25.私はいつ、ここから出られるの~ジェイミア~
「食事の時間だ」
「はあい」
鉄格子の地面近くに開けられている細い穴からパンと水、それに野菜炒めと燻製肉を載せたトレイが差し込まれてくる。一日三食、量は少ないけどきっちり持ってきてくれるのはありがたいわね。
「ねえ」
格子の向こうにいる牢番の男に、そっと呼びかけてみる。「何だ?」と目を留めてくれたから、聞きたいことを聞いてみよう。
「私はいつ、ここから出られるの?」
「はあ?」
あら。どうしてこいつ何言ってんだ、って顔をされるんだろう?
だって私、犯罪者なんでしょ? 王女様を殺そうとしたんだから。だったら、やることがあるじゃないの。
「どうしたのよ。裁判とか何とか、あるんでしょ?」
処刑エンドでもまあ、最初からやり直せるけれど。でも、あのエンドって最後ぼやかされているのよねえ。だから私、もしかしたら逃げられるかも知れないじゃない?
その隙を見つけようとしたのだけれど、牢番は肩をすくめて呆れ声で返してきたわ。
「もう終わってるよ、そんなもん」
「へっ?」
「お前さんの罰は、終身刑ってやつに決定してんだよ。死ぬまでここにいるんだってさ」
ちょ、ちょっと待ってよ! そんなこと、聞いてないわよ!
つーか何日か前に偉そうな役人ぽい人が来たの、そのこと言いに来たわけもしかして! めっちゃ聞き流したんですけど!
だいたい、裁判もなしに刑決めるなんておかしいっつーの!
「何よそれ! 私の権利ってもんがあるでしょう!」
「国王陛下が治めてる王国で、その後継者殺そうとしたくせに権利も何もあるかよ」
ああ、牢番のやつめんどくせえ、って顔でこっち見てる。いやまあ確かにそうだけど!
でも、私の意見くらい聞いてくれたっていいじゃないの!
「おまけにさ、その後継者の婚約者寝取ろうとしたんだろ? だめだめ、そんなやつの話なんて聞くわけないだろ。耳が腐る」
「なんですってえ!」
み、耳が腐るとまで言われたし……うんまあやらかしたけどさ。
というか、こういう国ってちゃんとした裁判とかないの?
「他所の国でならそういう主張は通じるかもしれねえけど、ファーブレスト王国で馬鹿なことやらかした自分が悪いんだぜ」
「って、まるで独裁者じゃないの!」
「王国ってそういうもんだろ?」
……しまった。前世で暮らしてた国みたいに、国動かす人選挙で決めたりしないんだ、この国。
この国で一番偉いのは国王で、その後継者があの王女様って決まってて、私はその後継者を殺そうとしてミスって。
うん、マジ詰まった。さっさとリセットしてやり直そう、どうやるかな……なんて考えたところで、牢番から「一応注意しとくぞー」と声をかけられた。
「この牢屋、自決はできないって話だぜ。よくわからんけど、そういう術がかけられてるらしいから」
「術?」
ちょっとまって。この世界、魔法とかそういうのあったっけ? 少なくとも、ゲームには出てこなかったわよね。
いや、きっとあるんだ。だからあの王女様、平気で生きて帰ってきたんだ。たかが王女一人相手に、小さな国の軍隊動かさないと無理だなんてそんなこと、いくらゲームでもあり得ない。
「実際には見たことねえけどな。何だったら、試してみてもいいぜ。見ててやるから」
「試してって……」
「ちゃんと死ねるか、生き返って傷も治るかならいいけどよ。噂によればそこで自決しようとするとさ、傷はそのままなのに本人は生きてるとかいう話だぞ」
え、なにそれ。
例えば心臓ぶすりとやったら、そのぶすりとやった傷はそのままなのに私生き続けるとか、そういうこと?
え、そうすると痛みとかどうなるの?
た、試すなんてそんなこと。
本当にリセットできればいいけれど。
ちゃんと傷が治ればいいけれど。
「ひ、ひいいいいい」
あ、駄目だ。腰が抜けた。
わたし、私はいつまで、ここにいるんだろう?
自分で終われないなら、食事抜いて……いや、それもしんどい。お腹空いたらきっと耐えられない。
じゃあ、じゃあ、わたし、は。
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