ちょっと哲学な話

 こんばんは、顔がいい女です。

 特にお酒が好きなわけでもない彼女が安いビールを片手に街の明かりでろくに星が見えない夜空を見上げていました。ああ、年に二、三回あるちょっぴり感傷的になりたい日か、とか思いながらベランダに居る彼女の隣に行って話しかけてみました。

「なんかあったの?」

「……んーん。特になんもない。」

「……そっか。」

「なんで私はこの宇宙に居るのかなって。」

「……哲学?」

「みたいな。」

 彼女はビールを一口飲みました。私は彼女の喉仏がゆっくり上下するのを見ていました。

「もし、別の宇宙だったら美しさの基準も違ったりしてあんたの顔が最高にブスってのもあり得るのかな。」

「そうなのかな。」

「そうなの。」

「そうなんだ。でも、多分、どんな宇宙でもきっと華燐かりんは私のこと好きになってくれる。」

「……なんでよ。」

「私の顔じゃないとこを見てくれるから。」

「……そんな、買いかぶられても困るし。私だってあんたの顔が……すき、だからってのも……あるし。」

「そっか。顔も好きなんだ。」

「ちっ……ちが……」

「そっかそっかー。」

 きっと私はどんな宇宙でも彼女を好きになるし、きっと彼女も私のことを好きになってくれる、そんな気がしました。

 以上、ちょっと哲学な話でした。

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