍馬を用意してあります。早く行ってください」


バジル:恩に着る!


レイ:では急ぎましょう!

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