第12話「好敵手」

GM:さて、後日談です。皆さんは鎖の半分を持って逃げたバッディッツの残りひとりを探しますが、今のところ銃士隊の網にはかかっていません。ただし、エルマンが目を光らせているので、売り払おうとすれば情報が出回るでしょ。


レオン:これは、長引きそうですね。


GM:ジョエルは自分が騙されていたことを悟り、父親に謝罪。ベルモン伯爵もそれを受け入れて、親子仲は修復に向かっているようです。


レオン:取り戻した鎖はちゃんとベルモン伯爵に渡します。


GM:ベルモン伯爵は、半分でも宝物が無事に帰ってきた事を大いに喜びます。「正直私は君たちの事を見くびっていた、許して欲しい」


レイ:いえ、恐れ多い事です。


バジル:事件が解決して何よりです。


レオン:実績を上げることが出来なければそれは当然の事です。逆に認めていただけたのなら、それは素直にお礼申し上げます。


GM:そこで、執務室の扉がノックされて、赤枝の騎士のヴァレリーが入室してきます。手には鎖の半分が。


バジル:うわっ、先を越されたか!


レオン:でも、こちらは下手人を捕らえたんですから。


GM:ヴァレリーですが、ベルモン伯に鎖を手渡すと、皆さんに向き直り、頭を下げます。


レイ:えっ!?


GM:「諸君を『劣った人間』と断じた事を謝罪させて欲しい。私は諸君の身分ではなく、実力を侮っていた。優秀なものにしかるべき評価を与えないのは恥ずべきことだ」


バジル:ヴァレリーの豹変ぶりにうろたえます。


レオン:私はエトワール卿の話を聞いていたので、なるほどこういう御仁なのかと納得します。


GM:「先日の人身売買事件の顛末も聞かせて貰った。君たちをアプリコット嬢の窮状に付け込もうとしていると勝手に誤解したのは私の目が曇っていたせいだ。貴族にはそういう輩も多いが、君たちがそうだと断じたのは偏に私の不明によるものだ」


レイ:この人、実はいい人なんじゃ?


バジル:気にしないでくれ、それより、鎖の半分を見つけてくれて助かったよ。


GM:「君には今回の件で差を付けられたが、負けない」


バジル:ああ、俺もだと言って握手しよう。


 ヴァレリー・ラグランジュは女王アンナの治世で騎士団長を拝命し、銃士長バジルと切磋琢磨する関係となる。

 2人は終生好敵手であり、友人であり続けたと言う。


GM:ヴァレリーを見送った後、ベルモン伯爵は言います。「君らとヴァレリー君には感謝してもし足りないよ。息子の事だが……なに、あれも私の息子だ。きっと立ち直ってくれるに違いないよ」


レオン:差し出がましいようですが一言申し上げるなら、適度に世慣れする事はご子息の年頃であれば逆に必要な事ですよ。


GM:「そうだな。私は些かあれを縛りすぎていたようだ」


バジル:多少のやんちゃはさせてあげて下さいよ。


GM:「今後何か困ったことがあれば相談して欲しい。公人としては君たちのような優秀な人間とは是非縁をつないでおきたいし、私人としても、私は”どちらでも構わない”と思っている。もちろん、今後の君の働き次第ではあるが?」


バジル:あの、仰る意味がわかりませんが……」


GM:「今は分からなければそれでいい」


レオン:(にこにこ笑って)良かったですね、隊長。


バジル:レオンは分かるのか? 教えてくれ。


レオン:これは自分で気づかないと意味がないことですので。


レイ:私も良くわかってないですが、別にお酒や筋肉のお話では無いようなので、特に気にしません(笑)。


 きょとんとするバジルに、ベルモン伯とレオンが笑う。

 レイは相変わらず無表情だが、「何かいいことがあった」と感じ取ったようで、にっこりと微笑する。

 英雄バジルの周囲には、常に笑いが絶えなかったと言う。

 レオンの手記には「それは彼を英雄たらしめた一番の理由である」と記されている。

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