アリスリス
「アリスリス……」
ぶかぶかの鎧と泥まみれの服を脱がせて体を洗ってあげた女の子は、そう名乗った。そして、
「青銅騎士団と一緒に戦ってた……」
とも。
青銅騎士団は、私のいる
「魔王軍が多すぎてダメだった。私、がんばったのに……クランクやマドレットやアルタもがんばってくれたのに……ごめんなさい……ごめんなさい……」
アリスリスは、そう言ってまた泣き出してしまった。湯で涙も流した後、私は彼女をまた抱き締めた。
カッセルも大概だと思ったけど、こんな小さな女の子が<勇者>だなんて、意味が分からない。
こんな小さな子が勇者だっていうのはいろいろ対外的にマズかったのか、私が聞いてた青銅騎士団に同道してた勇者は、<アレックスという青年>だったのに、実際には十一歳のアリスリスだったんだ。
無茶苦茶だよ。
正直、私は複雑な気持ちだった。考えたくないけど、善神バーディナムのご意思を計りかねて、モヤモヤとした気持ちになった。
「リリナ……」
その話を聞いてポメリアも悲しそうに呟いた。
それにしても、私とポメリアを捕らえたドラゴンも、アリスリスとリリナを捕らえたドラゴンも、この森の上を通ったってことなのかな。
ドランゴンが目指した先に、魔王はいるってことなのかな。神妖精族の子を連れて行こうとしたってことは。
「うう……」
私に抱き付いて泣くアリスリスをなだめながら、私はそんなことを考えてた。
三日ほど前から一人で森を彷徨い、先にこの集落に辿り着いて、空腹に耐えながらはぐれ魔族に怯えながら戦ってきた彼女は、精神的に追い詰められすぎて、突然現れた私達をはぐれ魔族と思い込んでしまったんだって。
十一歳の女の子にしてはすごく強くても、勇者としてみれば攻撃が弱かったのも、疲弊しきってたせいだったみたい。
湯あみでさっぱりした後、私とポメリアは森に戻って野苺を摘み、またヤマイモを掘ってかまどで茹でて、アリスリスと一緒に食べた。カッセルが戻ってくるまで待たせるのも可哀想だったからね。
「美味しい…!」
アリスリスはそう言って、野苺はもちろんヤマイモもモリモリ食べた。
「慌てなくてもまだあるからね」
私とカッセルの分にと思ってたのも、アリスリスに食べてもらう。私はまだ我慢できるし、カッセルもたぶん大丈夫だと思ったから。
するとカッセルも、
「木の実を採ってきました」
と言って、桶いっぱいの木の実を持ってきてくれたのだった。
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