第7話「乱闘」
レオンはレイピアの刺突を、ひらりとかわし、腕をひっつかんで投げ飛ばす。それが開戦の合図だった。
4人の騎士たちはいっせいに剣を抜き、躍りかかってくる。
戦力的に見れば、かなり分が悪い。
帯剣しているのはレオンのみで、バジルとレイは銃が主武装。まさか喧嘩で使うわけにはいかない。人数もさっき投げ飛ばした1人を別にしても、相手の方が多数。
だが、個人戦の訓練ならともかく、場末の喧嘩では経験が何よりも物を言う。
レイは
バジルもマスケット銃の銃身をひっつかみ、ストックを騎士めがけて叩きつけた。こうすればレイピアの刀身よりリーチが伸びる。重量物であるマスケット銃を振り回せば、当然体力を消耗するが、傭兵上がりのバジルは鍛え方が違う。騎士はたちまち手首を打たれてレイピアを取り落とす。
レオンに至っては、一刀のレイピアで2人の斬撃を裁いていた。
ここは敢えて攻めない。案の定、レオンを攻め立てていた騎士は、仲間がやられている状況を知り、青ざめる。
見計らったように、バジルが声をあげた。
「みんな、これは不幸な行き違いだった。”話し合い”の結果”誤解”が解けたので、双方引き分けで剣を収めた。そういう事でいいな?」
バジルは相手の面子を潰さないよう配慮して言っているが、割とえげつない提案である。要は「これ以上戦って面子を潰されるより、引き分けの体裁で引いた方がマシだぞ?」と脅しているのだから。だが、官僚上がりだけあって、騎士たちも腹芸は心得ていたようだ。
「うっ、うむ。”誤解”が解けて何よりだ。幕引きにするとしよう」
隊長らしき騎士は、倒れている部下を起こさせ、その場を後にする。
最後まで目は笑っていなかったが。
◆◆◆◆◆
レオン:火事とケンカは王都の華ってか。
GM:正にそんな感じです。民衆も無責任に応援したり、どっちが勝つか賭けたりしてますよ。
バジル:子供に話しかけます。「大丈夫か?」
GM:「ありがとうございます。僕はジャンって言います」
改めて見る少年の姿は、どう見ても不自然だった。
現在、隣国ヴァンスターの拡張政策によって難民が王都に流れ込んではいる。だが、ここまで血色が悪い子供は、スラム街でも見かけないだろう。
あそこはあそこで秩序は存在するし、仕事だってある。栄養失調状態の子供がうろうろしていたら、真っ先に銃士隊に報告が行く筈である。
思案する3人に、ジャン少年は遠慮がちに頭を下げた。
GM:「あのう、助けていただいて心苦しいのですが、このパンを買っていただけないでしょうか? 妹に食べさせたいんです」
レオン:うーん、じゃあこうしよう。「ジャン、これから我々と一緒に来てもらおう」
GM:「えっ?」
レオン:心配するな。捕まえるんじゃない。君は今日一日銃士隊詰所でアルバイトだ。自分で稼いだ金で妹にパンを買ってやるといい。
バジル:「だけどその前に、休息と栄養をしっかりとらないとな。このままだと倒れちゃいそうだ」
ジャンは今一つ状況が飲み込めないようだが、「ありがとうございます」と頭を下げた。
レオン:「パン屋のご主人もそれでいいかな?」と言ってパン代を立て替えの形で渡します。
GM:「ええ、さすが銃士さんは粋だねぇ」と言って喜んで承諾してくれます。その場に居た野次馬達も皆さんを次々に褒め称えます。
街人達は、口々に銃士たちを褒め称える。
「やっぱり困った時は銃士さんに頼るにかぎるなあ」
「それにしても赤枝の騎士はどうしちゃったんだろうねぇ。いつもの人たちは、堅苦しいけどいい人たちだったのに、皆最近見かけなくなっちまって。代わりに警らしてる人達は冗談が通じないし、大声で怒鳴るし」
「前にこの辺を担当してたハンスさんは、コルムの街に転属になったって聞いたよ。あそこは妖魔の討伐で大変だと聞くけど……」
街人たちの言葉からも、不安定な王国の政情が伝わってくる。
冗談ではなく、自分達もいつ前線に駆り出されるか分かったものではないのだ。
バジル:なるほど。
GM:それから、気になる事を言っている人が居ます。
「あの坊主、アルドじいさんのところで煙突掃除やってる子供じゃないか。じいさん、働かせてる子供を人間扱いしない、って噂だが、本当だったんだなぁ」
レオン:それはちょっと気になる。頭に入れておこう。
GM:勿論エルーランでは子供を強制労働させるなんてことは禁止されていますので、皆さんとしては聞き捨てならない話かもしれません。
レオン:事情を聞かないといけないな。
レイ:とりあえず詰所に戻りましょう。
GM:ではジャンはパンを嬉しそうに抱えながらついていきますよ。
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