第42話お家へご招待⑤

「ただいま〜」

美鈴が玄関をくぐり、入って、入ってと俺を手招きする。

 一軒家の玄関で止まってても解決しないので、靴を揃えて上がらせてもらう。


 靴をそろえられない子はウチの娘には会わせませんと言われたら大変だ。

 言わないだろうけどマナーということで。

「お邪魔します」


 玄関を上がり突き当たりの部屋。

 前に来た時は玄関側の階段を2階に登り、真っ直ぐ美鈴の部屋に行ったから、この部屋を見るのは初めてだ。


 6人掛けテーブルのあるキッチン、その隣がリビングで大きめソファーと小さめソファーにテレビ。フカフカ絨毯じゅうたんb。12畳ほどか、そこそこ広い。


 そのソファーに美鈴と雰囲気が似た、美鈴より活発そうな同年代ぐらいの女の子が、ラフな格好でポテチ片手に転がっている。

 妹かな?

 こちらを見て固まっている。

 来ることを知らなかったのかな?

「初めまして。美鈴の妹さん?」

「うん、花純かすみって言うの。2個下で高校1年」


 その花純ちゃんは突然、ソファーから飛び上がり2階に駆け出した。

「おかーさーん!? お姉ちゃんが! 彼氏連れて来たー!?」

 残念だが彼氏ではない。


「ソファー空いたから座って、座って」

 その隙につい先程まで花純ちゃんが転がっていたソファーに美鈴に手を引かれ座る。


 いいのかなぁ〜と思いつつ、所在無さげに立ってても居心地が悪いので、美鈴の隣に大人しく座る。美鈴は俺が座るのに合わせて、さらに身を寄せ引っ付く。


 ……あれ?


 今更も今更なんだが美鈴との距離感がとっても近いのだ。

 そりゃまあ、ほぼ初めての人の家に招かれて放置されても困るのだが、異性の友達同士は隣同士に座るものなのだろうか?


座るのかもしれない、うん、きっとそうだ。

 他の家人かじんが居たら確かにスペースの関係上、隣同士かもしれない。むしろ離されても困る、かな?


 うーん、でも彼氏でもないのにそこまで近付いて良いものなのか?

 そう思いつつも思い返してみれば、他がどうあれ、俺と美鈴の関係ではそれで良い気もした。


 今更なのだ。

 近付くという点においては、恋云々抜きに、俺と美鈴はかなり仲が良いのはもう間違いがないのだから。


「登〜、何か見る?」

「あー、何かあるのか?」

 とりあえずテレビをつけてもらう。

 街角インタビューのバラエティ。


 ……?


 テレビは流れているが頭に入ってこない。

 まてよ? 俺。

 何かおかしいぞ?


 まあ、待ちたまえ。

 距離感が近いと言ったな。

 すまん、あれは嘘だ。


 何故なら俺は美鈴に手を引かれたまま、ソファーに座り美鈴と隣合わせで引っ付いているのだから。

 手も握ったまま。


 あれ? どうしてこうなった?



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「ただいま〜」

「お邪魔します」

 登を連れて家に帰って、私はるんるんだ。

 もう彼氏ってことでいいよね?

 告白してないけど!


 妹の花純がソファーにラフな格好でポテチ片手に転がっている。

 固まった花純。

 突然、ソファーから飛び上がり2階に駆け出した。

「おかーさーん!? お姉ちゃんが! 彼氏連れて来たー!?」

 残念だが、彼氏ではない。

 でも彼氏ってことで良いよね?


「ソファー空いたから座って、座って」

 登の手を引き座らせ、この際なので身を寄せ引っ付く。

 自分で言うのもなんだが、この際ってなんだ?


 チラッと登の様子を伺う。

 戸惑ってるけど、嫌がっては無いな。

 それぐらいは分かる。

 じゃ、いいや。


 私はそのまま引っ付くことにした。

 あ、いかん、顔がニマニマしてしまう。

 何気ない顔、何気ない顔。


「登〜、何か見る?」

「あー、何かあるのか?」

 とりあえずテレビをつける。

 街角インタビューのバラエティ。


 あー、いーわー、マジ幸せ。

 世のカップルはこんなとんでもなく幸せ時間を過ごしてるのかー。

 マジ、脳味噌溶ける〜。

 し〜あ〜わ〜せ〜。

 何故なら、私はソファーに座り登と隣合わせで引っ付いているのだから。

 手も握ったまま。


 あれ? どうしてこうなったんだっけ?



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