第8話「アコライトのアコさん」

GM:さて、詰所に返ってきた皆さんを、アコライトのアコさんが呼び止めます。


レイ:アコさん?


GM:肩書は医務担当ですが、部隊の衛生や栄養の管理など、医療全般を取り仕切っている女性です。勿論本名はちゃんとあるのですが、皆がアコさんアコさん呼んでいるうちにそれが定着しちゃいました。ヴァーナ野なる人兎族アウリラなので、ウサミミですよー。


バジル:なるほど。じゃあ、ヒールかけてよヒール♪


GM:「バジルさんは別にケガしてないでしょう? そもそもバジルさんもアルケミストじゃないですか」


バジル:いやあ、そこはアコさんのヒールは別物と言うか、もじもじ。


レオン:ああ、なるほど……(生暖かい笑顔)。


GM:分かりやすっ!(笑)

 アコさんはバジルの対応はいつもの奇行だと聞き流します(笑)。

バジル:ヒドイ(笑)。


レイ:ちなみに、私は一切気付いていません(笑)。


GM:「そんなことより、今隊長室に入らない方が良いです。内務省の人が、銃士隊の越権行為に抗議するとかで伝話してきてるんです」


レイ:「伝話?」


レオン:恐らく「伝心の人形」と言うマジックアイテムでしょう。あれなら即座に報告が可能ですので。


GM:その通り。赤枝の騎士団と立地が近いですので。ご近所から文句を言われて、即座に叱責の伝話をかけて来たのでしょう。


レオン:結局上司に言いつけたんですね。トラブルを避けるより、プライドを優先したと言う事でしょうか。


レイ:どうします?


バジル:俺たちは別に悪いことしてないんだし、放っておけばいいよ。それよりアコさん。この子を診てあげてくれないか?


GM:アコさんはジャンの薄汚れた姿にすこしだけ険しい顔をすると、「事情は後で聞きます」と断って、しゃがんでジャンに視線を合わせると、脈をとったり喉を見たりと簡単な診療を行います。

 見立ては「軽度の過労と栄養失調」だそうですね。

バジル:とりあえず良かった。いや、良くないけど。


GM:「軽い食事ならとっても構わないでしょう。食べ終わったら仮眠をとるのが良いと思います」


レオン:じゃあ、食堂のおばちゃんに言って、何かないか聞いてみましょう。



◆◆◆◆◆



GM:今日の朝食は、ベーコンエッグと葉野菜のサラダ、玉ねぎのスープです。おばちゃんがまかないに残しておいたものを取り分けてくれます。


レイ:朝から豪華ですね。


GM:軍隊は食事が悪いと反乱おきますし、銃士隊の広報も食事の美味しさをアピールして人を集めてますので必要経費です。


 ジャンは、運ばれてくる軍隊用の皿に盛られた料理を見て、生唾を飲み込む。

 恐る恐るフォークを手にって、直ぐに置いた。


「こんなの、食べられません。皆を差し置いて僕だけこんな贅沢な物を食べたら、きっと罰があたります」


レイ:……どういう事でしょうか?


GM:ジャンは黙りこんで答えません。


バジル:食べるのが君だけじゃなきゃ良いんだな? ちょっと待ってろ。と言って、倉庫の食材を譲ってもらって、サンドイッチを作ってバスケットに詰める。ほらよ、燻製肉とレタスの贅沢サンドだ。「みんな」が何人だか知らないが、足りなかったらまた作ってやるよ。


GM:ジャンは信じられないものを見るようにバジルを見上げて、堰を切ったように号泣します。「戦で村を焼け出されてから、こんな親切にされるのは初めてです! 妹と逃げてくる途中で捕まって、突然馬車に放り込まれて、それからずっと……」

バジル:ど、どうしよう。おろおろ。


 傍らで話を聞いていたアコさんが、「男の人はこういう時だめですね」と優しく苦笑して、ジャンをそっと抱きしめた。


「辛かったですね。でも、あなたをいじめるような人は、ここにはいませんから」


バジル:アコさん、ありがとう。


GM:「どういたしまして。私も同じ・・・・でしたから。それより皆さん。一度助けたからには、中途半端で放り出しちゃ駄目ですよ?」


レオン:分かっています。今のジャン君の話によると、大規模な人身売買組織が活動しいてるようですね。


レイ:許せません。子供を子供として扱わないのは、大人が一番やってはいけないことです!


レオン:とりあえず、ジャン君が落ち着くまでに銃士長に報告して捜査の許可を貰いましょう。


バジル:そうだな。アコさん、悪いけどジャンを頼む。


 すすり泣くジャンをアコさんに託し、3人の銃士は動き出す。

 起きてしまった不幸はもう覆せない。しかし、これから起こる災いを食い止める事は出来る。

 王立銃士隊は、そのための組織なのだ。

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