中編
ごきげんよう、イリヤ・シュナイザーです。私は故郷のシュナイザー帝国に帰国し、今は自然豊かな避暑地の別荘でゆっくりと満喫しております
【イリヤ・シュナイザー】
「うーん、誰にも邪魔されずに過ごすのはいいわね。」
【ユリナ・イスファルト】
「だからといって羽目を外しすぎもどうかと思いますが?」
【イリヤ・シュナイザー】
「いいじゃない、ここはグリミナス王国じゃないんだから。」
【ユリナ・イスファルト】
「それもそうですね。」
他国へ嫁いだ姫君にとって、そこは環境や価値観や風習が違う土地、慣れるのには苦労したイリヤは、やはり故郷の土の方が自分の肌に合うのはいいことである
【イリヤ・シュナイザー】
「グリミナス王国で思い出したけど、どう?様子の方は。」
【ユリナ・イスファルト】
「知らせによりますれば、我が国とグリミナス王国は外交による解決をしているところでございます。」
【イリヤ・シュナイザー】
「でもお父様はお許しにならぬのでしょう?大事な娘が侮辱されたとあってはお父様は一歩も譲らないでしょう。」
【ユリナ・イスファルト】
「左様、経済制裁を解けば、彼の国(かのくに)は図に乗ります。今、解いてしまっては、せっかくイリヤ様の御苦労が全てが水の泡になってしまいます。」
イリヤとユリナが愚痴っていたころ、皇宮ではシュナイザー帝国の大臣とグリミナス王国の大臣が話し合いをしていた
【グリミナス王国の大臣】
「どうか、物品等の差し止めを解除していただきたい。」
【シュナイザー帝国の大臣】
「これは異(い)なことを承る。此度の事は貴国が我が国に行った愚挙への返礼でございますが?」
【グリミナス王国の大臣】
「我々とて決して望むべきにあらず。ラメセス殿下の失態に我が主も大変、心を痛めております。だからこそ、こうして貴国への償いをしております。」
【シュナイザー帝国の大臣】
「貢ぎ物で解決できるほど陛下のお怒りは軽くはありませんぞ。貴国の王太子は我が国の顔に泥を塗る所業を犯したのですぞ!」
【グリミナス王国の大臣】
「元より承知しております!我が主はラメセス殿下の王太子を剥奪、王籍から除籍、修道院への永蟄居を決めております。何卒、御慈悲を持って差し止めを解除していただきたい!」
【シュナイザー帝国の大臣】
「それを決めるのは我が主です。我等の一存では決められません。」
【グリミナス王国の大臣】
「ではご返答がくるまで、ここへ留まります!」
【シュナイザー帝国の大臣】
「お好きにされよ。」
大臣同士の会談は終わり、シュナイザー帝国の大臣は主君へ報告した
【シュナイザー帝国の大臣】
「以上が報告の通りにございます。」
【イザリナ・シュナイザー】
「ふん、我が娘を侮辱したドラ息子がそんなに可愛いのか。」
【ジョエル・シュナイザー】
「我等を愚弄するにも程があります!」
報告を聞いた国王と皇太子は激怒した
【シュナイザー帝国の大臣】
「いかがいたしますか?」
【イザリナ・シュナイザー】
「決まっておろう、差し止めは解除せん!貢ぎ物も突き返してこい!」
【ジョエル・シュナイザー】
「もし、抵抗するならば切り捨てても構わん!」
【シュナイザー帝国の大臣】
「畏まりました。」
その後、シュナイザー帝国の大臣の言上によってグリミナス王国の大臣は肩を落とし、シュナイザー帝国の兵士たちの手によって強制的にグリミナス王国へ帰国した
【グリミナス王国の大臣】
「以上が報告の通りにございます。」
【ウルスラ・グリミナス】
「そうか。」
知らせを聞いた国王は肩を落とした
【ウルスラ・グリミナス】
「それで宰相、城下の方はどうだ?」
【グリミナス王国の宰相】
「物品の差し止めによって、物の値段が高騰し、値段を巡って争いが起きております。」
【ウルスラ・グリミナス】
「そうか・・・・・くそ、あのバカ息子が!面倒事を起こしおって!」
国王は地下牢に幽閉しているラメセスに恨み言をいいつつ、解決策を思案していた。一方、バカ息子のラメセス王太子はというと・・・・
【ラメセス・グリミナス】
「なぜだ、なぜ、こうなった。」
魔力封じの首輪をつけられ、罪人用のみすぼらしい服装に無理矢理着替えさせられた。ラメセスは自分の思い描いたおめでたい妄想が思わぬ方向へ行き、国を追い詰める愚挙へと発展したのである
【牢番】
「おい、飯だ。」
牢番は罪人同然にラメセスを扱っていた
【ラメセス・グリミナス】
「ちょっとまて、食事はこれだけか!」
ラメセスに用意された飯はパン一つとスープ1皿のみである
【牢番】
「罪人の分際で偉そうに言うな!誰のせいで国が危機に瀕しているのか分かってんのか!」
【ラメセス・グリミナス】
「くっ!」
ありのままの事実を突きつけられ、それ以上、何も言えなかった。仕方なく、用意された飯を食べることにした
【ラメセス・グリミナス】
「味がしない。スープが冷たい。」
【牢番】
「罪人に出す料理だから仕方がないだろ、食えるだけでも、ありがたいと思え。」
そういうと牢番はラメセスの下を離れた
【ラメセス・グリミナス】
「うう、王太子だったころが懐かしい。なんであんなことをしたんだ。」
ラメセスは涙を流しながら、飯を食べていた。一時的な恋に溺れ、同盟国を蔑ろにしたことを深く後悔していた。一方、軍の方では・・・・
【将軍A】
「上層部は何を考えているんだ!軍備を整えたのなら、戦争しかないだろ!」
【将軍B】
「そうじゃ、手切れとなった以上、戦争でことを決すべきだ!」
【将軍C】
「そうだ!戦わずに敵の軍門に下るは武人の恥だ!」
【大将軍】
「お前たち、何を騒いでいる!」
【将軍A&B&C】
「大将軍!」
【大将軍】
「戦争はいつでもできる、今は英気を養い、訓練を欠かさず行うのが今の我らの仕事だ。」
【将軍A】
「しかしこのまま無駄に時を過ごせば、兵たちの士気が落ちていきます!」
【将軍B】
「それに、物資も満足に供給されず、兵たちは皆、国家への不満と不信感を並べております!」
【将軍C】
「そうです、いつ暴動が起きてもおかしくありません!」
【大将軍】
「分かっている!だが我らは命令を待つのみだ!」
【???】
「無駄だ。」
【大将軍】
「誰だ!」
声をした方へ振り向くと・・・・
【大将軍&将軍A&B&C】
「ミカロス殿下!」
跪こうとする大将軍と将軍たちに・・・・
【ミカロス・グリミナス】
「そのままでいい。」
現れたのはウルスラ・グリミナス国王の実弟のミカロス・グリミナスである
【ミカロス・グリミナス】
「兄上は戦争をする気がないそうだ。」
【大将軍】
「何ですと!どういうことですか!」
【ミカロス・グリミナス】
「決まってるだろう、シュナイザー帝国が行った経済制裁で、兄上はすっかり意気消沈だ。」
【大将軍】
「何と!」
【ミカロス・グリミナス】
「ラメセスの阿呆が、やらかしたツケが響いてきたのだよ。」
【大将軍】
「では、どうするのですか!もし兵たちがこのことを知れば、反乱が起きます!」
【ミカロス・グリミナス】
「分かっている!我らが生き残る道はただ一つ、敵国であるシュナイザー帝国に戦争を仕掛ける!」
それを聞いた大将軍と将軍たちは息を飲んだ
【大将軍】
「しかし陛下は外交を重視しております、戦争を起こすはずは・・・・」
【ミカロス・グリミナス】
「簡単なことだ、兄上には国王の座を退いてもらう。」
【大将軍】
「今、何と申されましたか?」
【ミカロス・グリミナス】
「兄上には隠居してもらう、クーデターだ!」
ミカロスの不敬極まりない発言に大将軍はぎょっとした
【大将軍】
「ミカロス殿下、お戯れが過ぎます!」
【ミカロス・グリミナス】
「戯れではない!国を思うての事だ!」
【大将軍】
「しかし・・・・」
【ミカロス・グリミナス】
「もし戦争を起こさなければ、飢え死にするか、兵たちが反乱を起こすぞ!それをお前たちは黙って見ているつもりか!」
ミカロスの発言に大将軍と将軍たちは何も言えなかった
【ミカロス・グリミナス】
「我らが生き残るには戦争しかないんだ!外交を続けても、徒労に終わるだけだ!こうなれば死中に活を求めるしかない!戦うなら今しかないんだ!」
ミカエルの演説に大将軍と将軍たちは・・・・
【将軍A】
「やりましょう!」
【将軍B】
「もはや兵たちを止めることができません。やるなら今です!」
【将軍C】
「大将軍!」
将軍たちはやる気に満ち溢れており、もはや止めることができないほどの熱気に包まれたのである
【ミカロス・グリミナス】
「どうする、大将軍?」
【大将軍】
「我らはミカロス殿下に従います!」
【ミカロス・グリミナス】
「よくぞ、申した!よし、兵を集めよ、クーデターの始まりだ!」
【大将軍&将軍A&B&C】
「御意!」
ミカロスは兵たちを集め、すぐさま兵糧倉と武器庫を占拠、そのまま王宮に攻め入った
【ミカロス・グリミナス】
「王宮を制圧する!手向かう者は切り殺せ!」
兵たちは王宮に向けて、進軍した。そのころ王宮では・・・・
【ウルスラ・グリミナス】
「何事だ!」
【グリミナス王国の宰相】
「陛下、一大事にございます!ミカロス殿下が兵を率いてこちらへ攻め込んできます!」
【ウルスラ・グリミナス】
「ミカロスが!くっ!」
【グリミナス王国の宰相】
「陛下、ただちに秘密通路を通り、北の塔へ避難いたしましょう!」
【ウルスラ・グリミナス】
「是非もなし!」
【グリミナス王国の宰相】
「王妃様と王子たちも北の塔へ避難させます、さあ早く!」
【ウルスラ・グリミナス】
「あい分かった!」
国王は秘密通路を通り、途中で王妃と王子(ラメセスを除く)たちと合流し、北の塔へ向かった。そして王宮はミカロスによって占拠された
【ミカロス・グリミナス】
「余がこの国の王である!これよりシュナイザー帝国に宣戦布告をする!皆の者、我に続け!」
【兵士たち】
「オオオオオオオオオオオオオ!」
ミカロスを国王とした新グリミナス王国が産声を上げたのであった。そして破滅のカウントダウンの始まりでもあった。そのころ元国王であるウルスラ・グリミナスは・・・・
【ウルスラ・グリミナス】
「くっ!我が人生は何だったのだろうか!」
【マリア・グリミナス】
「陛下・・・・」
【カイル・グリミナス】
「父上・・・・」
うなだれるウルスラとそれを黙って見ている王妃と第二王子のカイル、国を奪われたウルスラたちは途方に暮れていると・・・・
【グリミナス王国の宰相】
「陛下、ご無事でございましたか!」
【ウルスラ・グリミナス】
「宰相か。」
【グリミナス王国の宰相】
「王宮は既にミカロス殿下に制圧されました。」
【ウルスラ・グリミナス】
「そうか。」
【グリミナス王国の宰相】
「陛下、こうなればやることは1つしかありません!」
【ウルスラ・グリミナス】
「申せ。」
【グリミナス王国の宰相】
「陛下は、このままシュナイザー帝国へ亡命してください!」
宰相の発言に耳を疑った
【ウルスラ・グリミナス】
「亡命だと、我等は彼の国(かのくに)に国辱(こくじょく)ものの無礼を働いたのだぞ!今さら、我らを受け入れるなど・・・・」
【グリミナス王国の宰相】
「しかし、陛下が生き残るにはそれしかありません!」
ウルスラはし、じっと考え、結論が出た
【ウルスラ・グリミナス】
「行くも残るも地獄か、是非もなし、シュナイザー帝国へ亡命するか。」
【マリア・グリミナス】
「私たちも共に参ります!」
【カイル・グリミナス】
「私も!」
【ウルスラ・グリミナス】
「では、参るか。」
ウルスラはそういうと転移魔法を使い、シュナイザー帝国へと向かった
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