第3話 珈琲は星の外に
星は流れるもの、水と同じ。月は欠け、日は落ちて、風は吹く。だけど星はかがやき、水は凍りつき、月は満ちて日が上る。星の中でいっとき風は止む、星の外には風などない。
珈琲は僕をここにつなぎとめてくれる。本を読みながらどこまでも行ってしまう僕が帰ってこれるように。夏にはカラコロと音をたて、冬は白く湯気がたつ。猫舌でフーフーと冷ます僕を君はだいたい笑っていた。君の作るココアミルクが好きだった、カルピスもレモンサワーもみんな少し濃くて。それがおいしかった。珈琲はあなたのが一番、と君は笑っていた。
君は今どのあたりを流れているんだろうか。そこではおいしい珈琲を飲んでいるだろうか。星の外には珈琲はないかな。宇宙人はいたのかな。
僕は君を理解できずに、そのままズレはだんだんと大きくなった。僕とこんな星に残ることを君はあっさり捨てたね。古いカフェや道ばたの猫が、今日も平和を静かに伝えてくれる。この平和は作られている、彼女たちは星の外へ飛び出した。最近増えた流れ星のひとつになってしまってやいないか、未だに心配してしまう。君のこころに僕なんか残ってないだろう。
今日も静かなこの星で珈琲を飲む。外の星のように眩しすぎる君の瞳を思い出しながら。求めたのがそもそも間違いだった。僕と君のこころの距離は遠すぎた。君の求めたものは星の外にあったのかい?本の中や僕の隣にはないものだと言ってたね。君の居場所は見つかったのかい。
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