ゲームのNPCに転生してました
凍てつけ
奇跡か、あるいは陰謀か
「リーダー、成功……です」
「よくやった!みんな、ひとまず、お疲れさま」
目の下に隈を作った開発チーム人の多くが、ゆっくりと息をはき、さっきまでの張りつめた空気を弛緩させる。
「あはは、まだ始まったばかりですよ。安定するまでは時間がかかりそうですし、もう少しだけ、頑張りましょう!」
「不具合を見つけたらすぐに修正、エナドリ切れたらかってこーい」
リーダーの言葉に、「ブラック~」「休日返上だぁ」「蝶々が飛んでる~」という言葉があがるが、好きでやっていることだからか、どれも本気で思ってるわけではなかった。いや、最後のはヤバイかも。寝かせておけ~
若干名、限界に達したような者がいたので簡易ベッドに寝かせてから、タバコを吸うために喫煙室に向かう。
喫煙室といってもそこは非常用階段で、10月になり冷えてきた空気が、機器と頭の熱で暑かった体を冷やしていく。
「ふぅ」
リーダーと呼ばれていたこの男性は、ふと疑問に思った。
「あのプログラムで、起動するわけがないんだよなぁ」
日本、ひいては世界初と言えるVRMMOゲームの開発を任されていたが、開発資金も用意された機材も、はっきりいって劣悪と言える環境でしかなかった。
上に打診しても、他所へのアピール程度にしか思ってない人に受諾してもらえるわけがなかった。
それでもリソースを十全に使い、ポケットマネーまで使うことによって、もう少しのところまで来ていた。
「いつだったか、確かNPCを作った辺りだよなぁ」
急に、リソースに余裕が出来たのだ。バグかもしれないと確認を何度も行ったがなにも問題はなく、地形とNPCに使っていたリソースがそのまま戻ってきたのだ。
最初は疑っていたけど、失敗するなら盛大に失敗しよう!とか誰かが言ったのが始まりで、空いたリソースに更なる追加要素をいくつも入れたのだ。
そして今日、いや、もう日が変わったし昨日か。サーバーが稼働し、世界が始動した。
今も観察と修正は行っているだろうが、何回考えても奇跡……成功するわけがなかったわけだから、今も夢見心地だな。
「うっし、休憩おわり」
無駄なことを考えるよりも、今できることをしてしまおう。
「あ、エナドリ買いに行くって言えばもう少しサボれそう」
リーダーは、サボり魔だった。
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