すべての魔法とスキルが使える、チートなダンジョンヘルパー ~さらわれて埋められそうになったから異世界に逃げ込んだが、魔素を浄化しないと帰れない物語~
安積kensui
1話 マスターとヘルパー
ジリン… ジリン… ガチャ…
執拗く鳴り響いていた精霊電話のベルが鳴り止む。
ここは、とあるダンジョンの入り口。
タンクトップを着た、若い… そうでもない女が精霊電話の対応をしていた。
「チッ…… 何? 」
「た… 頼む 仲間が死にそうなんだ! ヘルパーを頼む!! 」
「ったく…… 支払いは大丈夫なの? 」
煙草を咥えながら女はカウンターの椅子に座り足を組む。
「もちろん! 現金で金貨三枚あるんだが…… 間に合うだろ? 」
「お前、舐めてんのか!! 金貨五枚出さなきゃ話は終わりだよ じゃあな」
ガチャ…
女は
「お前は…… 鬼だな」
「お前に、言われたくないね」
道を挟んだバラック小屋の中にいる真っ黒いスーツを着た、若い… そうでもない男とタンクトップを着た女が口喧嘩をはじめた。
「掛け直して来なかったらどうすんだよ てめぇー…… 」
「見てなって 必ず掛け直して来るって」
「ふん もう死んでるな だいた… 」
ジリン… ジリン…
「ほーら来た! 」
ガチャ…
「大丈夫だ…… 金貨五枚用意できる は… はやく…… き… 」
ツー… ツー… ツー…
「あ…… 電話のやつ死んだかも 三十四階層だ 急いで」
「ふん…… あ、なんだっけ? モンスターの名前」
「いい加減覚えろよ エンシェントウルフな」
男は上着の内側から鉄の棒を取り出した。
二十センチ… 三十センチ… 五十センチ 100センチ
どこまでも伸びる鉄の棒。100センチを過ぎたところで両側に刃が付いた斧だと分かる。
男は上着の内側から両手斧を取り出した。
男はカウンターの内棚にある袋から精霊ボタン三十四番を押した。
男の足元に魔法陣が発生し眩い光と共に姿を消した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ここは、ダンジョンの町 町の名は"フィンナル"
無数のダンジョンが存在する町。
当然、ダンジョンには"ダンジョンマスター"が存在する。
ダンジョンの管理人ダンジョンマスターは、ダンジョン内部に人間や亜人を送り込みドロップやモンスターの強さのバランス調整をする。
内部で死者が出ると、モンスターの糧となり強力にしてしまう。逆に、まったく人を内部に送らないで放置しているとダンジョンは枯れてしまうのだ。
手を加えてやらないと美味くならないのがダンジョンだ。
到底、一人で切盛りするのは難しい。
そこで、ダンジョンマスターの助けをするのが"ダンジョンヘルパー"の存在。
さっきまでいた男。
名は、トキジロウ(26)、人間。
そして、このダンジョンのヘルパーをしている。
ダンジョン入り口で、椅子に座り足を組み煙草を吸っている女。
名は、メイサ(24)、人間だ。
この四十九階層ダンジョンの管理人、ダンジョンマスターだった。
ここは魔法とスキルの国 国の名は"ナル"
無数の魔法とスキルが存在する国。
魔法の種類は豊富だった。生活魔法は、もちろん 戦闘に役立つ、攻撃、防御、回復、ブースト魔法。
トキジロウが使っていた空間魔法。メイサが契約してる精霊魔法。
ここには、無数の魔法とスキルが存在する。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
精霊転送で、三十四階層に降り立ったトキジロウ。
辺りを見渡すと二人のハンターが倒れていた。
一人は、すでに死亡しているようだった。
トキジロウは、ハンターに三歩ほど近づき歩みを止めた。
「はい… 呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン って古いか」
「た…… たすけ て… 」
息があるハンターは助けを求める。
血塗れになった手でトキジロウの腕を掴もうと必死だ。
しかし、トキジロウには届かなかった。
動こうとはしないトキジロウ。
倒れているハンターを見ているだけだった。
三匹の、エンシェントウルフが距離を取りトキジロウを威嚇する。
トキジロウは、倒れたハンターに回復魔法をかけた。
【サンクチュリア!!】
対象から、3メートル四方に結界が張られる。
結界内にいる者は、徐々に回復し外敵からの攻撃を1分間無効化した。
ハンターの様子を眺めるトキジロウ。
「なんだ…… 二人とも生きてるじゃねえか」
死んだと思われていたハンターも徐々に回復をはじめていた。
すでに死んでいれば回復はされない。
トキジロウは、エンシェントウルフの群れに視線を変えた。
「とりあえず、処理しとくか」
トキジロウは、担いでた両手斧を肩から降ろすとグリップを両手で握りスキルを使用した。
【スイングアックス!!】
両手斧を握ったまま、自分の体を中心に10回の高速回転スキル。
キャンセル無効の重戦士スキル。
トキジロウは、高速回転しながらエンシェントウルフの群れに突っ込んだ。
ブチブチッ! グゥワンン……
肉が引き裂かれる音とエンシェントウルフの断末魔が聞こえた。
スイングアックスが終了した時には、エンシェントウルフの姿は原形を留めてはおらず無残にも挽き肉のような状態であった。ダンジョン内の壁と床には、モンスターの血が飛び跳ねている。
「ちっ… ドロップなしかよ」
切れそうになるのを堪えてハンターたちに近づいていくトキジロウ。
歩きながら両手斧を上着の内側に収納すると優しく話しかける。
「気分はどうだい? 大丈夫だったか? 」
到着時に、動いていたハンターが返事をした。
「助かった… 本当にありがとう」
「そりゃよかった って、ふざけんなよ こらぁー!! 」
激高したトキジロウは、上着の内側から
「うぎゃああぁぁ!! 」
何度も同じところを突き刺すトキジロウ。
ハンターは痛みで転げ回る。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ここまで、ありがとうございました。
作品は、魔法やスキルを多用してファンタジー感を伝えたいと思います。
よければ、ご意見、感想お願いします。
安積kensui
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