07 超えられない壁を痛感



 牢屋にでも突き出されるかと思っていたが、その後は延々と王子のお喋りに付き合わされた。

 しかし、会話ができるかといったらそうじゃない。


 相手が一方的に喋りたい事を喋るだけだった。


 しかも、こちらの話が通じない。


「牢屋行きでいいので、この手錠を外してください」

「僕の妻を牢屋に入れるなんてできるわけないよ」

「ならトイレはどうする。この手錠を外してください」

「そうかい? それなら案内が必要だね。使用人(たぶんみはりだ)をつけよう」

「……」


 何を言っても無駄だった。


 怒ってみても、同情を引くように泣いて見せても、呆れて見せてもだめだ。


 王子の価値観と私の価値観の間には、越えられないほどの強大な壁があるのだろう。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る