こんなんなっちゃった

門前払 勝無

第2話

 曇り空からピエロが風船気球でやってきた。雷がゴロゴロとゲリピーだ。

 ピエロは笑いながら泣いている。

 フワフワと街を眺めていると公園で複数人に虐められている子供を見つけた。虐めている子供達には天使の羽根が生えている。虐められている子供にはコウモリのような黒い羽根が生えている。ピエロは公園に降り立ったが困っている。天使が集団で悪魔と戦っていて、見た目はリンチに見えているが、天使が悪魔を倒している…。見て見ぬふりをしようと思った瞬間ー。

「どけ!」

北東くんがピエロを突き飛ばした。

 北東くんはそのまま子供の集団に近づいて、北東くんは子供達の羽根をむしり取っていった。そして全員を平等にして、全員からお金を取り上げてその場を去って行った。


 去り際に北東くんはピエロの肩をポンとして何も言わすに歩いていった。ピエロは自分を愚かだと思った。何事も無かったかのように、自分は関係ないと決め込んで、ただ笑っている。そして、泣いている。

「だから何?」

「え?」

後ろから話し掛けられた。

 肩に鳥を乗せた女の子がガムをクチャクチャ噛んでいる。

「誰?」

怖そうな雰囲気の女の子に聞いてみた。

「お前が誰だよ!ガキの虐めを見て見ぬふりして何が悪いんだ?お前に関係ないガキがもめてるだけじゃん!」

「そうですけど…」

「クソ弱い何にも出来ないお前が責任を感じなくてもいいと思うよ!生きてる価値の無い、生きてても死んでても誰にも迷惑を掛けないお前が悩む必要ないよ」

「…その言葉キツいっす」

「ハハハ…マユコ!からかいすぎたよ!このピエロ泣いてるじゃん!」

肩の青い鷹が笑っている。

 マユコもスクスク笑っている。

「こういうヘタレをからかうと面白いじゃん!」

マユコはブランコに腰掛けた。


 いきなり現れていきなり格差をつけて、なぜか順位が決められてしまった。少しムカついた。

 一位マユコ、二位青い鷹、最下位にピエロー。

 ピエロは逆転しようと手品で札束を出してマユコの足元に投げた。

「あげるよ」

足元に投げられた札束をマユコは拾わないでピエロの顔面にハイキックを食らわせた。

 倒れたピエロはキョトンとマユコを見上げている。

「お前が拾え!」

「金はテメェで稼ぐものでくそ野郎からなんてもらわねぇんだよ」

マユコと青い鷹はピエロに唾を吐いて公園から去って行ったー。


 ピエロは汚れてしまった衣装をはたいて立ち上がると、虐められていた小さな悪魔が心配そうに見てきたー。

「おじさん大丈夫?」

「おじさんじゃねぇし!まだ中二だし!」

小さな悪魔はクスクス笑っている。

「ピエロも怒るんだね」

自分でも驚いた。

 今まで怒るなんて感情は無かったのに今、子供に揶揄われて怒ってしまった。

 泣く、笑う、しかなかった感情に新たな感情が生まれたー。


 ピエロはこの街に降りたって不安だけど少し楽しみになった。

 歩いていると壁から顔を出した犬にバカにされて、野良猫に引っ掻かれて、雑草にビンタされて毛虫に説教される。

 何事もなく生きてきた。風船気球に乗ってひたすらにフラフラしていた。親から小遣いをもらって金だけ安定していれば良いと思っていた。大人になっても金だけ安定していれば良い思っていた。

 でも、違うかもと来年が楽しみになってきた。


つづく

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