その4
「? どうかなさいましたか?」
どうかって……このっすっとぼけた顔をして!
……いやいや、落ち着け私……ここでかんしゃくを起こしても仕方ない。
はあ~何だか喉だけじゃなくて頭も痛くなってきたわ……。
「あの~」
……くっ落ち着けと思っても、この顔を見ているとすんごく殴り飛ばしたい。
それにしても突然この顔が目の前に出て来たところ考えると、透明化マントでシオン達の後をつけていたのか。
本当にどうやってあの村からこの街に帰ってこれたのかしら?
「先ほどの話を聞かせて頂いたのですが、本当に落とした場所の見当はついていないのですか?」
そんなのがあったのなら、依頼なんてしないわよ!
そもそも、依頼の話を立ち聞きするだなんて駄目でしょ普通に。
「?」
待てよ……別にローニ相手に正体を隠さなくてもいいじゃない。
うん、ならぶん殴ろう、そうしよう。
「あんたねっ――」
――ハッ!
ストップストップ! 私の拳!!
「……突然立ち上がって、どうかしましたか?」
「イッイエ、ナニモナイデス! アハハハハ、ヨッコラショット……」
ふぅ~危ない危ない。
よくよく考えたら、失くしたのは結婚指輪。
流石にその事をローニにバレるのはまずい……。
となるとローニ相手でも誤魔化すしかないわよね。
「エ~ト、ホントウニワカリマセンノデス。スミマセン」
何でこうなるかな。
あ~ローニに対して何も言えないなんて辛い。
「ふむ……そうですか……」
何やら考え込んでいる。
手掛かりなしで、どうシオンを手助けするか考えているのかしら。
「……よし」
何がよしなんだろう。
今度はどうするつもり?
「ありがとうございました、では失礼!」
ローニもギルドから出て行ったわ。
あ~これでやっと飲み物を……。
「……あっ」
……ってこのまま飲み物を飲んでいる場いいじゃない!
なんか、結局いつも通りの展開になっているし!
ローニは何かしらを思いついたみたいだから急いでシオン達の後を追わないと!
※
恐らく、話を聞いてシオン達は居酒屋に向かったはずだけど……どうかな。
そっと角から覗いて見て……お、予想通りシオン達が居酒屋の前にいたわ。
「申し訳ありませ~ん、どなたかいらっしゃいませんか? もしも~し」
――ガチャ
居酒屋の亭主が出て来たわ。
「――何だよ……今日は次から次へと……」
すごく機嫌が悪そう。
そうなるわよね……ちょっと前に私が突撃したんだし。
「お忙しい所申し訳ありませんわ。わたくしたちはゴールドリングを探していまして……」
「ゴールドリング? ああ、さっきベロンベロンエルフがギルドに依頼を頼んだのか」
ベロンベロンエルフって……。
だ~か~ら~その呼び方は止めてって!
「ベロンベロンエルフ? 先ほどの方はエルフだったのですか」
まずい。
シオンがエルフって言葉に反応しちゃっている。
「あの後も気を配りながら掃除をしていたが、そんな物は家にはなかったよ」
「そうですか。お手数をお掛けして申し訳ありませんわ」
「おう、見つかるといいな」
あの後も気には欠けてくれていたんだ。
ありがとうございます、亭主。
でも……ベロンベロンエルフは本当に止めて下さい。
「となれば次は聞き込みのを……」
「それは本当?」
「え、ルイカちゃん?」
どうしたんだろう。
ルイカちゃんにちょっと圧を感じるんだけど。
「だってゴールドリングなんだよ? もしかしたら、この人が……」
あちゃ~ルイカちゃんも私と同じように亭主を疑っちゃっているよ。
「おいおい、またこの展開かよ……勘弁してくれ……はぁー、俺ってそんな風に見えちまうのかな……」
正直言って見えちゃうんです。
だって、亭主って悪人面だし……。
「ん~……確かに、その可能性は十分あるね」
「はあ!?」
「チトさんまで何を言い出すんですか!」
2人のあの目、全く亭主を信じていない感じだ。
これは、いやな予感がして来た。
変な事を起こす気なんじゃ……。
「……よし! チト先輩、ここは私達が店の中に入って探そう!」
「そうや! そうしよ!」
やっぱり起こす気だ!
2人ともやめなさい!
「ちょっと! 2人とも何を言っているのですか!? そんな事――」
「はあ!? ちょっと待て! 今は仕込みの最中で中に入られると――」
「「とつげきいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」」
※
「だから! ねぇもんはねぇんだよ!! わかったか!!」
「申し訳ありませんわ! 申し訳ありませんわ!」
「すみません! すみません!」
「「…………」」
謝りまくっているシオンとアスター。
そして、黙ってバツの悪そうに顔を横に向けているチトちゃんとルイカちゃん……。
それもそうだ、店の中を荒らしに荒らして結局ゴールドリングは出てこなかったんだから。
「この状態どうしてくれるんだよ!? 弁償してもらうからな!」
それにしても、派手にやったわね。
椅子やテーブルをひっくり返すし、見えはしなかったけど食器の割れる音がしたから多分厨房まで探したんだろうな……そこまでやらなくてもいいじゃないのよ。
「申し訳ありませんわ! 申し訳ありませんわ!」
「すみません! すみません!」
「「……」」
う~ん……この状況どうしよう。
本来なら今すぐにでも飛び出して謝罪をしたいけど……こんな事でバレるのもな~。
『そこまでだっ!』
「「「「「えっ?」」」」」
なんか鉄仮面をつけた人がシオン達の話に割り込んで来たんですけど。
『シオ……ううん! そこの可愛い美少女とその仲間に対して怒鳴り散らし、更には金を毟り取ろうとするとは! そのような悪はこの……えーと……てっ鉄仮面の勇者が許さん!』
「……」
うん、あの鉄仮面の正体がわかった。
間違いなく
それ以外、あんなのが居るわけがないもの。
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