あの寓話のコウモリも……

みんなにいい顔をして、

みんなから仲良くしてもらって

気づいたら、みんなに愛されなきゃってなってた。


私はとある寓話のコウモリだった。


ある時勢力が二分されて

その真ん中に立たされたとき、

引き裂かれたみたいに心がぐちゃぐちゃになった。


勇ましいライオンは、私に言った。

空を飛べるあいつらは、

意地汚くお前の目玉を狙ってる。

こちらに来れば真綿でくるんで守ってやるぞ。

私はありがたいと答えた。


誇り高いタカは私に言った。

傲慢なあいつらはお前の羽を疎んでる。

こちらに来れば自由な空を約束しよう。

私はありがたいと答えた。


大地の帝王にも、大空の覇者にも

憧れた私は、結局どちらにもつけずに、

両者の巻き起こした戦の渦に溺れていった。


流されて、疲れ果てた私の前に、

手を差し伸べてくれたのは狐だった。


彼女は、あいつらはいい大人なのに駄々っ子みたいねと苦笑しながら、

私の隣を歩いてくれた。


それでどんなに救われたか。


彼女は、コウモリな私に言った。


選ばなければならないと、

犠牲のない選択などないと。


その時、誰も嫌いたくないからと言って、

どちらにも属せないでいた私は

ただ誰からも嫌われたくなかっただけなのだと気づいた。


狐はそっと尻尾で、私の折れかけた羽を支えながら力強く言い放つ。


みなに等しく好かれるなんてことはできないのだから、貴方の一番を守れる方を選びなさい。


————————————————


あぁ、寓話の中のコウモリも

真の味方が1人でもいたならば、

きっと結末はハッピーエンドだったのだろう。


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