釈然としない凱旋
「はっはっは! 快勝快勝!」
そんな風に高笑いしながらドゥケは陣地に戻ってきた。それをみんなは「さすがドゥケ様!」とはやし立ててチヤホヤする。
何なのこれ!? みんな
大股でズカズカと歩くドゥケの後ろを、大きすぎるローブを纏って、フードで殆ど顔が隠れた女の子がチョコチョコと歩いてた。ドゥケが勇者として認められる前からあいつに付き従ってたヒーラーの女の子なんだって。名前はポメリア。
その子と並ぶように、こっちはいかにもな魔法使いらしい格好をしたやや目つきのきつい女性が歩いてる。彼女は我がバーディオン王国の魔法学校を首席で卒業した才女で、探知魔法と転移魔法を得意とするリデム・エル・フォーマスタ。なのに彼女も、まるでドゥケの召使みたいに付き従ってるの。
「ドゥケ様。一緒に汗を流しましょう」
とか言ってる。いやいや、おかしいでしょ!?
って焦る私のことなんかまるでお構いなしで召使達が現れて、
「さあさ、ドゥケ様。湯あみの用意が整っております」
なんて言いながらドゥケ達を連れて行った。
最高に意味が分からない! これって何なの? もしかして私の方が頭おかしいってことなの!?
ああもう! ムナクソ悪い!
控室に戻り、私は自分の装備を外してイライラしながら手入れを始めた。こんな時でも自分の道具はちゃんとしないといけないと、父様から言われてたからね。それにこうしてると心が落ち着いてくるんだ。
善神バーディナムの祝福を受けた鎧は、今日も私を守ってくれた。同じく祝福を受けた剣は敵を一体、倒してくれた。それに心から感謝をしつつ、磨き上げる。
よく見るといくつもの傷が付いて、私が実際に戦場に立っていたんだって実感が改めて湧いてくる。今日、倒せた敵はスケルトン兵一体だけだったけど、次の機会には二体倒せるようにしよう。
なのに、ドゥケのヤツが、私の前に来たスケルトン兵まで一緒くたに薙ぎ払ってた。
そりゃ確かに反応は遅れたけど、あれくらいなら大丈夫だった筈だ。あいつが余計なことをしなければ私はもっと敵を倒せた。
と、その時、
「いつもいつも感心ね。道具を大切にする人は好きよ」
って声が掛けられた。
ハッと振り返るとそこにいたのは
「はっ!! これは失礼いたしました、団長!!」
バネで弾かれるみたいに立ち上がって、私は直立不動で敬礼してた。そんな私をライアーネ様は真っ直ぐに見詰めてくれる。こうしてると本当に精悍で凛々しいお方なのになあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます