06 全ての日々を冷静に、滞りなく

「かべっ」


「壁?」


「なんかね。壁を燃やしたいってさ。取材がてら」


「そうだね。僕たちの家の壁は一回すでに燃えてるもんね」


「ここ燃やしたら、ほら、あなたおこるとおもって」


「うん。おこるよ。家の壁燃やされたら誰だっておこるよ?」


「それはっ。悪魔のっ。ちーむっ」


 二人が肩を組んで、出ていった。


 すぐに電話を取り出して。


「あっごめんなさい。あの。いつもの捜査官のかたは」


 電話先。不在だという回答。


 まだ国家転覆を目論む女のひとを追ってて忙しいのかな。あの雑誌交流会から、顔を見ていない。


「じゃあええと、どなたか、信頼できるかたに」


 電話先。切り替わる。


『はいどうも。このたび県警に返り咲きました華です』


「えっ県警のトップ」


『いかがいたしました。信頼できる人間を、とのご依頼ですが。いえ。この街の110番は数が少なくてですね。せいぜいが酔っ払った人間の介抱ぐらいなので』


「いま、僕の嫁とその友人が出ていきました。壁を放火すると、言っていました。捕まえていただけますか?」


『あっはい。了解いたしました』


「被害は出ないはずですが、一応連絡をと」


『たいへんですね、そういったかたと恋仲にあるというのは』


「ええ、まあ。好きなってしまったので、しかたがないです」

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