第54話マーキング完了!
1月に入り、他の人から告白されそうになった。教室で我が旦那登と朱音たちと一緒に話をしていると、隣のクラスの男子が屋上に来てくれないかと。
悪いが、その場で一刀の元に切り捨てた。
「愛する旦那と一緒に居たいから無理」
その男はすごすごと帰り、登はその様子に苦笑いしていた。実際に屋上に行くとなったら、登は付いて来てくれただろう。
「あー、あの男もなんでこの状態を見て、告白しようと思うのかねぇ」
朱音が呆れ返りながら、そう言う。
今更、恋ぐらいの気持ちで告白されても何にもならない。
愛ぐらいの気持ちで来られても迷惑でしかない。
そんな状態なのだ。
「まあ、仕方ないかもねぇ。みっすん、一気に綺麗になったからねぇ〜。倉橋君も包容力が出て来たけど、みっすんしか見てないからねぇ。でも、この状態で告白するお馬鹿な女は居ないわね……」
「そう? うへへ」
どうやら愛される女は美しくなるを実践して見せたようだ。
朱音と御影君は地元の同じ大学へ。
かの子は宣言通り無事目標大学に受かり、近所のお兄さんのところへ大攻勢をかけるらしい。
春には進路はバラバラになるが、今を大事にしていこうと思った。
やがて2月になり学校も自由登校になった。私たち2人とも無事にそれぞれの行き先も決まっているが残念ながら大学は別々だ。
それでも同棲をすることで互いの両親とも話がついている。
お互いの家族とも誰一人反対する者はおらず、ふ〜ん、そうなんだ、というレベルである。
それで良いのか? 良いのだろう。
もう何度も通い慣れた登の部屋のベッドの上で、2人して転がってそれぞれが好きに小説を読んでいる。
登は片腕を私にしがみ付かれているが、片手で器用に小説を読んでいる。
慣れたらしい。
私は私で登の腕にしがみ付きながら、あの呪いの本を読んでいる。
普通に面白い恋愛ラブコメディだった。
もう主人公たちの背景の奥で主人公を振った女と私が重なることはない。
主人公と友達であるヒロインが付き合うことになるまでの話。
面白かったけど読み終わった後、私は本の
付き合った後のことは何処にも書かれていない。
何となく物足りない気がして、登の腕にさらに絡み付く。
彼は本を読むのを一旦止め、私の頭をヨシヨシとすると、また本を読み出した。
まあ、いいか、と私は大人しくなる。
付き合った後のことが書いていないのは今なら分かる。
一言でいって盛り上がりに欠けるのだ。
こんな風に愛する人とゴロゴロするだけで話の山場なんてありはしない。あったらその関係のピンチだ。
それこそ御伽話のように王子様とお姫様は幸せに暮らしましたとさ、で充分なのだ。
彼の部屋に外からの光が差し込む。
六畳一間ユニットバスキッチン付きの登のワンルーム。
物が雑多に転がり、ベッドの脇に読みかけにしたライトノベルが転がっている。
幼馴染物ではないが。
あの日と本以外同じなのに、そこには大きな違いがある。
とりあえず枕を嗅いでみる。
登の匂いである。
変態さんでごめんなさい。
だけど彼の匂いだけだった部屋はもう私の匂いも交じっていることだろう。
マーキング完了である。
私は登と一緒に、この部屋の一部になっているのだ。
嬉しくなって、私はまた登にしがみついた。
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