Dead or Alive

鱗雲はねず

第1話 霞

ぼんやりと、ゆっくりと、目を開ける。まばゆい光がどうっと、僕の中に入り込む。僕(高橋ナガアメ)は、どうやら、倒れていたようだ。天井も床も、壁全体が、青空にぽつぽつと雲が浮かぶ壁紙に囲まれている。家具も何も無い四角い空虚な部屋だった。僕が目を覚ますと同時に、一人の女性が声をかけてきた。『キミ、ようやく起きたか』花柄のワンピースに、淡い黄色のニットを羽織ったその女性は、優しくて知的そうな雰囲気だった。この美しい女性は一体誰なのか。それよりも、この状況に混乱してた。『あの…ここって?』と尋ねると。彼女は腕組みし、折り曲げた人差し指を顎に擦り付けるような仕草をしたあとに『あはは、私も知りたいのよ』と、困った顔をしていた。『ところで、キミの名前が知りたいな。私はカスミ、日奈森カスミ』『…カスミさん。僕は高橋ナガアメといいます』『ナガアメ君か、どうぞよろしく』『よ、よろしくお願いします。』何をお願いしているのかさえわからなかったが、カスミさんにはどこか安らぎを感じさせてくれる雰囲気があった。ふと、周囲には見知らぬ人間が何人かいることに気がついた。何をするでもなくうつむいたり、ただ座ったり、中にはブツブツ壁に向かって喋ったりする奇妙な人もいた。数えると、僕とカスミさんを含め、この部屋には10人の人間が居た。

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