8番目の小説家

文鷹 散宝

第1巻「小説なんて、消えてなくなれ」

第一章「自覚と現実」

前書き

 戦闘、開始。

 まずはじめに。世界規模でふるいにかける。

 小説が好きな人、嫌いな人以外の者は、この小説を読むことを絶対に禁ずる。

 準備はよいだろうか。

 ええ、ええ。早くしろ? そうですか。

 では、これにて開演。


 ――結局の所、殺し殺される事はなく、ただ殺し合っていただけ。


 小説とはなんだろう。

 ふと考えてみる。

 大説を小馬鹿にしたモノ?

『純文学』『一般文芸』『ライトノベル』ほか、『文豪』『プロ』『セミプロ』『アマチュア』などといった言葉の真意には、誇り、蔑み、安堵、不満、企業戦略、理解度という名の言い訳が含まれている?


 活字がある。白紙の行間に羅列が並び繋がる。

 命が、心が、声が、風景が生まれる。

 だから、だから何だと言うのだ。

 小説家、読書家は小説が好き、嫌いだってこと?

 売れる小説、売れない小説は正義? それとも悪? 

 読まれる小説、読まれない小説は悪? それとも正義?


 写実……ロマン……自然主義……反自然……モダニズム……プロレタリア……新感覚……民主主義……歴史……娯楽……社会派……本格……新本格……エンターテインメント……萌え……燃える……読者受け……コンプライアンス……常識……非常識……表現の自由……自己満足……王道……邪道……時代遅れ……流行狙い……編集者不要……出版業界オワコン……。


 笑止。

 失敬。


 まるで自律神経を乱しかのようなはじまりでも、どうかご容赦願いたい。

 如何せん仮初ながらも文豪などと俗世的な言葉で呼ばれるこの私でも、最後に先陣を切らせてもらえるということなので、大いに駄作を残してみたい境地に辿り着いたのだ。

 そう、唾だ。唾を吐いてやるのだ。汚らしく。

 そうして私は吐いた唾に目もくれず前へと進むのだ。一度だって振り返りなどしない。

 いいじゃないか。私は先陣で一人、幾重もの障害をこの身に刻もうとしているのだから。だから汚らしく唾を吐いてやるのだ。


 ああ、実に高揚する……? 

 ああ、もしやこれが恐怖か……?

 指が震えるのは如何ほどぶりか。心臓がねじ切れそうだ。

 殺せ殺せ、もういっそ殺しておくれ! 

 度々失敬。

 だがどうか安心して欲しい。

 これから綴られるのは、文学でも文芸でもライトノベルでもミステリーでもSFでも恋愛でも歴史小説でもない。

 ましてや戯曲やエッセイや手記でもあるまい。


 ――『小説』なのである。


 怒レヨ怒レ 哀シキカナ


 ではこの言葉を皮切りに、皮肉と軽侮の念を込めてはじまりとする。


 ――小説なんて、消えてなくなれ

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