すくえあ・らぶ!~気になるあの子は片思い?両片思い?それとも……~
北森青乃
すくえあ・らぶ!
突然だが、俺は今ピンチを迎えている。それもかなりの深刻さかもしれない。
どうしてこんな事になったのか、自分でもよくは分からない。
何てことない平日。いつも通りに少し早めにセットしたアラームで目覚め、いつも通り洗面所へ向かい顔を洗おうとした。そう、これが俺の毎朝のルーティン。
それがどうだろう。いざドアを開けると、そこには……
白い肌。
細い手足。
そしてピンク色の肌着に包まれた、2つのたわわなモノと目を見張る谷間。
まぁ健全な高校生なら何てラッキーなことだと思うかもしれない。俺もついさっきまではそう思っていた。目の前の人物の、
「バッ、バッ……バカぁ!」
声を聞くまでは。
あぁ、ほっぺが痛い。なんか滅茶苦茶痛い。首が物凄い勢いで横に向いているのが分かる。
どうしてこんなことになったんだ? 只、顔を洗いに来ただけなのに……てか、なんであいつが服脱いで洗面所に居たんだ? どうして……なんで…………あっ、そうだ。全部……
あのバカ親のせいじゃないか。
約1ヶ月前、それは本当に突然だった
『突然だけど、青森ワンダーズに移籍する事になった』
『『『はぁ?』』』
『それに伴って、ママとおチビちゃん2人も付いて来てもらおうと思ってる』
『『『はぁ?』』』
プロバスケットボール選手としてプレーしている父さん。もちろん選手である以上移籍というのは避けては通れないものだ。ただ、今までずっと同じチーム一筋で活躍してきた姿を見ているだけに、驚きは隠せなかった。
けど、本当の問題はそこじゃない。
『ちょっと待って。チビ達連れて行くって、俺達は? まさか寮?』
『マジ? うちの寮ってかなり凄いらしいよな』
『……そんな甘い訳ないでしょ? ね? パパ? ママ?』
『そりゃそうだ。あそこに居たら絶対に堕落した生活を送るに決まってるからな』
『3人共小等部からの友達と離れたくはないだろうし……ちゃんと手は打ってあるわよ?』
『じゃあどうすんだよ?』
『えっとね4月からは……』
『
『『『えぇ!?』』』
□◇☒□◇☒□◇☒□◇☒□◇☒□◇☒
そうだ、それだ。
そんな事を思い出しながら、気が付けば俺は少し熱を帯びた頬をさすり、見慣れた通学路を歩いていた。
なにやら目の前で楽しそうに話している男女の姿が見えるが、いつもの光景なのであまり気にはしないようにしよう。
それよりも、あの痛烈なビンタを食らった後どうやってリカバリーしたのか……それだけは気になる所だ。正直、ここに至るまでの記憶が定かじゃない。もしかして記憶障害という奴だろうか。そう考えるとその威力には寒気しか感じない。
とはいえ、記憶というのは良い事は薄れても、悪い事はしつこくこびり付く。いっそのこと目の前の2人の事も忘れられたらいいのに……まぁそんな願いは、
「マジかよ?」
「本当だって! ふふっ」
目の覚めるような明るい会話で打ち消される。
なんだろう、今まで散々目にしてきたはずなのに、今日は一段とイライラする。
俺の目の前に居る男の子、名前は
そしてその隣で、仲良く話をしている女の子。名前は
まぁ見れば見る程、その会話と立ち振る舞いは絵になる。まさにお似合いとはこのことだろう。
それこそ長年見続けた今でも、変わり映えすることがないくらいに。そして、心のどこかでいつも思っていた。
いつからこうなったのか……
何処で間違ったのか……
もし俺が、隣に居たら……
もう遅いことは……分かっているのに。
そんな悲観的なことを考え、朝から全くツイてない俺の名前は
兄弟の仲は悪くない。むしろ良い方だ。実際話も良くするし、バスケのプレーも噛み合う。なんと言うか海真ならこうする、ここに居るって思えば本当にそうしてくれる。逆もまた然り。この辺は生まれ持った何かなのかもしれない。
ただ1つだけ、俺は海真を嫉んでいる。その原因は他でもない、隣を歩く凜桜の存在だ。
家も近所という事で、俺達は小さい頃から仲が良かった。それに俺自身いつからそういう感情を覚えたのかは定かじゃない。ただ、気が付けば凜桜の事が好きだった。
けど、その頃には既にこの立ち位置は完成していたんだ。似た者同士の2人、気が合わない訳がない。そんな姿を目の前に、俺は割って入ることは出来なかった。何よりこの関係を壊したくなかった。俺が変な事したせいで壊れてしまうんじゃないかって怖かった。
そんな思いのまま数年。関係が変わる事なく数年を経て……
今に至る。
仲良く話す2人を眺めながら、時々相槌を打つ。これもいつも通りの光景だ。しかし、そんないつも通りの関係にも、少し変化はあった。まだじんわり温かい頬がそれを物語っている。
……まさかの居候。
1ヶ月前の両親の爆弾発言。それも驚いたけど、もっと驚いたのが俺達の居候先だった。
俺達の通う鳳瞭学園には寮もあるが、何かと便利なシステムらしくそれを危惧した両親によって阻止。その代わりに手を打ったとドヤ顔で言われた先が……月城家、凜桜の家だった。
確かに月城さん夫妻とうちの両親は昔から仲が良くって、家も近所。しかも仕事の関係で自宅も大きいのは何度も遊びに行ってるから知っている。けど、だからと言って同い年の男を居候させるのはどうなんだろう。
だが、当の本人達は、
「全然大丈夫! 部屋も余ってるし」
「人数が増えて嬉しい限りだ!」
全然気にしている様子はなかったっけ。
こうして俺達、そして中等部の妹の3人は月城家に居候する形になった。海真の奴は最初から乗り気だったし、妹も完全に乗り気だったなぁお姉ちゃんが出来たって。けど、俺は驚きと恥ずかしさで何とも言えなかったっけ。とはいえ、思いがけず凜桜との距離が近付いて嬉しくもなった。完成されつつあったこの状況を打破できるチャンスかも? なんて期待もしたけど……
この状況を見る限り、近くなったのは……
「うぅ……距離が近くなったのは自分だけじゃないって訳か。くっ、どうにかしないとあっと言う間に……」
不意に聞こえて来た声に、一瞬自分が思っていることをうっかり口に出していたのか? そう思い焦ってしまった。けど、そんな焦りもすぐに消えてしまう。横から聞こえてくる、まるで自分が思っているような言葉の数々。その光景は……見慣れ、聞き慣れたものだった。
横に視線を向けると、目の前を歩く2人を羨ましそうに見つめる人の姿。セミロングの髪の毛を携えて、何やら今度は怪しい念を飛ばしている。
「はっ! なっ、なによぉ」
俺に見られていることに気が付き、あたふたしているこいつの名前は
「いや? 別に……」
「笑ってたんでしょ? 知ってるよ? もう……朝の覗きのこと言ってやろうかな?」
「だからあれはワザとじゃ……」
「あっ、恋桜?」
「うん? どうしたの? 海真?」
極度の猫かぶり女だ。
ほらほら俺との対応の違いを見てくれ。
「そうなの? もう、海真ったら。あっ、凜桜ぉ? なんで笑ってるのさぁ。ふふっ」
凄いだろ? こうしてみると、まさに猫の皮を被った
「ねっ? 湯真?」
「あっ、あぁ」
っと、話をいきなり俺に振るんじゃない。素モードと猫かぶりモードの差が激しくてうまく反応出来ないだろ。
「……はぁ、どうしたもんか」
一通りの会話を終え、またもや会話を楽しむ前方の2人。そんな姿を見て、ため息交じりに恋桜が呟く。
こんな時、妹と月城家の長男坊が居ればナチュラルにこの場を壊してくれるんだが……一緒に朝練に行くと言って一足先に学校へ行ってしまった。
「どうしたもこうも……なぁ……」
「やっぱり2人の間は固すぎるよ」
恋桜は素モード全開。まぁさっきは朝の出来事のせいであれだったけど、基本的に俺達は仲が悪い訳じゃない。むしろ協力関係というか、戦友というか……そんな表現が合うのかもしれない。それもそのはず、前を向く恋桜の顔を見れば心の中で何を思っているのかは丸分かりだ。
そう、俺が凜桜を好きなように恋桜は海真に想いを寄せている。
ただ、俺達の恋は実る可能性は……低い。
□◇☒□◇☒□◇☒□◇☒□◇☒□◇☒
いつもの通学路でも自然と出来上がったこの位置関係。息ピッタリな雰囲気。それは学校生活においてもそうだ。
ガラガラガラ
「雨宮ー、おはよう」
「おはよう」
「恋っちゃんおはよー」
「おはよぉ、マコちゃん」
高校のクラス分け。もちろんあいつ等は同じクラスで、当てつけのように離された俺と恋桜も同じクラス。
これがたまたまならまだ分かる。でもさすがに、小等部から今まで1度も同じクラスにならないのはおかしいと思う。
記憶にある限りあいつ等が離れ離れになったのは小等部3年の時のみ。あとは……あぁ思い出すだけでイライラする。そうだ、同じクラスで必ずと言っていい程学級委員長と副委員長に任命されている。
それに比べて、俺と恋桜は同じクラスの時もあれば離れることもある。ただ、お互いに好きな人と同じクラスになったことはない。
恐らく先生たちの間で不正な取引が行われているに違いない。でなければ、もはや運命的に結ばれることがないという示唆。
まぁどっちにしろ、そんな流れにもはや慣れ切っている自分が居た。
「おはよう、恋桜」
「あっ、おはよう」
恋桜はどう思っているんだろう……そう常々思うことがある。ただ、恐らく俺と同じことを考えていて、同じように慣れているんだろう。
しかし、こうしてみると学校での恋桜の人気は、あいつらに負けず劣らずな部分もある気がする。
凜桜と海真は持ち前の明るさで皆を引っ張るタイプだから、同級生の間はもちろん、中等部全体でも有名だった。恐らく高等部でもその道を辿ることだろう。
対して恋桜。素モードとは違い、学校では落ち着いた雰囲気を醸し出す典型的な姉。同級生なのにお姉さんっぽくて……あいつ等とは違う意味で頼りになる存在だそうだ。
それに顔も凜桜と瓜二つなんだから悪くはない。それにスタイルも……ただ残念な事に、おれはその本性を知っている。猫を被る……その理由も。ただ、
ガラガラガラ
「ういー、おはようさん! そんじゃあホームルーム始めるぞ? っとその前に、まだ決まってない学級副委員長なんだが……」
「あっ、先生?」
「ん? どした月城。誰か良い奴でも居るのか?」
「その事なんですけど……雨宮君はどうでしょう?」
だからと言って、色々な事に巻き込んで良い訳じゃないんですけどね!?
□◇☒□◇☒□◇☒□◇☒□◇☒□◇☒
「ふぅ、サッパリした」
少しイレギュラーはあったものの……無難に学校を終え、何とか部活を乗り切った俺を待っていたのは、おばさんの美味しい手料理と、最高のお風呂だった。そしてそんな癒しのフルコースを堪能した後の締めは、涼しい風に当たりながら周りの建物を見渡せる……この屋上。
何気にここは小さい頃からお気に入りだ。他人の家でお気に入りって言うと変かもしれないけど、家……いや前まで住んでいたマンションのベランダとは違って、360℃周りの風景を見渡せるこの場所は開放的で何となく落ち着く。
しかも夜となれば、一瞬で幻想的になる。フェンスに手を乗せてそれらを眺める……これ以上の癒しはないかもしれない。
ガチャ
そんな時だった、不意に後ろから聞こえて来たドアの音。それは誰かがここへ来るという合図だった。けど問題はそれが誰なのか。もしかして凜桜? なんてドキドキしながら視線を向けると、
「あっ」
「はぁ……」
現われたのは案の定、恋桜だった。
「はぁ……とは何よ! 溜息つきたいのは私の方なんですけど?」
「悪い悪い。それにしてもなんで屋上に?」
「なんでって、私は夜にここで佇むのが毎日のルーティンなんですっ」
早速素モード全開で、こっちに近付いて来る恋桜。夜に佇むのがルーティン? おっと、じゃあ邪魔しちゃったか?
「そうなのか……悪いな」
「別に良いよ」
とりあえず機嫌が悪くならないように謝ってみたものの、意外な程恋桜の反応は軽かった。そして俺の隣で夜の景色を眺め始める。
車の通る音と、ビルから見える光。そんな夜の街並みはやっぱり綺麗だった。
それからどのくらい時間が経っただろう、最初に口を開いたのは……恋桜。
「ねぇ、湯真? これからどうなっちゃうんだろうね?」
「どうなるって……チャンスはあるかもしれない。けどそれと同時にあの2人が急接近する可能性だってある」
「そう……だよね……」
恋桜のこんな寂しそうな顔を見るのは何度目だろう。ただ、月明かりに照らされたそれはいつも以上にそう感じさせる。
そう言えば、あの時もそんな顔してたよな。
中等部1年のとある日、とある昼休み。体育館の脇で恋桜が告白されている所に、偶然遭遇したんだ。相手は2年の先輩。俺はとっさに隠れて、その顛末を見守ってた。恋桜の返事はノー、先輩は他に好きな人が居るのか? 誰なのか? しつこく聞いてたっけ。でも恋桜は何とかそれを上手く躱していた。そして先輩は最後にこう言って帰って行った。
本当は好きな奴なんて居ないんだろ?
それを聞いて俯く恋桜。俺はどうしていいか分からなくて、ようやく声掛けようって出て行こうとした時だった、
「私が好きなのは……海真」
小さく口にした名前に、驚いた俺は見事に足を滑らせて……いや、その光景は思い出したくはない。
とにかく、その時初めて知ったんだ。恋桜が海真の事を好きだって事。
「なぁ、恋桜。あの時、俺に海真のこと好きだってバレて……後悔してないか?」
「後悔? 何よ今更。じゃあ逆に聞くけど、凜桜の事が好きなんだって気付かされて後悔してる?」
その言葉通り、俺は特に意識してなかったけど……恋桜曰く小等部辺りから凜桜を気にしてるのがバレバレだったらしい。
恋桜の好きな人を聞いた代わりに、凄まじいカウンターを食らった中等部時代の俺……頑張ったな。でもまぁ、
「そっくりそのまま返すよ。何を今更?」
「「……ふふっ」」
こうして顔を合わせる度に、改めて同じ立場なんだと感じる。それくらい……何もかもが似ている。
けど、想いの年数で言えば恋桜の方が圧倒的に先輩だ。
小さい頃は4人で何も考えずに遊んでいた。それから段々時が経つにつれて、自分の性格ってものが現れて来る。
海真は明るい性格そのまま、俺はいつしかそんな海真を嗜めるように……良い意味落ち着いた、悪い意味消極的な性格。
凜桜は天真爛漫なまま、恋桜は俺達を見守るような姉さんのような性格に。
俺はてっきり皆、元々そういう性格なものだと思ってた。恋桜の本音を聞くまでは。
恋桜は小等部に入った頃には、自分の気持ちに気が付いてた。けどその瞬間、どうやって海真と接すればいいのか分からなくなって、話すのも恥ずかしくなって……一歩引かざるを得ない状態になった。
一歩下がって話をする。一歩下がって皆を見つめる。その結果……周りからは落ち着いたお姉さんだね? しっかりしてるね? 気が付けばそう思われるようになっていた。自分じゃもうどうする事も出来ないくらいに。
「やっぱさ? 恋桜も積極的に行くしかないんじゃない? 自分出して」
「何言ってんの? じゃあ湯真だって凜桜にガツガツ行けばいいじゃない? もう、いけないの分かってるくせに」
最初に恋桜から話を聞いた時、全く同じ事を言った。そして言われた。そしてその言葉の意味はすぐに理解できた。
「だな。俺にも恋桜にも……積極的に行ける勇気はない」
「この仲の良い関係を……壊したくないもん」
俺は海真と仲が良い。
恋桜も凜桜と仲が良い。
そして正確には分からないけど、毎日の距離感、雰囲気、会話している時の顔。それらを見ても……
海真と凜桜は両思いだ。
そこにわざわざ積極的に入って行って、この4人の関係が壊れることを望んじゃいない。
どっちも……お互いの兄妹が好きだから。
「はぁぁぁぁ、しかも居候することになるとはねぇ……湯真? 分かってると思うけど、これはチャンスであり危機よ?」
「知ってるよ。2人で居る時間が長いとなれば、ちょっとしたキッカケで……」
「「正式に付き合うことになる」」
「それだけは……」
「なんとしてでも……」
「「阻止っ!」」
まぁ結局の所、その具体案は浮かんでない。ただ、今までもこれからも手を組んで戦う事に変わりはない。
俺は海真の情報を、恋桜は凜桜の情報を提供する事で徐々に間に入って行く。
誰かが言っていたっけピンチはチャンス。
だとすれば、この状況を絶好の機会に変えてやる。
「恋桜!」
「湯真!」
「これからも……」
「「よろしく!」」
こうして4月の月明かりの下、俺と恋桜はガッチリと握手を交わし……再度、その強い意思を胸に刻んだ。
「じゃあ俺、中入るわ。おやすみ」
「うん。おやすみ」
こうして一足先に中へ戻ろうとした俺は、徐にドアを開けた。すると、その先の階段の下には……
「おっ、湯真!」
「屋上行ってたの? 湯真」
2人仲良く立って居るじゃないか。なんだ? 2人揃って……マジで良い雰囲気出しすぎだろ?
「あぁ、2人は?」
「海真に本借りてたんだ」
「俺も凜桜に本借りててさ、そしたらなんか屋上のドアの音聞こえてよ? 2人で様子見に来たんだ」
本……ねぇ……本当にそうなのか疑いたくなるけど。
「そっか」
「おう、じゃあ俺寝るわ。じゃあおやすみ」
「私も寝るよ。おやすみー2人共」
そう言いながら、自分の部屋へと向かう2人。手前の部屋に入る海真、奥のリビングの方へ向かう凜桜。
一瞬隣同士になったその後ろ姿さえ、何とも言えないくらい……
良い絵になっていた。
========================
(ちょっと前)
「ねっ、ねぇ海真? 聞こえる? 2人なんて言ってるか聞こえる?」
「いや、よく聞こえない」
「えぇ、どうしよう。まさか居候生活が始まったばかりで告白なんてないよね?」
「どうだろう。湯真のやつここぞという時に強心臓だからな」
「えぇ! ダメだよ。それで恋桜と付き合っちゃったら私……」
「おっ、俺だって恋桜が湯真と付き合ったら嫌だぞ!」
「どうしよう。やっぱりあの2人仲良いもん。ずっと一緒だし、クラスだって……」
「そりゃ見てりゃ分かるって。けど……だからって……」
「だっ、だよ……」
「っ! 待て、誰か来る」
「えっ?」
「急いで階段降りよう! 急げ!」
「うん!」
ガチャ
「おっ、湯真!」
「屋上行ってたの? 湯真」
========================
(湯真の部屋)
はぁ、なんだか幸先不安な1日だった。やっぱり2人の間にそれとなく入り込むには……時間が掛かりそうだ。けど、そうこうしている内に……はぁ……
でも、恋桜と改めて協力関係を結べたのはデカいな。とにかく、このチャンスをモノにしないと。
そしてこのピンチを……チャンスに変えないと。
となれば、早く寝て明日に備えよう。闘いの日々は長い。
頑張れ俺。頑張ろう恋桜。
そして待ってろ凜桜。
よっし。電気を消して……ベッドに入って……アラームチェックして……明日も頑張ろう。
「おやすみなさい!」
すくえあ・らぶ!~気になるあの子は片思い?両片思い?それとも……~ 北森青乃 @Kitamoriaono
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