第20話あれからの3ヶ月間

 あの後、宝生院先輩は卒業し海外に留学していった。君咲との付き合いは予定通り1ヶ月で終了した。


 ただ君咲から聞いた話では、定期的に作品のことなどで連絡はやり取りしているそうだ。

 彼らのその後が少しでも良いものであることを願わずにいられない。


 俺が恋を終わらせて3ヶ月が経った。


 3年に進級して引き続き雪里と同じクラスになれた。だが朱音と立山は別クラスになった。


 御影は同じクラスなので、彼氏である御影に会いに来る朱音とは時々会っていたが、立山とは次第に疎遠になっていった。まあ、互いに違う仲間と遊ぶようになったからだ。


 けれど不思議と雪里とは友達関係は続いた。同じクラスであることもあり御影と朱音が一緒の時は共に遊んだりもしている。

 いつのまにか雪里は俺のことをのぼると呼ぶようになった。それは恋愛を意識してのものではない。


 あの俺の告白を雪里は今では気にしてないように思う。

 そうであるように……恋よりも友情を大事にするように俺も気をつけた成果でもあるのだが。

 だから、彼女が俺を異性として見ることは今後もないのだと理解出来た。


 俺はというと、実はまだ恋のわずらわしさを抱えたままだった。

 結局、苦い恋の痛みからは逃れられなかったのだ。

 クラスでも離れていればもしかすると、そのまま胸の痛みも消えていってくれたかもしれない。


 その理由は高校3年に進級後、逆に雪里からのスキンシップが増えてしまったせいかもしれない。

 恐るべし魔性の女、雪里!

 本当に気にしてないだけなのだろうけど。


 は〜、憂鬱ゆううつ


 そんな雪里だが、立山とは別れたらしい。

 なんでも立山が浮気していたとか。

 その話を雪里自身から聞いたときは、どんな恋愛もこうやってアッサリ終わってしまうのかと、勝手に辛くなってしまった。


 雪里が帰った後、そんなことを考えた自分に自己嫌悪してしまった。別れて辛いのは雪里なはずなのに。


 そうかと思えば、後日に再確認したところ。

 浮気された本人はそのことについてはあっけらかんとしており。

「仕方ないんじゃない? むしろ私の方が謝るべきかな、悪いことしたかなって」

 それで当人たちの間では解決している話なのが分かった。

 そのため、今更、立山に問い詰めることすら出来なかった。


 どんな形であれ本人同士がすっきりしているのであれば、部外者に口に出せることではない。

 だからか、余計に悶々としてしまうのだが。


 雪里とさらに遊ぶ機会が増えていたが、2人が別れていたとは、数日前までまるで知らなかったわけだが。


 そんなことをウダウダとベッドで考えていると、雪里から着信。

 3コール以内で電話に出る。


「あ、登? どもども、今どうしてる?」

「あー、バイトも無いから部屋でウダウダしてる」

 いやまじでウダウダしてました。


「また幼馴染の本でも読んでる?」

 読んでいない、ウダウダといま電話で話している雪里のことを考えてたなどとは口が裂けても言えん。

 未練がましいと嫌がられそうだから。


「幼馴染系は至高だぞ? 今度読んでみろ?」

 幼馴染教への入信を勧める。

「うん、読んでみるから貸してね?」

 うわぁ、なんだか雪里のその言い方が凄く甘く聞こえてしまった……。

 い、いかん!

 悩殺されている場合ではない。

 返事をしなければ。

「……おっけー、すっげぇ泣けるの選んどく」

 どれにするかなーと俺が考えていると、さらに雪里から。

「明日の夜、朱音たちとお祭り行くんだけど行かない?」

「あー、バイトがあるから……」

 行きたいけどね。

 まあ仕方ないよな。


 このとき何故か俺は雪里が落ち込んでるような気がした。

 それは所詮しょせん、俺の願望でしかないだろう。


 それに正直に言うと、俺は無理をしてでも雪里に会いたかった。

「……ちょっと遅れて合流してもいいか?」

 俺がそう言うと即座に返事が返ってくる。

「もちろん! また連絡してね〜」

 雪里は元気よくそう言って電話を切った。


 俺は通話の切れた電話を暫し見ながら考える。

 例え俺が胸の痛みに苦しもうが雪里が元気に笑ってくれるなら、それでいいか、と。

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